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その頃、ミシェルとアスモダイは湖の近くの廃墟に来ていた。
「ここは十数年前に低級な悪魔に襲われて廃墟になった町だ。全く、酷い有り様だな」
地面に転がっている瓦礫を蹴りながら歩いていくミシェルにアスモダイはやるせない顔をした。
「ん ? どうした。低級な悪魔に町が襲われる度そんな顔するなよ。別にアスモダイがした訳じゃないんだから」
それでも何か言いたげなアスモダイにミシェルは言った。
「そんなのお前の柄じゃないだろ ! いつも道りにしてろ、バカ悪魔 ! 」
「なっ……バカだと ? お前みたいな魔法バカに言われたくないな、魔法バカには ! 」
ミシェルにバカと言われてアスモダイは顔をしかめて言い返した。
すると、ミシェルはフッと頬を緩める。
「……いつも通りに戻ったな。よし、それでこそアスモダイだ」
そんなミシェルにアスモダイもまた苦笑したのだった。
しかし、アスモダイは何かを感じ取ったのか目を鋭くする。
ミシェルもアスモダイに背を向け気配を探す。
「どうやら囲まれたみたいだぜ、御主人さん」
「そうみたいだな。丁度体が鈍ってたとこだ、準備運動ぐらいにはなるといいが、なぁ ? 」
ニッとミシェルは笑い、自分の身長くらいありそうなロッドを構えた。
その笑顔は獲物を渇望する野生獣の如くギラギラしている。
次の瞬間、壊れた建物の影から真っ黒な黒い影のような百近い悪魔が姿を現した。
「数で勝とうってか ? 魔法軍を指揮するトップと、その相棒に ? 」
そう、ミシェルは国直属の軍隊である魔法軍のトップ。
「ナメられたもんだな、俺達も。胸糞悪い、一瞬で終わらせんぞ」
そう言ってアスモダイは口から炎を吹く。
ミシェルは白い光線をロッドの先端から敵へと放出する。
二人の攻撃が同時に終わった後には悪魔の一体も残っていない。
「どうやら、準備運動にもならなかったみたいだな」
そう言いながらミシェルが鼻を鳴らす。
そこでアスモダイが何かに気がついた。
アスモダイの視線を辿ると、そこには陽をバックに瓦礫の山からミシェルとアスモダイを見下ろす男の姿があった。
逆光で顔は見えないが、物凄い禍々しいオーラを放っているのが分かった。
突如男は踵を返し、先程来た湖への道へと走っていく。
まるで、ミシェル達を誘うかのように。
それを追いかけてミシェル達も駆け出す。
見えてきた湖の縁でびしょ濡れでグッタリと横たわるライラと、その側に立つ黒いローブの男の姿をミシェルは見つけた。
その時には先程の男はいなくなっていたが、ミシェルは二人に駆け寄る。
「ライラ ! どうした、何があった ! ? 」
そんなミシェルをよそにアスモダイは立ち尽くしていた。
――パイモン。
先程の謎の男を思い、アスモダイは片手で顔を覆った。




