初めての領民を食べちゃうよ?
「うにゅ?」
パチリと目が覚める。
どうやら魔法の使い過ぎで疲れて寝てしまったようだ。
いやー、張り切り過ぎちゃったからな〜〜!
「あいあい。(うんうん。)」
「あ、セイン様。御目覚めですか?」
1人で頑張ったなーと考えていると、ターニャが近付いて来る。
あれ?そういえばここ部屋じゃないな?庭?
キョロキョロと周りを見渡しているとターニャが俺を抱えて説明してくれた。
「すみませんセイン様。本当はお部屋に連れて行きたかったのですが、領民の皆さんを屋敷の庭に集めているので警護の関係上、私も此処を離れられないのです。」
ほうほう。
そうかー、ターニャは護衛メイドだから戦闘力あるしねー。
「奥様が出陣なさった今、この屋敷は残りの冒険者と私、後は戦える使用人数名しか守りがありません。手が足りず、護衛対象を固める必要があります。貴族であるセイン様には申し訳ないのですが・・・」
「あ〜、あいあい!(お〜、気にしない!)」
そうか、この世界の貴族の子供は3歳位まで人目につかないようにするんだっけ?
でも今は緊急事態だからね!
俺はそこの所分かる幼児だから!
仕方なし!!
ぐうう〜〜〜・・・
「あうー・・・」
「あら?セイン様、もしかしてお腹減ってます?」
「あい!」
説明を聞いてたらお腹が鳴ってしまった!
頑張った反動でお腹がペコペコです!
「では、あちらで炊き出しを行っているので、行きましょうか?」
「あいあい!(行く行く!)」
そのままターニャが俺を抱っこして移動する。
俺が寝ていた場所が、中庭みたいになっている部分だったが、ここはそんなに広くない。
いつもは母様がお茶をする時に使う庭となっている。
季節の花を植えた花壇を綺麗に整えた憩いの場?とでも言えば良いのかな?
そこからグルっと屋敷を回ると俺が母様と魔法の訓練をしていた場所になる。
そこは広い庭になっていて魔法をぶっ放しても大丈夫なくらいには広い。
で、屋敷はグルーーーーーっと塀に囲まれているのでファングボルトの屋敷は避難場所としても使えると言う訳である。
「では、私が食事を用意してきますのでセイン様はここで大人しく・・・」
「ターニャ!そんな所で何してるんだ?」
用意された椅子に座らせられて、ターニャが食事を準備しようとすると男の人から声を掛けられた。
「ちょ!?何でここに!!此方には近寄らない様に言ったはずですが!?」
「硬いこと言うなよ!領主邸をゆっくり見て回る機会なんてそんなにねえだろう?」
ターニャが慌てて男に注意するが男は意に介さず、屋敷の観察をしている。
「なうあう?(何だコイツ?)」
「ん?」
俺が思わず呟くと、男が俺に向き直り目が合う。
「あうあうー(誰だ君ー)」
「え、ええっと・・・」
男に指を突きつけ、誰だアピールをする。
すると、男は段々と焦った様に言葉を無くしていく。
「も、もしかして、セ、セイン坊ちゃん・・・だったり?」
「あい!」
聞かれたので返事をしておく。
行儀良くしないと親の教育はどうなってるんだー!なんて言われかねないからね!
母様達がバカにされない様に良い子します!
で、貴様は誰なんだ?
「ししししし・・・・」
「にゃにゃにゃにゃにゃ?(ししししし?)」
ガバーーーーーー!!
「失礼しましたーーーーーーーー!!!!」
「にゃお!?」
男がいきなり土下座する!
何々!?なんなの!?
急展開すぎてついて行けないでいると、ターニャが腰に装備していた剣を抜き、男の方に剣先を向ける。
「セイン様。この男を斬りますか?」
「にゃうば!?(何で!?)」
普段見ないターニャの殺気だった姿に混乱して、アワアワしていると慌てた様にローザと別の男が駆け寄ってきた!
「ターニャ!?」
「おおい!?馬鹿野郎!!何でここにいやがる!!?」
ええー、俺は置いてきぼりで、ローザはターニャを止めるのに精一杯。
ローザと一緒に来た男の人は、ターニャに斬られそうになっていた男を張り倒していた。
その間落ち着くまで俺はほったらかしでしたよ?
「・・・・と言うわけでして、この馬鹿者は斬られても仕方ないのです。」
「ああーー・・・(ええーー・・・)」
はい、落ち着いたらローザが説明してくれたのですが、この世界の貴族の子供は3歳まで基本的に人攫いや政敵に狙われない様に家族と使用人以外には顔見せを基本せずに屋敷などで隔離して過ごす。
その決まりを破る事は法で罰せられる他、その貴族自身に子供を守るために斬り捨てられる程の重罪に当たる。という貴族の決まりがあるらしい。
で、今は緊急時と言う事で、領民の人達をこの屋敷の防壁の中に入れているのだが、貴族の決まりを破らない様に伝えていたらしい。
それで、肝心のこの男は何でこんな事をしたかというと・・・
「だ、だって!貴族の家をゆっくり見て回ることなんて滅多に出来ないし・・・」
「馬鹿野郎!!此処には坊ちゃんが居るから我慢しろと言っておいただろうが!!!」
「だってだってー!!こんな立派な造り、見学したいじゃないか?」
「時と場所を弁えろ!」
という自分の欲望に負けた結果だ。
と言うか、魔物の大群が迫ってるのに余裕ですね?
俺があんなに苦労して、魔法使っていた間、コヤツは・・・
「あぶ・・・(イラ・・・)」
「わわわ・・・!」
「え?セイン坊ちゃん?」
随分と御気楽に過ごしていた様だな?
ちょっと危機感を持ちましょうか!?
「お、おい!ぼ、坊ちゃんからなんか出てないか!?」
「セセセセセセ、セイン様!!お、落ち着いてー!?」
「い、いけません!に、逃げなさい!」
「へ?」
ターニャ、叱っていた男、ローザは慌てふためく。
犯人はキョトンとしていた。
ニヤリ!!
「あぶあらぶだ・・・(魔法大全さん・・・)」
可愛らしく笑ってスキルを起動する。
「「「「こ、怖っ!!!」」」」
失礼な!
幼児の笑顔が怖いだと!?
ならば仕方ない!全力で怖がっていただきましょう!!
「ああああぶあら!(恐竜さんおいで!)」
グオオオオオオオオーーーー!!!
「「「「ええええええええーー!!!???」」」
10メートルを越えるかという巨大な生物。
鋭い牙を煌かせる巨大な頭部。
二足歩行ながら、明かに異常な筋肉質。
俺の想像の中にいる姿ではあるが、この恐竜の名はーーー
「にゃうらあいにゅる!(ティラノサウルス!)」
グオオオオオオオオーーーー!!!!
「は、ははは・・・」
「い、いやー・・・」
「な、なんじゃこりゃ・・・」
「うええええ?」
大きな鳴き声に犯人の男は腰を抜かし、ターニャ達は目を点にして動けないでいる。
「何だ!?」
「魔物が侵入したのか!?」
「冒険者!集まれ!!」
ドドドドーーーーっと足音が近づく。
どうやら冒険者と屋敷の使用人達が集まってきている様だ。
建物の陰から大勢の人が飛び出て来るのと同時に、
「あ〜い♪」
グルル・・・
「へ?」
「「「あ・・・」」」
犯人とターニャ達が呆気にとられる中、
「「「「「ええええええええええ!!!!????」」」」」
驚きが支配している空間で、
「ぱっくん!(食べちゃえ!)」
バクンーーー!!!
と、ティラノさんが犯人の男に頭から齧り付きましたとさーーーーー
久しぶりにおふざけが出来て楽しかったです!
お付き合いありがとうございます!




