話のかみ合わないおばあさん
来店するたびに、不思議な要求をするおばあさんがいました。
ある日、おばあさんは菓子パンを一つ持ってきました。
「じゃあ、お皿をください」
なぜパンにお皿が必要なのかは分かりませんでしたが、店には使い捨てのお皿(1枚分)がないので、その旨を伝えました。
すると翌日、おばあさんは冷たいおにぎりを買い、
「これ、熱いまま持って帰りたいんですけど」
と言いました。
温めますかと尋ねると、
「ご飯が熱くなると困るんです」
と断られました。
意味が分かりません。
また別の日には、ペットボトルのお茶を買い、
「ストローを二本ください」
と言いました。
一本で十分ではないかと思いましたが、黙って渡しました。
極めつけは、レジで何も買わずに
「お箸をください」
と言われた日です。
「申し訳ありません。お箸が必要な商品をお買い上げのお客様にお渡ししているんです」
「じゃあ、このガムをお弁当だと思ってください」
そう言っておばあさんが持ってきたのは、ガム一個でした。
会計を済ませると、おばあさんは満足そうにうなずきました。
私は返す言葉が見つかりませんでした。
店長に相談すると、
「あの方は毎回、こちらの想像の一歩先を行くんだよ」
と笑われました。
それ以来、私はあのおばあさんが来ると、何より先に心の準備をするようになりました。




