2501.沈み行く夕日と、曇る気持ち
「俺に発言を撤回するつもりはない。ロプト、お前には『レパート』の世界に赴いてもらい、そのままフルーフをここに拉致してきてもらう」
そのレキの言葉にロプトウスは、エグゼを見ながら笑うのだった。
「れ、レキ様……!?」
「それとエグゼ、お前もコイツの事が信用出来ないというなら一緒に行ってこい」
「!?」
エグゼに嫌味な笑みを浮かべていたロプトウスだが、最後の言葉には不満げに眉を寄せるのだった。
「おい、コイツと一緒に行くのは流石に遠慮したいんだが?」
「文句を言うな、お前がフルーフの概念技法を見たいだろうと思って、わざわざこちらから譲歩してやったんだ。それにお前だけでは『レパート』の世界へ行けないだろう?」
「ちっ! 仕方がないな。だが、そいつを連れて行ってやってもいいが、フルーフって奴を攫うやり方は全て俺に任せてもらう。そいつに邪魔をさせないように良く言っておけよ?」
どう考えても配下が主に向けて言う言葉とは思えない口振りで、そう告げたロプトウスであった。
「お前もそれで良いな?」
「……分かりました」
主であるレキに言われては従わざるを得ないエグゼは、渋々といった様子で頷くのであった。
「ではマルクス、お前の配下を一人こいつらにつけろ。レパートの世界に行ける者をな」
「は、はい! す、直ぐに手配します!」
自分は置物とばかりにじっと前を向いて立っていたマルクスだが、唐突にレキに声を掛けられて慌てた様子でそう告げて、そのまま部下を呼びに部屋を出ていくのであった。
「……別世界へ向かわせる部下をつけてくれるなら、別にわざわざこいつを連れて行かなくてもいいんじゃないか?」
「クカカカッ! まぁそう言うな。それではこいつも収まりがつかんだろう。なぁ?」
「こいつだけでは何かと不安ですからね。道中、こいつの監視は私に全てお任せください」
「ふんっ、まぁ俺の邪魔をしないと約束するならそれでいい」
こうして大魔王フルーフを拉致する為、大魔王『エグゼ』と呪法師『ロプトウス』の両者が『レパート』の世界へと向かう事となるのであった。
…………
『レパート』の世界に『概念跳躍』で向かえる部下を連れてこいと命令されたマルクスは、玉座の間を出た後に直ぐ、大魔王メナスへ『念話』を送る為の波長を合わせるのであった。
しかし、この世界に今は居ないのか普段とは異なり、直ぐには波長が合わずに『念話』での通信が行えなかった。
「クソッ! 何かあれば直ぐに伝えろと言っていた癖にコレだ! 何処か別の世界へ行くなら行くと先に伝えておけよ! あのガキ!!」
マルクスはその場で地団太を踏むように地面を蹴ると、他者には好き勝手言っておいて、自分は何も言わずに別世界へ向かう勝手気ままな大魔王に悪態をつくのだった。
「仕方がない、こうなってはクソガキに報告するより先に、レキ様の元に部下をお連れしなくては……!」
マルクスは止めていた足を動かし始めると、直ぐに煌聖の教団の残党達が、任務の合間の休憩に使っている部屋へと駆け出していくのであった。
…………
そしてそのマルクスの『念話』が届かなかった当のメナスは、未だに『リラリオ』の世界に居たのであった。
彼はルードリヒ王国でレルピルと話し合いを終えた後、レキの本体があるクッケの町近くの山へと足を踏み入れていた。しかしその足がレキの本体がある場所へ向けられる事はなく、山の頂上付近に座り込んで一人、森を見下ろしながら物思いに耽るのだった。
「早くダールの世界へ戻らないと行けないんだろうけど……」
ここに来る時までは青空だったリラリオの空だが、今ではすっかり夕焼け空になっており、見下ろしていた森も赤い夕焼けに照らされて非常に美しい景色となっていた。
「昔と変わらない見事な景色だなぁ……。やっぱり僕はこの世界が一番好きだな」
ここ最近は『ダール』の世界の薄灰色の空ばかり眺めていた為、生まれ故郷と呼べる『リラリオ』の世界に戻り、こうして夕焼け空を眺めたり、高い山から見下ろす絶景ぶりに『ダール』の世界に戻るのが嫌になるメナスであった。
「僕達を目覚めさせてくれた主様には感謝してるけど、別に僕は大魔王ソフィが嫌いってわけでもないし、シェイディ達と楽しくこの美しいリラリオの世界で『魔』の研究をしながらのんびり暮らせたら、それが良いんだけどなぁ……」
大事な仲間達であるシェイディやイングラム達にも見せたことがない程の笑顔を浮かべながら、沈み行く夕日をじっと眺めてそう独り言ちる大魔王メナスだった。
……
……
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