2512.漏出のメリットとデメリットを天秤にかける大魔王
「ん……?」
フルーフが新たに『呪法』を完成させてから更に時が経った日の昼下がりの午後。いつものようにレアが午前中の仕事を終えて、午後の軍の鍛錬の指導の為に向かおうとしていたその時の出来事だった。
「!?」
この世界では感じたことがない程の大きな『魔力』を持った二体の『存在』が、レパートの世界に現れたのを感じ取るレアであった。
「こ、この膨大な魔力は何!? そ、ソフィ様……達じゃないわよねぇ!?」
レアが使ったのはあくまで『魔力感知』である為、この膨大な魔力を有する者達が誰なのかという情報までは開示されてはいない。この先の情報までをも完全に把握するには、今レアが使った『魔力感知』の更に上位と言える『漏出』の魔法を使えば全ての知りたい情報を得る事が可能になるのだが、それだけの情報量を得る代わりの代償として、レアの生命に危機が及んでしまうのだった(※レアの魔力を遥かに超える者の『魔』の概念の基となる魔力を強引に数値化しようとすれば、その情報量に耐えきれずに脳が焼き切れてしまうのである)。
つまり、とんでもない強さの者達がこの世界に現れたという事を把握は出来たが、その存在が『敵』なのか『味方』なのかという事をこの時点では、レアは知る事が叶わなかったという事である。
「と、とりあえず、先ずはフルーフ様に指示を仰がなくちゃいけないわねぇっ!」
執務室の窓から遠くの空を眺めていたレアは、慌てて地下で『魔』の研鑽を行っている父のフルーフを呼びに向かうのであった。
…………
そしてもちろん地下で研鑽を行っていたフルーフにも、この世界に現れた者達の存在の事には気づいているのだった。
「……無視出来ぬ程の『魔力』の持ち主が二体。それも片方の『魔力』の種類を見るに『呪法師』……か?」
当然フルーフも『漏出』を使う事は命取りになるという事を理解している為、この時点ではまだ使ってはいなかった。
しかし、魔王レアではまだまだ『漏出』を使うという選択肢を選ぶ事は出来ないが、この大魔王フルーフ程の概念理解度を持っていれば、器用に『魔力コントロール』を扱う事で相手の情報を開示した直後、直ぐにデメリットの部分に襲われる前に『漏出』を解除するという高等テクニックを扱う事も出来るのだが、近代ではそれそらも逆手に取って、強引に『漏出』のデメリットを被せようとする『魔』の概念技法も『呪法師』達の間で流行り始めている為、最悪の状況を鑑みて、あえてリスクを負うような真似をせずに、レアと同様に『魔力感知』の使用に押し留めたのであった。
何よりその判断を下した最大の理由が、この二体の内の一体が『呪法師』の可能性があるという点であった。
『魔』の概念の理解度が高い者ほど理解している事だが、相手が『呪法師』だと判明した時点で強さや詳しい能力などが定かになっていない状況であっても、常に『最悪』を予想して『漏出』などのリスクを背負うような真似はしない。
単に魔力値が高い者や、強力な殲滅魔法などを覚えている存在よりも、余程に『大魔王領域』レベルの『呪法師』の方が厄介な事が多い。
それは特に『ディアトロス』や『エヴィ』、そして何よりこの一つの『理』を生み出した『フルーフ』の存在が、如実にその意味を表していると言える。
つまり結論を言えば、ここでフルーフが安易に『漏出』を用いることで、相手の『呪法師』が何らかの『呪法』で対策を行っていた場合に、フルーフ自身の『漏出』のデメリット効果を『魔力コントロール』で回避が出来たのだとしても、今度は『呪法師』側の対策の『呪法』が発動を起こしてしまい、フルーフは何らかの攻撃を受けてしまう可能性があったという事である。
もちろん実際に『ロプトウス』が対策を講じていたかは定かではないわけだが、フルーフはそこまで考えて、彼ら二体から得られる情報のメリットと、不確定要素の攻撃を受けるデメリットを天秤にかけて使用を避けたというわけであった。
「フルーフ様! 正体不明の強力な『魔力』を有している存在二体が、この城に凄い速度で迫って来ています!」
そしてフルーフが地下の修行場で思案を行っていると、そこに慌てた様子のレアが報告にやってくるのであった。
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