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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
フルーフの世界編

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2511.大魔王の我が娘を想う気持ち

「では、フルーフ様が過去に見たというこの『呪法』を生み出すキッカケとなった『魔法』とは、時魔法にある『次元防壁ディメンション・アンミナ』のようなものというわけなのですか……?」


「細かく言えばあちらは無効化ではなく、別次元の空間に送り飛ばすという代物だがな。しかしまぁ、迫る危機から守るという観点からであれば、その用途は同じようなものだな。だが先程も述べたが、あれはワシでも直ぐに使う事は無理だと直感で判断出来る程に消費魔力が大きかった。ワシがソフィ程に魔力値が高ければ、わざわざ『呪法』として新たに『理』から構築し直す必要もなく、そのまま組み替えた『発動羅列』をそのまま使用出来たのだがな……」


「しかしそれはあまりにも現実味がなさすぎますね……。フルーフ様の持つ魔力量は間違いなく、この『レパート』の世界に比肩する者が存在しない程に高いのですから。それにソフィ様の事は、もう考えるだけ馬鹿らしくなってしまいますね」


「フフッ、あやつのやる事は全てが規格外だからの。そう言えばあやつはワシが創った方の正規の『概念跳躍(アルム・ノーティア)』をユファの奴から教わっていたらしいが、ノックスの世界に旅立つ前に未だに出来ぬと嘆いておったな」


 ふとソフィの話題が出た事でフルーフは、あの時のソフィとのやり取りを思い出すのだった。


「……確かそれが理由で『ノックス』の世界の座標を知る大魔王ヌーを案内役に、お仲間を迎えに向かわれたのでしたか」


「うむ、その通りだ」


「もしソフィ様が『概念跳躍(アルム・ノーティア)』を使えていたら、わざわざアイツを牢から出さなくても良かったのに……!」


「まぁ、そう言うなレアよ。煌聖の教団の者達が使っておる『概念跳躍(アルム・ノーティア)』はどうか知らぬが、ワシの方の『概念跳躍(アルム・ノーティア)』はそう簡単に扱えるようになるものでもない。時魔法(タイム・マジック)というものは単に『魔力』が高いだけでは駄目なのだ。それは会得に至ったお主にも分かるだろう?」


「はい……」


(いや、これはこの娘には失言だったな……)


 直後、フルーフは愛娘のレアだけは、例外であった事を思い出す。


 彼女は父の期待に応える為に、必死に寝る暇も惜しんで『概念跳躍(アルム・ノーティア)』の魔法を短期間で会得して見せたのだ。それもまだ、当時は『魔王』領域にもギリギリ届くかどうかという時の話である。


(ワシはヌーやミラの事を憎む気持ちは今も変わらず抱いておるが、少しばかりその憎む気持ちに変化が生じ始めておる事を自覚し始めておる。これまではこの愛娘であるレアに寂しい思いをさせてしまったという後悔が大きな割合を占めておったが、最近はそれ以上にこの優秀にして、とてつもない『魔』の才能を秘めておったレアの時間をワシのせいで大きく消失させてしまったという後悔だ……。それも更には『代替身体』にまで至らせてしまい、余計にレアの時間を奪わせてしまった。もしあの時、ワシが好奇心でアレルバレルに向かわなければ、いやそれ以前に別世界へ行ってみたいなどという願望を抱かなければ、今頃レアはその才能を活かしてとてつもない程の『大賢者』になって、今頃はこのワシなんぞをあっという間に追い抜いておった事だろう。口惜しい事だ、せめてソフィと戦い終えた後、あやつの言う通りにしてあのままこの世界に戻っていれば、こんな事にはならなかったのに。全くもって口惜しい事じゃ……!)


 健気に愛娘はフルーフを取り戻そうと、自分の為に用意されていた数千年という多大なる時間を無碍に失い、更にはそれ以上にこれまで蓄えてきた『魔力値』すらも代替身体の身に落ちた事で、十分の一にまで減らす事になってしまった。


『魔』の概念を理解しようとする者は、少しの時間の消費ですらも惜しむ程に自分を高めようとする頑固者が多いのだ。そんな『魔』の概念理解者である筈のレアは、自分の努力してきたものを放棄してまで父親の為に、全てを投げ出して取り戻そうとした。


 本来であれば、その事を彼女自身が後悔の言葉として吐き出していてもおかしくないというのに、これまで一度も彼女が自分の事で後悔していると口にして見せた事はない。


 フルーフの前だからというわけではなく、誰からもレアがそんな言葉を口にしていたと言っているところを聞いたことがないのだ。むしろ父親を無事に見つけ出せた事に大喜びをして、良かったと涙を流して自分にこれまで以上に懐いてくれているのだ。


 フルーフはそんな健気な愛娘を考えると、いつも涙が出そうになるのだった。


(この子だけは、必ずワシが責任をもって幸せにしてやらねばならぬ。こんなワシの為に捧げて良い人生ではないのだ! この優しき魔族の有能たる才能を枯らすことなく、このおいぼれが必ず開花させて見せるからの……!) 


 フルーフは彼女にまだ言葉に出して聞かせる事はしていないが、こんな復讐の為の『呪法』を生み出す『(ことわり)』だけではなく、彼女を本来の強さに戻してあげられるような、そんな『魔』の概念技法を生み出そうと必死に考え始めているのであった。


 ……

 ……

 ……

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