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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
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9:ひとりぼっちを回避する

来ないのであれば、自分から行けばいいのだ。今はそれが許される環境にある。ラウラは決意すると、フクロウ面の異形の元へと向かった。


どうやら疲れた様子で椅子に座っていて、何人かに話しかけられている。ちょうど途切れたタイミングを見計らってラウラは話しかけた。


「ごきげんよう。あの時はありがとうございました」

フクロウ面の異形はゆっくりと首を傾げた。妙に優雅に見える仕草だった。

「雪原に横たわっていた時、最初に見たのがあなただったので」

「もう一方ではなく、私ですか」

「はい。ところで質問があるのですが」

「何でしょう」


「あなたはここの(あるじ)ですか?」

「なぜそのようなことを思ったのです」

「代表として話されていましたし、先程までに色々な方から話しかけられていましたよね?」

「……はあ、違います」

「そうでしたか。気品といいますか神々しさのようなものを感じたので、てっきり」


「分かるのですか?いや、そんなはずは」

フクロウ面の異形は何やら考え込んでいると、ラウラは予想した。表情が変わることがないので非常にわかりづらい。


「あなた、いいところの育ちなんでしょうね」

「えっ、いえ、そんなことは、その……」

ラウラは自分がここでは少しずれていることを自覚していた。ゆえに指摘されたことをごまかしたかったが、しどろもどろになるだけであった。


「………決めました。あなた、私の所に来なさい」

「いいんですか?」

「逆に私が聞きたいくらいです。まあ私の容貌はともかくとして、殆ど面倒を見ることはできませんが」

「とんでもないです。一人残ってしまうかと思っていたので。ラウラミド・レ・ミケランジェリと申します。以降よろしくお願いいたします」


ラウラは先ほどの人形と同じようにスカートをつまむと一礼した。

「私に名はありません。ですので、よく言われる外見通り、フクロウと呼んでもらって構いません」


ラウラは彼の面をじっと見つめた。フクロウという呼び方は、確かにしっくりくるが全く異なる雰囲気にも見える。

「言っておきますが、これは面ではないですし取れませんから。では、付いてきてください」


家にたどり着くまでかなりの時間がかかった。距離の問題ではなく、フクロウが行く先々で話しかけられていたからだ。ラウラはその様子を見て、偉い立場というよりはただ単に好かれているのだろうと思った。


時間がかかる、遅いなどとは思わない。むしろ本当に自分でいいのだろうかと思う気持ちと、選ばれて嬉しい気持ちで、歩くたびにふわふわとした現実感のない居心地であった。


「お待たせしました。ここです、お入りください」

案内された家は至って普通だった。特筆すべき点がない。フクロウは扉を開けると、ラウラに先に入るように促す。敷居を跨ごうとしたとき、段差に足を引っかけて倒れそうになる。


「おっと、危ない」

すかさずフクロウが受け止める。びっくりするほど細い腕だが思っていたより、少なくとも自分よりは力があるだろうとラウラは思った。

「ありがとうございます」

「いえ、お気にせず」



部屋には机に椅子が四脚、奥のほうにはキッチンがあった。一人では広すぎる空間であったが、ラウラは特に違和感を覚えなかった。

「こちらにお座りください」


フクロウが椅子を引くと、ラウラは当然のように座りそこで自分の間違いに気づいた。これは普通ではない。世話をされることが当たり前だと受け止める貴族的な行動であると。

「あ、ありがとう」

今更ながら礼を言う。されたものは仕方ない、しかし絶対に求めないことをラウラは自身に誓った。

「今後の生活についてお話しておきたいことがありますが、どうやらお疲れのようですね」

「いえ、そんなことは」

ラウラは否定したが、フクロウは首を傾げた。


「急ぐことではないですし、明日にしましょう」

フクロウは立ち上がると部屋の奥にある二つの扉を指した。

「左と右の扉にある部屋はどちらも同じものしかありません。好きなほうをご自由に使ってください」


「フクロウの部屋はどちらですか?」

「ここは便宜上私の家ではありますが、役割柄殆ど使っていないんです。詳しくは……明日説明します」

「わかりました。では本日は休ませて頂きますね」

「はい、おやすみなさい」


ラウラが左の部屋を選び、入室した瞬間扉が閉まる音がした。フクロウが家の外へ出て行ったのだろう。


ラウラはベッドに座ると数少ない荷物を出し、寝るために寝間着を出した。深呼吸して、服を脱ぐ。数十分程四苦八苦した後、なんとか脱げたことに安堵すると着替えて横になった。


指摘されたときはそう思わなかったが、思っていたよりもラウラは疲れていたようで、すぐに寝息を立てはじめた。

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