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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
11/82

10:過去の罪悪とこれからのはなし

夢の中でラウラは走っていた。


複雑に入り組んだ路地を駆け抜け、まっすぐな道に出たところで息を整える。後ろの方に怒号が飛び交うのを耳にすると再びラウラは走り出す。


どれだけ走っても道は続き、追手はラウラを逃がすことはなかった。口の中には血の味が広がり、疲労にもつれた足はこけたときの傷でひどい有様になっている。


奴の娘を殺せ!と何度も何度も叫ぶ声が聞こえる。


「わたしは何もしていない!」


そうラウラは虚空に叫ぶ。


「それは嘘だよね?ドレミちゃん?」

突如ラウラは真っ暗な空間に包まれると、目の前にイデアが現れた。出会ったときと同じ服装で、髪は高い位置に一つで束ねられている。怪我は一つもなく、健康そのものの体だった。


「ドレミちゃんはお父さんを手伝った。そうだよね?」

「ごめんなさい、イデア。わたしは何も理解していなかったの。無知で愚かだった」


「あなたのお父さんはエルフの魔法の書を盗ませた。その結果私がどうなったかわかる?」

イデアの顔はやせこけ、目は落ち窪み再び彼女を目にしたときよりもひどい姿に変化する。血の気はもはやなく、体の一部が腐敗し始める。


「痛かった。辛かった。何度も助けを呼んだけど、誰も助けてくれなかった」

まるで墓から這い出たような容姿に強い腐臭が辺りを漂う。


「あたしだけじゃない。国中の人たちが魔法を手に入れて戦争をはじめた。みんなみんな、たくさんの人が死んだ」

イデアが手を振ると下方に大勢の人たちが殺しあう光景が浮かび上がった。


「ごめんなさい、ごめんなさい……」

「あの人の死も、この人の死も、私の苦しみも全部全部。ラウラミド・レ・ミケランジェリ、あなたのせい。そうだよね!?」

イデアの目がこぼれ落ちそうな程開かれる。目を閉じても、おまえのせいだと責めるたくさんの声が鳴り響く。



「ごめんなさい!」

ラウラはベッドから飛び起きた。まるで全力疾走をした後のように息が切れ、瞳からは絶えず涙が流れる。


辺りを見渡すとここがフクロウの家だということがわかるが、それでも誰かいるのではないかとの不安はぬぐえず、ラウラはシーツを手繰り寄せ壁に背を付けた。


「なんであの時疑わなかったの?なんでわたしは……イデア……ごめん。ごめんなさい」

ラウラは泣きながらひたすら謝り続けた。

疲労で意識が朦朧とし、目を閉じたラウラは目を閉じる。

「お願い……もう多くは望みません」

意識がなくなる寸前、ラウラは誰かに頭を撫でられた気がした。



「では昨日の話の続きをしましょうか」


いつの間にか用意された朝食を食べ終わった頃フクロウが家へとやって来てそう告げた。

「まず、私は基本的に家に居ることができません。食事はカルボスの所で受け取るか、その場で摂ってもらうとして……」

ラウラは皿を見て、どこか食べたことのある味だったことに納得する。


「私にできるのは掃除ぐらいなので、定期的にやっておきます。あとは自分でなんとかしてもらうしかありません」

フクロウがほうきを持って掃除をする姿が全く想像つかない。むしろ動き回った結果、長い衣服で掃除ができてしまうのではと思ったが、突っ込むのはやめておいた。


「充分です」

「不便の代わりと言ってはなんですが、何か願いを一つ叶えましょう」

フクロウの威風堂々たる姿を見たラウラは、世界の半分を私にとか言ったらどうなるのだろうと、一瞬考えた。そのふざけた考えをすぐに吹き飛ばすと、ラウラは真剣な表情を作った。


「フクロウ……さん」

「さん付けは結構です」

「はい、フクロウ……わたしに割く時間をすべて使って、イデアのことを見ていてほしいの。お願い……します」

「イデアとは、どなたでしょうか」

首を傾げるフクロウを見て、ラウラは説明不足だったと己を恥じた。


「最初の方にパニックになって、クマの方に引き取られた子です」

「……ああ、あの。ですが彼女は既に立派な保護者が居ますし、ここで危険な目に合うことはないと思いますが」

「けど、一人だと不測の自体が起きる可能性はある。それにあの子が、自分で自分を傷つけることもあるかもしれない」


「それはあなたにも起こりうることですよね?一応私はあなたの保護者ですし、最低限見守る必要があります」

「わたしには自傷をする勇気も理由もない。償わなければならないから。望まれない限り絶対にしないと約束します」

「……わかりました。それがあなたの望みならば。しかし、何か困ったことがあったらきちんと言うのですよ」

「はい!ありがとうございます」

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