余計な一言?
「失礼します。」
そう声をかけて入ってきたのはダニエルさんでした。
「ダニエル、遅かったわね?」
「はっ。ちょっと領民の避難勧告に手間取りました。」
おお!既に領地に避難勧告を出してきたらしい!
指示される前に動くとは!!
ダニエルさん、出来る男ですね〜〜!
「避難にはどれくらいかかりそう?」
「はい、多少の混乱がありましたが領民231名全て移動の準備は完了しております。後はこの館の防衛を整えれば移動可能です。」
ほうほう領民は231名なのか。
これは多いのか少ないのか分からないな。
うちの領地は特に貧困しているわけでもないし、大丈夫なのかな?
「では、この館の守りの人選はヴァルトお願いね?残りの人数で出陣準備をしましょう。」
「はっ!準備は既に進めております。しかし、先ほども言った通り、魔物に対して対策を考えねばなりません・・・」
「ほう、それは騎士団と冒険者の戦力で魔物と戦うと?」
「ダニエル殿。無茶は承知だが、相手は赤い瞳の魔物だ。バックにヴァンパイアがいる以上、ユリーナ様の消耗は避けねばならぬであろう?」
「そうですね・・・ヴァンパイアの『魅了』スキルで魔物を操っているのでしょう。ヴァンパイアを叩くのが良いのですが・・・」
「2人とも、それが難しいのはわかっているでしょう?ヴァンパイアほど隠密にたけた魔族は居ないわ。」
ふむ、何やら小難しい話が展開されておる。
俺はお腹いっぱいで眠くなってきたんですけど?
ちょっとターニャさんの膝の上でウトウトしちゃうぞーーー。
「セイン様、お眠ですか?」
「あいあい・・・」
「ふふふ。では私の膝をお貸しいたしますね〜。」
「あふう・・・」
「「「・・・・・・・」」」
何やら視線を感じるが、気にしたら負けだ!
何度も言っているが俺は幼児なんだよ!
まだ1歳児なんだ!
思うがままに行動してもいいでしょう!?
と、言うわけで、おやすみなさい・・・
「ああ、それならセイン坊ちゃんにお願いしましょうか?」
「「「えっ!!!???」」」
「あい?」
無関心を決め込んで寝ようとしていたら聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしましたよ?
え?何をお願いされるの!?
「セイン坊ちゃんの魔法で魔物の大群を減らしてもらうのですよ。」
「ああい!?(なんで!?)」
「ええ!?セインちゃんに?危なくないかしら・・・」
「い、いや、流石にセイン様は危険であろう?まだこんなに小さな子供だぞ?」
「そうですよ!ダニエルさん。流石に幼児を戦場に出すのは・・・」
「あいあい!!(そうだそうだ!!)」
「うわ〜、セイン様が全力で嫌がってますけど?」
ダニエルの不穏な発言に俺は全力で拒否の意思を示す!
ダニエルめー!1歳児に何言ってるの!?
幼児虐待で訴えるぞコノヤロウ!!!
「何もセイン坊ちゃんに戦場に立てとは言っていませんよ?街の防壁の上から魔法の一撃を見舞ってくだされば充分かと思いましてね?」
「ああ。それならセインちゃんでも出来るわね〜!」
「ふむ、確かにセイン様は山を吹き飛ばした前科がありますからな。威力は充分か・・・」
「まあ、坊ちゃんに危険がないなら今は猫の手も借りたいでしょうし?」
「セイン様が行くなら私が護衛します!!」
「あうあうあうーーーー!?(いやいやいやーーーー!?)」
無理無理無理!!!???
なーーーーーーーに!?
皆んなノリ気になっちゃってんの!?
大体、魔法で山を吹き飛ばしたのだって魔力過剰症候群の溢れた魔力があってこそだからね!?
今の俺じゃあんな威力出ないし!!
それにそれに、俺は幼児だってばーーーーー!?
「ダブダブダブルッ!!(馬鹿じゃないの!!)」
「わ〜〜〜・・・」
「いや、全力で嫌がってますな・・・」
「俺はこんなに怒る1歳児を見た事ないぞ?」
「セイン坊ちゃんは情緒不安定な子供ですからね・・・」
周りがちょっと引いてますが関係あるか!!
嫌なんじゃい!!!
すうっーーーー
「あい?」
「セインちゃん。」
フワッと母様に抱き上げられると一度ギュウッと抱きしめて母様が俺と目を合わせる。
「ごめんね、嫌なのも怖いのも分かるわ。1歳ですもの。母様を恨んでくれても良い。けど、この領地の民を守るのが貴族として産まれた私達の責任。わかってくれとは言えないけれど、今日、一度だけ母様に・・・いえ、民衆を守るために力を貸して!!」
「あう・・・」
いつもおっとりな母様が初めて見る真剣な表情で語りかけてくる。
俺にはまだ貴族だの何だの実感は無い。
けど、真剣でありながら悲しそうな母様の目を見てると駄々を捏ねるだけじゃ駄目なんだと思えた。
「う〜・・・あい!」
こうなりゃやけだ!!
返事の代わりに俺は笑顔で手を挙げたーーーー
「はい、セインちゃん説得完了よ!すぐ準備して!!!」
「あい!?」
「流石は奥様!!坊ちゃんを逃してはいけませんよターニャ!!」
「え?は、はい!!」
「よし、俺は騎士団と冒険者を街の防壁に集めるぞ!」
「私達、メイド隊はすぐに領民の受け入れ態勢を整えますよ!!」
「あ、あうあう・・・!?」
俺は返事と同時にターニャに預けられると、皆んなが勢い良く動き出す。
えええ!!!???
ひょ、ひょっとして俺、謀られたの!?
いや、1歳児を謀るって・・・・
く、クソーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
ヒュウウウウウウウ・・・・・
「だぶーー・・・・」
はい、俺は何も出来ずに防壁の天辺に母様とターニャに連れてこられました。
「ほらセインちゃん。あれが見えるかしら?」
「う、うわ〜〜〜・・・流石に凄いですねーーー・・・」
防壁の向こうにチカチカと赤い光と砂埃が立ち上がっている。
あれは魔物の目の光かな?
凄い怖いんですけど?
今からでも逃げませんか?
「おい、ユリーナ様が抱っこしてる赤ん坊はなんだ?」
「何って最近産まれた子供だろう?」
「いや、貴族の子供が産まれてまもなく出てくるのか?」
「それより、なんであそこに居るんだ?」
おおう、俺らの足元には布陣を組んだ騎士と冒険者が居るんだがめちゃくちゃ注目しとる!!
そうだよね?この世界の貴族の子供は1歳ではあまり外には出ないんだよね?
珍しいでしょ?
本当に何で此処に居るんでしょうね?
ゴオオオオオオン・・・・!!!
「あうっ!!?」
大きな鐘の音が響き渡る。
すると、ザワザワしていた皆んなが音のしたほうに注目した。
そこには騎士団長ヴァルトが竜の描かれた大きな旗を握って立っていた!!
「皆んな、聞いてくれ!!今より、推定2000匹の魔物、及びヴァンパイアと思しき軍勢と戦闘に入る!!!」
ザワザワーーーーーー!!
ヴァルトの宣言に静まり返った皆んながザワザワし始めた。
気持ちはわかるよ。だって2000だよ?こっち100人くらいだし。
ゴオオオオオオンーーーーーー!!
「静まれ!!安心しろ!!!此方にはかつてヴァンパイアより王都を守った英雄ユリーナ様が付いている!!」
バッ!!と手を振り上げ防壁にいる母様を手で示すヴァルト。
そして、母様が息を吸い声を上げる。
「皆んな、領主代行ユリーナ=ヘル=ファングボルトよ!!!ヴァンパイアは私が責任を持って滅ぼします。皆んなには勇気を持ってヴァンパイアへの道を作って欲しい!!さすれば私が必ず愚かなヴァンパイアを滅します!!!良いですか?ヴァンパイアの滅殺は必然です!!!このロクサーナ領に手を出した事を後悔させなさい!!」
おおおおおーーー!!!
皆んなが母様の宣言に声を上げる!!
母様、カッコイイ!!!
「で、皆んなの先陣を切るのは私の息子よ〜!可愛い可愛いセインちゃんです!!皆んな宜しくね〜〜〜?」
「「「「「はあッ!!!!????」」」」」
皆んなが最高潮に盛り上がった所で母様がいつもの調子で切り出す。
皆んなが不思議そうな声を上げる中、俺はターニャに頭上まで持ち上げられる。
皆んなが再び不安そうな目を俺に向けてくるんですけど?
いや、俺だって不安ですよ?
「あーい・・・・」
俺は誰にも聴こえないような声で溜息を吐き出す。
いや、もう、どうしよう!!??
ピコーン
『久しぶりに見たら楽しそうな事してますね?プププッ!!』
プッチーーーーーーン!!!
アワアワしてたら神の余計な一言で何かが切れた俺はこの後、そりゃあもう、盛大にやらかす。
どれくらいやらかすかと言うと、
それは次回らしいです!
ちゃんちゃん。
暫く急展開で場面が切り替わります。
なるべく区切っていこうと思いますが、セインの慌てっぷりは伝わってるのかな?
次回、セイン君の出陣(?)です!




