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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
27/82

26:害獣扱いのわけ

「エミリア今日は調子がよさそうね」

「ええ、杞憂でした。本日は元気いっぱいです」

影のある笑みは相変わらずであるが、少なくとも嘘をついている様子はない。


「片手で水の入ったバケツを持っていたのには驚いたわ」

「あれくらい大したことないですよ。ここの方にお世話になっていた時はいい意味でさせてくれませんでしたので、今はすごく充実しています」


「そういえばエミリアの保護者ってどんな方なの?」

「私より小さな体で丸々と…いや、あれは毛?そう、全身白銀の毛で覆われていて、つぶらな瞳の……なんと言ったらいいのでしょうか。ごめんなさい、会えばわかるとしか言いようが」


「説明ありがとう。もし会ったらお礼を言っておくね。エミリアを連れてきてくれてありがとうって」

「助かります。うっかり連れ戻されることだけは避けたいですから」


「仲が悪かったというわけではないわよね?」

「はい、前にも言いましたが動いていないと落ち着かないんです。それにあんなかわいらしい……小さな生き物をこき使うのは罪悪感が酷くて」


「なるほど」

「ですが心配しているのでしょうし、その内会いに行かないといけませんね……」

「その時はわたしも一緒に行くわ。お世話になってる立場だもの」

「ありがとうございます」




「おお、ラウラ。よくぞ参られた」

部屋にはいつも通りラシルドが中央に座しており、左側にはレザルタスが立っていた。しかし、右側にフクロウの姿はない。


「せかせてしまって悪かった。体調はもう大丈夫だろうか?」


「ご心配おかけしました。レザルタスが気を使ってくれただけで、大したことはありません」

「わたくしとしてはいささかお疲れのように見えたのですが……同居者の方はいかがされましたか?」

「エミリアも休息を取ったら元気になりました」


「そう、それはようございました」

「本当だったら、我が出向く方が良いのだろうが……この外見はニンゲンを威圧しやすいうえに、レザルタスも供にとなるとな」

ラシルドは肩をすくめた。


「そういえばなぜレザルタスはあれほど怖がられるのでしょうか?わたしには今一つピンときません」

「それはな……いや、本人が言った方がいいか」


「いえ、わたくしが話すとなると主観が混じってしまう可能性がございますので、お願いいたします」


「うむ。端的に言えば最近のヤギの獣人は真社会性の群れを成していることが多い。簡単に言えば男女比率がかなり偏っていて、彼らは女性一人に対し複数、時には数十程の男性で守る傾向にある」

「それって……もしかして絶滅の危機とかなんでしょうか?」


「ん?あ、そうか。そもそもの前提の話が知られていないのか。ニンゲンやエルフ以外は乞い願うことでも種族の数を増やすことができるのだ。ゆえに争いが起きることはそうそうない」


「な……んとうらやましい。だったら、家の為にと道具にされることはないのですね」

ラウラは過去に大勢の婚約者の選別を申し付けられ、結局は父親が勝手に決定したことを思い出した。


「ああ。そして、ヤギの獣人はそれ以外の者たちよりなわばり意識が強い傾向にある」

「差し出がましいようですが、一言。あれはそうさせられているんです。はあ、うんざりですよ」


「だそうだ。多くの獣人が積極的にニンゲンを襲うことはない。だが、ヤギは例外でなわばりを犯したものは容赦しない。それが原因ではなかろうか?」


「そういうことだったんですね。まだまだ理解が足りていないようでした。話してくれてありがとうございます」


「このくらい構わない。必要であったらまた尋ねるがいい。さて、本題であるが副村長の件、考慮してくれたであろうか?」


「あ……あ、そう……ですね」

まさかすっかり忘れていたとは言うことができなかった。


「おや?ラウラ様、急に心拍数の方が」

「……あなた方は耳が本当にいいのですね。前も思いました正直デリカシーに欠けると思います」


ラウラは恥ずかしさと怒りがごちゃまぜになり、それを抑えようとした結果声は怒っているが表情は冷静になった。


「それは!大変申し訳ございません」


「いえ、わかっていただければいいんです」

「ふむ、確かに五感は問題であるな。が、しかしニンゲン側の意見としては大変貴重であるな」

「ラウラ様……わたくしはどうお詫びをしたらよいのか」


「その……もういいです。わたしが失念していたのは事実です。こちらこそ申し訳ございませんでした」

「謝ることはない。我としてはカテリーナ嬢が断り、選択肢をなくしたそなたが思い悩んでいないか気にかかっただけであるからな」


「そもそもなぜわたしなのでしょうか?わたしとしてもあまり適任とは」

「あまり自身を卑下するでないと言いたいが」


「そういった立場になるには……わたしには罪があります。いずれ向き合わなければいけませんが、せめてそれまでは…」

「前にも言ったが急ぐ必要も重荷に思う必要もない。現時点で言えば、そなたは充分にやってくれている」


「そうでございますとも!」

「理由を言えば、早々に虚無から抜け出した。ニンゲンたちの中で精神的に強く、人見知りをしないところといった所であるな」


「ええ、わたくしたちとぬし様に物怖じしない方は貴重です。そうでなければ意見を交わすことなどできませんから」

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