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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
19/82

18:懺悔

ラウラたちは再びぬしの家の前へと立っていた。しかしカテリーナは俯きクラールスは彼女を励ましていたため、どちらも扉を開けようとはしなかった。ラウラはそれを見ると、前に出てノックした。今度は前の時のようにはじかれた感覚はない。


しかし、返事はなかった。もしかしたら留守なのだろうかと思ったがそのはずはない。ドアノブに手をかけようとすると、向こう側から開いた。ラウラの手は空を掴み勢い余って急に目の前に現れた毛を掴んでしまいそうになるが、慌てて手を引っ込めた。


「これはこれは、よくぞいらっしゃいました。ぬし様がお待ちしておりますよ」

声の人物はヤギの獣人レザルタスであった。少し前の対応とは全く違い、固い態度である。



「二人とも、行きましょうか」

ラウラが声をかけるとクラールスは頷き、カテリーナは身を縮こませた。ラウラと会った時よりもさらにひどく怯えているようである。そのことに気づいたラウラは彼女のそばに駆け寄った。


「どうしたの?」

「その……少しだけ怖くて。特にここの彼ってなんだかとっつきにくいんだ。よく悪魔像には、ヤギとエルフが混ざったようなのが描かれているよね。彼自身は何も悪くないのだけど」

「ああ、そういえばそうね。でもよく見ると面白いし、それに今の態度の方がずっとやりやすいかな」


ラウラ自身、そういった絵を見たことはあるが、父親がそれを嫌っているのか家には一切置いていなかった。その為すぐに思い付くことができなかった。今の態度という所でカテリーナは首を傾げるが、ラウラはレザルタスの方へと戻っていた。


「こんにちは、カテリーナさんとクラールスさんも一緒です。ご案内よろしくお願いします」

ラウラは軽く一礼するが、返事はなく固まっていた。

「あの、どうしました?」

「い、いえ。なんでもございません。公私混同は致しませんとも。さあさ、中へお入りください」


レザルタスは扉を支えて入室を促すが、ラウラはすぐに入らなかった。後ろを振り向いてカテリーナをちらりと見る。


「あの、ちょっと後ろに下がって扉を貸していただけませんか?」

「それがお望みであるのならば、承知いたしました」


手を胸に当てて、恭しい態度をとると後ろに下がった。すかさずラウラは扉を支える。しかし、前回開けた時よりも扉は重くかろうじて支えられる程度の重みがあった。


なぜ前とは違うのだろうか、魔法的な何かがかかっていたのだろうかなどと考える余裕はなかった。ただひたすらに重い。しかし、なんとか二人が通るまでは支えていなければということで頭が占められていた。


「どうぞ」

震えそうになる声を抑え、さらに震えそうになる手を抑えながらラウラは引きつった笑みを浮かべた。


後日筋肉痛になるだろう負荷である。しかしラウラははじめてドア開ける立場になった嬉しさで一杯であった。しかしそれと同時に二度とやりたくないとも思う重さであった。


部屋の中央には前回と同じくラシルドが座していた。左側にはヤギの獣人レザルタス。そして右側にはフクロウが立っていた。



「連れだって来たと言うことは結論が出たのであろうか?」

ラウラは結論以前の問題が発生したことを伝えようとしたが、その前にカテリーナが口を開いた。


「率直に申しますとお断りします。というより私には不適格です」

ラウラは驚いてカテリーナを見るが、彼女はまっすぐラシルドのみを見据えていた。


「理由を申してみるがいい」

「私はかつて医師でした。にもかかわらずここにおちてから何もしていなかったからです」

「ふむ。しかし、そなたは精神的に負傷していた。この短期間でそこまで求めるのは酷だと思うが」


「お言葉ですが、彼女の一日は僕と同じくらいの感覚です。ぬし様やフクロウとは流れる速度が違います」

「つくづく生き急ぐ生き物だな、そなたたちは。ここに来るまでの経緯は知っている。固辞の理由はそれだけではないだろう?」


「僕が!カテリーナを出したくないだけなんです。だから」

「クラールス、いいんだ」

「でも……」

「フクロウのおかたはもちろん、ぬし様もとうに察しているはず。だからきちんと言わないとだめなんだよ」


カテリーナはその場に跪くと、クラールスも同じ態勢をとった。ラウラは決してつられることなくそのまま立ち尽くしている。


「懺悔いたします。私はここに相応しくありません。たくさんの人間たちをこの手にかけてきたのですから」


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