2494.魔神級の大賢者でさえ、厄介に思うソフィの九大魔王達
「それで君の世界に現れた大魔王ソフィの配下の魔族達は、煌聖の教団の者達の手によって跳躍ばされたっていう事だけど、さっきの君の話では別に君の世界の侵略をしているというわけではないんだよね?」
「え、ええ……。今のところはですが。しかし彼らが身を寄せている者達のところが、我々人間達と長年争っていた魔族達のところでして、今は彼らも直接は手を出してきてはいませんが、我々が魔族と争っていると魔族達の加勢に入ってくるような形で妨害してきます。これまではヨールゲルバの魔族と我々人間達の間の戦争も拮抗状態が続いておりましたが、奴らの介入でそれもどうなるか分からなくなってきているところです……」
「ふーん……。なるほどねぇ」
メナスはレルピルの説明を全く信用していない様子ではあるが、それでも一応の辻褄は合っている為に、話半分で聞きながら頷いているといった様相であった。
当然レルピルもそれを分かってはいるが、別にその事に関しては先程のような苛立ちもない。何よりこの話自体が適当な作り話であり、確かに大魔王ソフィの配下達がヨールゲルバの世界に訪れていて、魔族達の味方をしているというのも本当ではあるのだが、実際はレルピルが魔族達の国も大陸そのものも支配していた為、むしろ侵略されていた魔族達が、レルピルに反旗を翻し始めたという方が正しいのだった。
更に言えばこのレルピルは魔族だけではなく、自分と同じ種族である人間達の全ての国の王達をも傀儡にして裏から思うが侭に操っている。
彼自身は国の実権を握っていたり、重要な役職に就いているというわけではないが、彼が気まぐれに決めた事を国に認めさせる事などは日常的に行われており、それに逆らう王族や貴族が一人でも彼の目に留まれば、あっさりとその一族を途絶えさせる程度には、レルピルの支配は人間達の世界にも及んでいた。
つまり『チャント・レルピル』にとって『ヨールゲルバ』の世界とは、彼の造形を彩る箱庭のようなものであり、自分の趣味の場とも言えるモノなのであった。
『チャント・レルピル』にとって、ヨールゲルバの世界で魔族や人間達を支配しているとはいっても、それはあくまで自分の造形遊びの一端を担っていただけの事であり、よっぽどの事がない限りは魔族達の命を奪ったり、根絶やしにしようなどとは少しも考えてはいなかった。
だが、そんな自分勝手に楽しんでいた自由の箱庭に、突如として異分子が入り込んできたことで自分の趣味を奪われた気になっているレルピルは、何としても大魔王ソフィの配下達を自分の箱庭の世界から排除を行いたいというわけである。
元々『金色の体現者』にして『魔』の分野で『魔神級』最上位の強さを持っていた『スペル・ホルドラン・ライドネス』こと『チャント・レルピル』は、大魔王ソフィの配下の九大魔王達をあっさりと屠って終わりにするつもりだった。
しかし、実際に手を合わせた感想としては、とてもではないが『ホーク』と『イバルディ』と名乗っていた大魔王両名に関しては、同時に相手にする事は不可能だという事であった。
その理由としては、すでにメナスに話した事が全てであり、その事に関しては全く嘘偽りもなく、全ての『魔』の概念をそっくりそのまま『レルピル』に反射を行ってみせて、更に『ホーク』に対して意識を割き続けていれば、あっという間に次々と繰り出される『イバルディ』の『魔』の概念技法の数々に打つ手を失わされてしまうのだ。
これまでレルピルは自身が世界の『魔』の頂点に立つ者と自負していたが、唐突に現れた『イバルディ』という自分にとってみれば、魔力値も戦力値もそこまで大したことがないはずの魔族に、上には上が居るのだと思い知らされてしまったのであった。
別にイバルディという魔族は、自分の持つ『魔』の知識を遥かに上回る大賢者だとか、世界の『理』を生み出すような歴史の転換点を担うような『存在』というわけではないのだ。
ただ、レルピルも知っている『魔法』に『魔』の概念技法等、それらを自分が思っていたモノとは異なるモノのように扱い、見た事も聞いた事もないような使い方を当たり前のようにイバルディに使われてしまうのだ。
とある『魔』の概念技法を一つの例に挙げるとして、どういった組み合わせでどういった原理でその『魔』の技法が動くかなど、これまでの研鑽からレルピルは結末までをすでに把握済みの筈であるというのに、その自分がよく知る筈の『魔』の概念技法は、イバルディの手によって繰り出されると、全く想像が想像する埒外の結果を見せつけてくるのだ。
更に分かりやすく説明をするならば、元々戦士や剣士だったものが、いきなり『魔法』を覚えた事で扱うようになり、メインの武器は変わらずに剣を使うのだが、何故かその剣をこれまで通りに振るのではなく、覚えた風の魔法でナイフのように、持っている剣に風の勢いを乗せて飛ばしてきたりするのだ。
確かに誰でも原理は分かるし、一目見れば行われた事に対する結果がどうなるかは直ぐに察する事は出来るのは間違いない。間違いはないのだが、そんな事をする道理や理由がレルピルには分からないのだ。
そうであるというのに、イバルディの扱っていた補助系統の魔法の種類はかなりの数を誇っていて、精霊の四元素だけではなく、明らかに神域領域の魔法なども織り交ぜられており、基礎となる『魔』の概念理解度も大賢者と呼べるだけの素質も持ち合わせている事は間違いなかった。
単なる思い付きで適当にやっているだけならレルピルも、珍しい馬鹿が居たもんだと一蹴するだけで終わるところなのだが、やられてみなければ分からないような結果に繋がる狙いが、行動一つ一つに仕組まれていると言えばわかるだろうか。
まるで大賢者や魔法使いといった『魔』の概念理解者と対極に居る存在が、大賢者以上に魔法の効力を知り尽くして利用してきているような、そんな違和感の塊が『イバルディ』という魔族の存在として、レルピルの頭に記憶されてしまったのである。
(あんな奴らを相手に俺一人でまともに相手などしていられるか。このメナスって魔族も曲者にして、全く気に入らない奴ではあるが、ああいった手合いとやり合わせるにはもってこいの人材だ。絶対にこいつを奴らの元に送り届けて戦わせてやる……!)
こうしてレルピルはメナスとの会話中の少しの間を利用して、自分の箱庭を取り戻す為に思考を巡らせ始めるのであった。
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