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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
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11:ラウラの優雅でない日常

ラウラの朝は遅い。

なぜなら起こしてくれる人が存在せず、同居人は家に居ることがないからだ。遅起きの原因は夜中にうなされて眠れないこともあるが、緩んだ自身を情けないと嘆いた。


着替えには大変な時間を要する。

今日も今日とて普段着に着替えようとするがうまくいかない。腕部分に頭を通すことは当たり前である。何とか形にはなっても、背中の紐を結ぶことができず、無理に伸ばした手がつってしまったときは痛みに悶えた。


背中の留め具や、主に左腕のカフスをもぎ取ってしまったときは自分を殴りたくなったが、ラウラはフクロウとの自傷はしないとの約束を思い出し手を止めた。


最終的に着替えることをあきらめ、寝間着のままスケルトンのカルボス家へと向かう。食事を彼に頼むと「この時間に朝食?」と不思議そうな顔をされ、羞恥で赤くなる顔をうつむいてごまかした。


カルボスの家にいるはずの少女のことが気になったが、この状態で会うなどラウラは絶対にしないだろう。

食事をその場で採るという選択肢はない、なぜなら寝間着のままだからだ。他の誰かに遭遇しない幸運を感謝しつつ、急ぎ足で帰路につく。


帰宅後一人寂しく朝食をとり終わると、部屋の掃除をしようとあたりを見渡す。


いつの間にか手が加えられていたのか、塵一つない。掃除用具はないかと探すがどこにもほうきらしきものは存在していなかった。フクロウの掃除姿の想像を試みるが、今度は何も浮かばず己の想像力のなさを実感した。


ふと食器から発される臭いが気になり、ラウラは皿洗いという概念を思い出した。外に出ると、洗い場の横に井戸からすでにくみ上げてあった水があった。フクロウが用意してくれたのだろうと、ラウラは思い心の中で感謝をする。


腕まくりをして気合を入れるとラウラは人生初の皿洗いに挑もうとする。しかし、問題の皿を持ってきていないことを思い出し、袖を元に戻すと、家へと戻る。


積み上げた皿を掴むと、手から滑り落ち全て割れてしまった。途方に暮れたラウラは欠片を拾うとするが、破片に指がささり血を流したのでそれをやめた。これは自傷に入るのだろうかとラウラは不安になり、近くにフクロウがいないかとキョロキョロしだすが何の気配も感じず溜息をつく。


ほうきは見当たらないので、靴を使って隅にひとまとめにしておく。その日は一日中割れた皿が視界に入り、罪悪感で胸が痛くなった。


次の日ラウラは集めておいた皿が消えていたことに気づき、フクロウが掃除をしておいてくれたのだろうと思った。しかし、皿を割ったことに関しては何も突っ込まれなかった。


カルボスに会った時、皿のことを言おうとするが忙しそうで何度もタイミングを逃しラウラはすごすごと家へと帰る。


ある日ついに詫びることができた時「あ?気にすんな」と大したことないように言われ、ラウラは余計に申し訳なくなった。

もはや割った枚数は尋常ではない。気を使われているのかもしれない。そう思ったラウラは紙に包んでもらうように頼むことにした。


洗濯ももちろんラウラにとって未知の領域であった。たった数日でもらった服すべてをズタボロにし、着れない状態にしたラウラの足取りは重く、人形のペリアの元へ向かった。


ペリアは忙しそうにしながらも歓迎してくれたが、ラウラは長居するつもりはなかった。なぜなら着ているものが寝間着だからだ。見たところ部屋にはペリアとラウラしか居ないが、誰かに見られているような気がする。


ラウラはそう思うと居ても立っても居られない。丁重に歓待を断ると、本題に入る。


まさか服をうまく着ることができないなど言えない。普段着は全滅で、かろうじて寝間着が数着しか残っていないことにしたが、後から嘘をついた罪悪感にさいなまれる。


「それは大変だったわね。次からはもっと早く言ってくれてもいいの」

ペリアはひどく心配そうな声色でラウラに話しかけた。

「あなたの保護者って、確か……本人に言いにくかったらこっちから苦情を言っておくの」

「いえ、とんでもないです。彼にはよくしてもらっていますから」

「そうなの?ともかく新しい服が必要ね。ちょっと待つの」


ペリアは部屋を出ていくと、すぐ手に衣服を持って帰ってきた。もしかして、とりあえずの処置として、別の服を持ってきてくれたのかもしれない。ラウラはそう期待しながら服を受け取る。


「これって、全く同じ服……?」

「そうよ。もしもの時にそれぞれみんなの分を予備として作っておいたの」

渡された服はラウラがどうあがいても着れない元の普段着であった。


「お心遣いに感謝いたします」

ラウラは半分落胆しながら、もう半分は本心からお礼を言った。

「多分洗濯がうまくいってないと思うのだけれど、よかったらやっておくわよ?」


ラウラはありがたい申し出だと、即座に受けそうになってしまうが慌てて口を閉じた。やってもらうということは、すなわちここへ来なくてはならない。

外に出るにはそれなりの衣服を着る必要があり、ラウラにこの普段着を着用することはまだできない。


つまり何回も寝間着の状態で出向かなければならない。さすがに何回もこの状態であれば、現状がばれてしまう。


焦ったラウラは考えすぎてお腹が痛くなってきたが、なんとかこらえて笑顔を作る。

「そうですね、次に同じような事態になってしまったらお願いしてもいいですか?」

ラウラは結果を先延ばしにすることにした。


もしかしたらそれまでには、洗濯ができるようになっているかもしれない。もしかしたらうまく普段着を着用することができるかもしれない。


ラウラの淡い期待であった。

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