17:お見舞い
「よく来たな!おやつを食べに来たのか!?」
「あの、そういうわけでは」
スケルトンのカルボスの大声に圧倒されつつラウラは彼を見上げた。
「もしかして皿を割ったことか?それならば気にするなと」
「いぇっ、い、いいいえいえ。あの時は大変申し訳なく……えっと、そのことではなくて」
ラウラは自身の大恥を指摘されて、声が裏返ってしまった。
「ロッカさんに」
ラウラは事前に、あの少女の名をクラールスから聞いていた。最も彼自身が聞いたわけではなく、カルボス経由である。
「それともあれか、も・し・か・し・てぇ……」
にやにやし始めるカルボスに、これ以上大声で恥を暴露されたらたまったものではないと、ラウラは息を吸い込んだ。
「見舞いに来たの!」
「あ……はい、ごめんなさーい。この時間ちょっと暇だったもんで、つい」
先ほどとは打って変わってまるで小心者のような態度に変わる。おそらく彼は気が弱く、それを隠すために大声で虚勢を張っているのだろうと推測した。
「ロッカー、お客だよー」
「物置みたいな言い方しないで……は?客?」
「こんにちは、あの」
ラウラが姿を現した瞬間ロッカは急にせき込み始めた。
「ごほっ、う……体が……お腹が痛い」
「ロッカ!しっかり!急にどうして。ごめんね、ちょっと体調がよくないからまたにしてもらえる?」
「ええ、わかりました」
ラウラは踵を返し家の外へ出た瞬間、カルボスの大声が聞こえた。
「っく、なんでまた。クラールスを呼ばなければ!」
その瞬間何かがラウラの横を通り過ぎた。
「カルボス、呼んだ?」
「キサマ!ずいぶんタイミングがいいな」
「まあ、偶々近くにいたからさ」
これは半分本当で嘘である。ロッカの様子を確かめるのに大勢は良くないと考え、窓の近くに待機してもらった結果である。
「大分よくなったと思ったのに……ロッカが大変なんだ、助けてくれ」
この会話からして先ほど横切ったのは、ウサギの獣人クラールスであることは明白であった。ラウラは改めて身体能力の差を実感していた。おそらく急ぎの際はウサギのように飛んで移動しているのだろう。
「ラウラちゃん?」
「あ、ごめなさい。ちょっと呆然としていて」
「いやあ、それは私も同じだから謝らなくていいよ。多分言っていた通りだね、これは」
「え、ええ」
「とりあえず、家へ戻ろうか。しばらくしたらクラールスも戻ってくると思うし」
「今回も様子を見ようとしたけど、本人に断られたよ」
「そっか、なら確実だね。あの子はラウラちゃんの言っていた通り、おそらく何かを隠している……まあそれはひとまずいいとしてそれでも怪我をしたのは事実だから心配だね」
「僕は医師ではなく薬師だし、ニンゲンを詳しく見たことはないから。うーん、どうだろう」
「やっぱりきちんと事実を代表者に言うしかないね。私がどう動くかはそのあとだ。これ以上先延ばしにすればする程……絶対によくないから」
「わかった、ぬし様の所へ行こう。僕もついていくから大丈夫」
ラウラはなぜ二人が深刻そうに話すのかがわからなかった。
「ここへ来た直後は皆虚無状態にあったのだから、わたしはカテリーナさんが悪いとは思わないのだけれど」
「ありがとう。それでもあの方と話すとなると少しだけプレッシャーが強くてね」
「そんなに怖い方でないし、優しい方だから大丈夫よ」
ラウラが微笑むと二人は驚きの表情を浮かべた。
「それ本気で言ってるの?」
「ええ」
「なるほど、さすがはフクロウが認めたニンゲンだ」
フクロウに認められたという言葉は嬉しかったが、実際大したことのように思えなかった。父親の連れてくる人たちの方がよほど恐ろしかったからだ。
「だって、お父様やお父様のお友達に比べたら全く怖くないもの」
「そっか……君もここに来るまでいろいろあったんだね。まだこんなに幼いのに」
カテリーナは目を細めるとラウラの頭を撫でようとするが、直前でぴたりと手を止めて、元に戻すと一瞬手のひらを見つめた。ラウラはそれに気づくことはなかった。
「わたしも一緒に行くから平気よ」
「そうだね……お願いするよ。聞いていてほしいから」




