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戦えない母は赤ちゃん抱いて異世界にいた  作者: くじら


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第22話:それは、王都へ向かっていた





 風が、身体を叩きつける。


 いや——違う。


 これは、風なんて生易しいものじゃない。


 暴力だ。


 空そのものが、牙を剥いて襲いかかってくる。


「……っ!」


 息ができない。


 肺に空気が入らない。


 視界が、揺れる。


 下を見た瞬間——


 思考が、止まった。


「は……?」


 森が、遠い。


 いや、違う。


 小さい。


 さっきまで立っていた場所が、まるで玩具みたいに見える。


 足が、震える。


 逃げ場なんて、どこにもない。


(……落ちたら、死ぬ)


 当たり前のことが、やけに現実味を帯びて迫ってくる。


 なのに——


「きゃぁっ!」


 腕の中で、遥斗が笑った。



 信じられないものを見るように、ビッツは腕の中を見る。


 暴風の中。


 この高さで。


 普通なら、泣き叫ぶはずの赤子が——


 笑っている。



 怖くないのか、と問いかける余裕すらない。



進路が決まっているかのように、黒龍は真っ直ぐ飛び続けている。



そればかりか、風をその身に受け——


どこか心地よさそうにさえ見えた。



一見、ただ飛んでいるだけに見える。


 だが——遅い。


 あり得ないほどに。



ゆっくり飛ぶ、その姿が問題だった。



黒龍がゆっくり飛ぶ?



豪速で飛ぶことが可能な黒龍が?



それは、何のため?



まるで何かに気遣うように。



理由なんて、一つしかない。



 ビッツは、ゆっくりと腕の中を見る。



 ——遥斗。



 その時、気付く。



 ——黒龍は。


 遥斗から、一瞬も目を離していない。



——それだけではない。



ビッツは、チラリと後ろを振り返った。



「ヒィ……」



おびただしいほどの精霊の数



世界中の精霊が居るのではと思うほどの精霊がビッツ達の後を付いて来ていた。



逃げるでもなく、敵意もなく、


 ただ——付き従うように。



その中には滅多に姿を表さない黒の精霊の姿もあり、ビッツは目をひん剥く勢いで凝視する。



あれは……



見間違いか?



黒……?




黒の精霊!?



今日、何度目かの驚きと共にビッツは口から魂が抜ける。



 その時だった。


 遠くに見えてきた風景に、ビッツの意識が一気に引き戻される。




「あれは、王都っ」



巨大な防壁



行き交う人々



——何も知らずに。



今頃王都では……



そこまで考えビッツは腕の中の遥斗を見つめる。



相変わらず腕の中で遥斗は楽しそうに笑う。


「あうぅ!きゃっ!」



精霊が遥斗の周りを楽しそうに浮遊する。



その光景は幻想的にも見える。



巨大な黒龍とおびただしい数の神秘的な精霊



—そのすべてが、王都へ向かっている。









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