2509.衝撃の事実
そして更にそれから数日が経ち、ソフィが妖魔山で王琳と戦いを始めた頃――。
遂に大魔王フルーフは自己研鑽の末、新たな『呪法』をこの世に生み出す事に成功するのだった。
愛娘のレアが自分の代わりに世界の統治を携わってくれているという事が、彼の中で何よりの意欲の維持となり、新呪法を生み出す集中力を持たせた事に繋がったようである。
「ふ、フルーフ様、い、今の魔力は……!?」
魔王城の深階で外に影響を及ぼさないように『結界』を施していたにも拘らず、レアはその『結界』の内側に居るフルーフの魔力の機微を感じ取り、これまでと明らかに異なる『魔力』の性質に気づいたようで、午前中の報告書を読んでいる最中、慌てて深階のフルーフの居る場所にまで駆けつけてきたようであった。
「うむ……。まだ完全に掌握出来たわけではないが、これまでの呪法とは異なる『理』区分から、新たな呪法を創れたようじゃ」
「そ、それって、これまでの『理』ではなく、新たな『理』を生み出されたという事でしょうか!?」
「この呪法に限って言えばの話だがな。間違いなくこれまでの『理』からでは、扱う事が出来ぬ呪法であるからな」
「す、凄い……!!」
当然この新たに生み出された『呪法』の元である『理』は、レパートの現存する『理』に成り代わる可能性は無いに等しいだろう。あくまで新呪法の為に生み出された『理』である以上は、それ以外には何の役割もなく、普段扱う『魔法』などに大きな影響を及ぼしてしまうからである。
「あやつは普段から攻撃的な言葉遣いを好み、非常に好戦的な振る舞いを見せるが、こと戦闘に関しては態度とは裏腹に緻密な戦略を用いてくる大魔王だ。ワシも最初はあの態度に騙されてまんまと策略に嵌められてしまったが、今回はその教訓を活かしてあやつが行おうとする事を逆手に取ってやろうと思い編み出したモノだ」
あれから彼女の父であるフルーフは、大魔王ヌーの事を余程に研究を行い続けていたのだろう。ヌーの名を口にして彼の特性の事を話している間中、ずっと殺意を秘めた目を浮かべて語っていた。
レアはそんなフルーフの目を見て怖がるのではなく、むしろ安堵していた。
(良かった……。フルーフ様も私と同様、アイツに対する気持ちが少しも風化なされていないご様子だ……! これ程の殺意をあっさりと出せるフルーフ様が開発された『呪法』ならば、きっと大魔王ヌーに一泡吹かせて下さり、そして私たちの悲願、完膚なきまでに報復をして下さるはずだ!)
――当然愛する父を数千年に渡って奪われ続けたレアの恨みは、こんな短期間で収まるものではない。
何よりその娘と同じ……いや、それ以上に父親であるフルーフも怒りを堪えている。この目の前に居る愛娘に寂しい思いと辛く悲しい思いを抱かせた大魔王ヌーに対して復讐を行おうとする想いが、この新たな『呪法』に込められていた。
「……しかしなレア、この呪法を使う為に必要となる『理』自体は、ワシが完全に新たに生み出したものに相違ないが、そもそもの話この呪法は、ワシの発想だけで生み出されたものというわけではないのだ」
「え? そ、それは、つまりどういう事なのでしょう?」
それなりに『魔』の概念理解度が進んでいるレアであっても、一つの『理』を生み出す程の『魔』の概念理解者というわけではない為、一から『理』を生み出した上で、その『理』から編み出された『呪法』が実は自分の発想だけで出来たわけではないと聞かされても、レアにはよく意味が理解出来なかった。
彼女にとっては、これまで存在していなかった『魔法』や『呪法』といった『魔』の概念技法が、新たな『理』から生み出されてこの世に体現を果たした時点で、その『魔』の概念は『理』を生み出した者の所有物だという発想に行き着いていたが、どうやらフルーフの中ではこの新たな呪法の基となったモデルが、すでに他の『理』から生み出された『魔』の概念技法にあるらしく、無から生み出されたというよりは、その既存する何らかの概念技法をきっかけとして生み出されたものであるらしい。
「うむ……。少しばかり思い出したくない過去の事ではあるのだがな、どうやらこの『呪法』の基となる『魔法』はワシが『煌聖の教団』の者達に操られておった時には、すでにこの世に存在しておったのかもしれぬ」
「!?」
予想だにしなかった突然のフルーフの放った言葉に、驚愕の表情を浮かべるレアであった。
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