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お姉ちゃんが欲しいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。  作者: kit
4章 ゴールデンな日々

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58話 何か拗れに拗れてメビウスの輪っかみたいになってる

「今日はよろしくお願いします!おばあちゃん!」


 朝から様々なアップをしてきた私に死角はない!今日もふるブースト琴音ちゃんである!そりゃ朝の挨拶は爽やか元気ですよ!!この元気を分けてあげるよ!ほらほら!!


「琴音さんは朝から元気で良いですね」


 そんな私の想いが通じたのか、おばあちゃんは少し目を細めいつもの抑揚のない声でお褒めの言葉を頂く。見る人によっては睨んでいるようにも見えるし、その硬い声色から誤解されがちだが、決していつも怒っているのがおばあちゃんではない。

 私が思うにおばあちゃんは誤解されやすい質だと思うのよね?ある程度社会人としていろんな人間を見てきた経験から、おばあちゃんはそういうタイプとみた。するとどうだろう、今のセリフと表情は彼女なりの微笑みと称賛の声だったと思えてくるのだ!

 いやまぁ実際のとこはわからないけれど、孫だぜ?しかも可愛い孫だぜ?普通はそこで怒ったりとかせんやろ。てことで、おばあちゃんは朝から私の元気をもらい更に元気になったというわけですね、はい。異論は認めない。


「そう言えば、昨日は仕事だったんだよね?今日は大丈夫なの?」


 そんなおばあちゃんだが、まぁ見た目もその通り仕事人間というやつである。そのため、常に忙しそうな雰囲気が漂っており、実際忙しい。昨日の桜祭りも本当ならおばあちゃんも連れていきたかったが、仕事ということで泣く泣く断念。

 今日は元々予定していたことなので仕事は流石にないと思うが……みっちりスケジュールとか埋まってそうで、この後数時間したら仕事に行くなんてことも考えられる。なのでちょっと気になって聞いてみたり。


「今日は《《ほとんど》》お休みですよ。流石に私でもお休みはしますから」

「……それでも《《ほとんど》》なんだね」


 あー、驚愕の事実。いや、まぁ、なんかそんな気はしてたんだけどさ。ほとんど休みってことなので、この人後で仕事あっるぽいですよ?

 いや、あんた大丈夫か?そんなに仕事漬けだと頭狂っちゃいそうになるよ?私だったら5日仕事しただけでも「あ、仕事辛っ」ってなるのに。てかなんだったら月曜日から「あ、仕事だ、辛っ」ってなってるよね。そんな私からしたらいつ休んでるかもわからないくらいの仕事の日々なんて考えられない。もし愛しのブラザーズのためにそうせざるを得ない!となったなら……うーん、その時は歯を食いしばって仕事をするかもしれない。少なくともおばあちゃんの様に澄まして辛さを微塵も感じさせずに働くなんてのは無理だ。うん無理。


 だからだろうか。こうして見るとおばあちゃんが凄い人なんだなって思えてくる。まぁ前世でも十分凄い人だったんだなとは思っていたけれど、こうして色々なことを経験した後でいざおばあちゃんて人を見てみると、改めてこの人がどれだけ仕事に対して真摯というかひたむきなのかというのがよく伝わってくる。

 とは言え、それが原因でママンとおばあちゃんの間に溝が出来てしまっているんだけれどね。何か拗れに拗れてメビウスの輪っかみたいになってる。あ、それは捻れか、HAHAHA!


 しかし、そうだとしても、おばあちゃんはきっとお金のためと言うよりも家族を守りたくてとかそんな事を考えて仕事をしてたんではないかなと私は思っている。

 だってお金稼ぎが好きだからって言うには情熱が無い気がするし、家族が嫌いとか苦手だったら、こうして私のことを連れ出そうとしないはずだ。


 あの日、私が帰ってからお母さんとおばあちゃんは、と言うかお母さんがかなりヒートアップしていたが、きっとその裏側には何かしらの事情があったのだと思う。

 例えば、お母さんもおばあちゃんのことを桜祭りに誘っていたとか。だって言うのにそれは断ってこうして着物で歩きましょう会への参加を促したりとか。うん、多分それだろうなぁ。

 ほら、普通ならそこで「残念だね、じゃ次回」とかで笑って終わりなんだけれど、うちのお母さんとおばあちゃんの間には溝があるって言った通り、ちょっとしたことでもすぐに拗れてしまう程度には仲が良くない。

 昔からあんな感じのおばあちゃんであったなら、その子供であるお母さんは凄く寂しい想いとか怒りとかいろいろあったんではないだろうか?

 まぁ、全部妄想なので実際はどうなのか知らないけれどね。


 だとしても、おばあちゃんも別に嫌な人間ってわけではない。ちょっと口調が硬くて余計なお世話と言いたくなる様な物言いをするだけ。きっとおばあちゃんだって何とか仲良くやりたいだなんて思っている筈だ。


 私はおばあちゃんの顔を横目に見る。


 相変わらず冷たいと感じるような無表情。会話の一つもしていなければ本当に何を考えているのかわからない。


 おばあちゃんは今何を思っているのだろうか?


 ねぇどんな気持ち?今どんな気持ちで運転しているの?って聞ければ良いんだけれど、今の私には言葉にする勇気と言うか、うん、できなかった。


 結局、その後特に会話があるでなく会場についてしまった。と言ってもそこまで距離があるわけでも無いので、時間にして10分程度である。

 そこには既に何人かがレンタルする着物を選び会話をしていた。


 私と同じ年齢の人間は……おぉ片手で数えられるぐらいはいるっぽい。ただ、全く知らない顔なのでうちの学区の人間ではないようだ。なお、前世でも参加しているのだけれど、その際に見た顔はいない様に見える。どうやら全てが全て一緒というわけではないみたいだね。

 まぁ私自身がそもそもイレギュラーの塊みたいなもんなので、そりゃそうだって話なんだけれどね。それでも多少は期待もしたのだけれど……少なくともこの場ではいないらしい。

 別にいいけれどね?ぶっちゃけ仲良かった訳ではないし、顔合わせて「あ、どうも」程度の感じだったから。寧ろ私はちょっと雰囲気が苦手だったので……あれ?寧ろいない方がよくね?


 そんなことを考えながら、私はおばあちゃんに連れられ、この会の主催者の元へ向かった。


「お世話様です。白鳥さん」

「あらぁ和美さん!よく来てくれたわね!今回は難しいみたいなこと言っていたからあんまり期待していなかったけれど、参加できるみたいで良かったわ!」


 おばあちゃんがいつも通り澄ました表情で挨拶をした人物、それがこの着物で歩きましょう会を主催している白鳥さんだ。下の名前は知らない。

 印象としては着物が良く似合うお淑やかな女性って言ったところだろうか。落ち着く声を明るく弾ませる様子は、本当に嬉しそうだ。

 私は前世でもあまり絡みがない女性なのでそれ以上の事はわからない。ただ第一印象は優しそうなおばさんって感じかな。


「こちらの可愛らしいお嬢さんが噂のお孫さんかしら?初めまして、私は白鳥と言います。今日は楽しんでいって頂戴ね?」


 私が観察するように白鳥さんを見ているとその視線に気付いたのか、今度はこちらに顔を向け笑顔を浮かべた。

 おっと、挨拶されてしまった。折角連れてきてくれたおばあちゃんに「挨拶もできない孫娘を連れてきている」なんて思わせないようにしなければ。


「初めまして!ご挨拶遅れすみません。私は川田琴音です!今日はよろしくお願いします!」


 下手に敬語で挨拶するよりも、ここは親しみのある明るい女の子って言う感じでの挨拶の方が良いでしょう!がっつり敬語で挨拶しても良いけどするとこの後が大変だし、何より年相応な感じはないよね?私が大人の立場だったらちょっとびっくりしちゃうし。


「あらあら、元気があって良いわね!琴音さんって言うのね、よろしくね」


 あらあらうふふと手に頬を当てる白鳥さん。どうやら私の雰囲気作り第一は上手くいったようだ。


「さぁ、では和美さんも琴音さんもこちらへどうぞ。ご注文頂いていたもの、ちゃんと今日に間に合わせてますから」

「あら、早いですね。今日は通常のレンタル品にしようかと思っていましたが……良かったわ」

「だってぇ!和美さんはうちのお得意様でもあるもの!仮に来れないかもしれないって言っても来れた時にお出しできるようにしていたいじゃない?」


 白鳥さんとおばあちゃんは、と言うか白鳥さんが楽しそうに会話をしながら私たちを連れ建物を奥へ進む。皆がいるホールを抜け、少し行ったところに襖があり、そこを開く。するとそこには様々な着物が展示されていた。


 私ははぇーとキョロキョロと見わたす。

 どれもこれも素晴らしいの一言。正直私は着物なんて全然詳しくないけれど、素人目に見ても綺麗だと思えるものばかりだ。さっきもホールでは何着か展示されておりどれも綺麗だったけれど、ここにあるものは更にその上って感じがした。


 何というか……うん、とても高そうである。


 まさかではあるけれど、これの中のどれかを着るってわけじゃないよね?なんか恐れ多くて着れる気がしないのだけれど……。


 そんな私の気持ちは届きはしないのだろう。おばあちゃんと白鳥さんはスタスタと音もなく進むと3着の着物が展示されているところで止まった。


「ほらこれよ、凄いでしょう?」

「ふふ、そうね凄く良いわ」


 白鳥さんは自慢げにそう言うとおばあちゃんは珍しく嬉し気に顔を少し綻ばせ笑う。レアだ。


 私もそんな二人の傍へ行き、より一層輝いているその3着の着物を間近で見る。


 大き目の着物は落ち着いた臙脂色(えんじいろ)煤竹色(すすたけいろ)のツートンカラー。帯には抹茶色と苅安色(かりやすいろ)の上品な金色の帯をした着物。きっとこれはおばあちゃんが着るのだろう。なんかイメージとピッタリ。


 もう一つは小さめの着物で春を感じさせる梔子色(くちなしいろ)がベースに、鮮やかな赤ベースの花が散らされた華やかな着物。サイズ感的には私様だろう。うん、きっと私に良く似合うと思う。おばあちゃんセンスバリ良す。


 そして最後の一つ、それはおばあちゃんが着るであろう着物と同じくらいの大きさだ。こちらは若葉色(わかばいろ)をベースにパステル系の赤系統の花が散らされている。丁度私の色違いに近い。色使いが私よりも少し落ち着いているので、おそらくはお母さん様に準備していたものだろう。

 ……まぁ今日は来てないんだけどさ。


 いやぁ、うん。どれもこれもイメージ通りな着物たちに私は呆気にとられる。というか感動。正直前はこんな風には思わなかったし、何だったら着るのめんどくさいし、重いし、トイレが面倒だしってネガキャン凄かったんだけれど……。


「綺麗……」


 感想が小学生並みだけれど許して欲しい。でも私の口からはシンプルな感想が漏れ出てしまった。

 これを着るのかなぁ、着るんだろうなぁ。高そうだし汚したらどうしよなんてことも思ったりもするけれど、それ以上に着てみたいという欲が勝った。

 そんな私のワクワクというかそわそわが通じたのか、白鳥さんは私に微笑みかけこう言った。




「さて、お姫様が待ちくたびれているわ!早速着てみましょう!」

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