20:不適格な罪と過去(2)
鬱屈とした思いを抱えながら、ある時貴族の貴婦人にこう言われた。
「あなた、ただでさえ微妙なのに、微妙な恰好、微妙な態度しかとらないのがいけないのよ。せっかく素養を持っているのだからとことんそれを突き詰めなさい」
そしてカテリーナは侍女たちに連れられ、男性物の詰襟服をあつらえられると、男性の所作も学ばされた。しばらく立ち振る舞い教育が続き、一週間後再び貴婦人の前に姿を現し成果を見せた結果、彼女に召し抱えられることとなった。
それからはカテリーナが生きてきて、最も平穏な時だっただろう。主に女性たちに呼びつけられ、カテリーナの演じる男装女医は、近隣国から誘いがかかるほどの人気ぶりだった。不満をしいて言えば重篤な状況を任されることがないこと。たまに婦人方のわがままに振り回されることくらいだ。
そんな生活を送りながら、カテリーナは何年も貯めたお金で借金を返済し、弟と妹は学校を卒業した後それぞれ家庭を持った。これからは先が短い母親を看取った後、死ぬまでこうして生きていくのだとカテリーナは考えていた。
しかし穏やかな日々はそう長くは続かなった。ご婦人方の噂話、町での会話、武装する人の増加、物価の高騰など、カテリーナは戦争が起きる予感をひしひしと感じていた。
きっかけは複数の人間国家でエルフの国を攻めたときのことだった。一国が他国をおとりにしエルフたちの魔法の書を盗んだのだ。少し前から囁かれていた、人間もエルフと同じ魔法が使えるとのうわさを確かめる為であった。
結果、それは事実であり手に入れたある国は、魔法を使い他国を征服しようとするが、その前に内乱が起こり失敗。その隙に各国はこぞって魔法に関する情報を手に入れた。他国に攻められる前に攻めねばと様々な国が我先にと戦争をはじめた。カテリーナが住んでいた国もそのうちの一つであった。
日に日に手に入れられる物資の質が落ち、カテリーナは持てるすべて力を利用しても母親は亡くなってしまった。残されたカテリーナは弟妹たちを守ろうとするが、弟は徴兵されすぐに安否がわからなくなった。
幸い戦火はまだ遠く、カテリーナたちが住んでいる王都は平和な部類であった。いつ戦地に医師として送られるのだろうとびくびくする日々を過ごしていたある時。カテリーナは恩師である、幾分かやつれた試験管と再会しこう言われた。
「あの時の恩を返してほしい」と。




