2492.厄介なのは大魔王ソフィだけではないという事
当初レルピルは、この城に突如として空間を繋げながら現れた『メナス』に驚きこそすれ、上手く『魔』の魔神級最上位である彼を上手く利用出来ないかと考えていた。
だが、実際に会話を行ってみて、それは自分にとってはかなり難しい事だと理解させられる事となった。
大魔王メナスは魔族として長く生きている筈だというのに、その実見た目通りの精神年齢と言わざるを得なかったのである。
自分の思い通りに行かなければ癇癪を起こすかのように暴れて、納得出来ない事があれば何があろうと曲げようとしない。なまじ力あるせいで自分に従わない相手を脅して最後には殺そうとする。
確かにこういう輩は『ヨールゲルバ』の世界にも全く居なかったわけではない。だが、それでもメナスのような『魔』の概念においての『魔神級』最上位程の強さを有している者などは皆無だった。
そしてレルピルは大賢者『チャント・レルピル』として、ヨールゲルバでは支配者として世界中に知れ渡っている存在であり、そんなレルピルを前にしてメナス様な振る舞いを行う奴なども長らく現れる事はなかった。
だからこそ、この世界に来てメナスを見たレルピルは、この手の者は自分とは相性が悪いと改めて理解をしたのであった。
「……実は私が煌聖の教団の手引きに応じてやってきたのには、大魔王ソフィの配下と名乗る魔族が私達の世界にやって来た事が原因なのです」
レルピルがメナスを相性が悪いと感じているように、メナスもまた回りくどく説明を行うレルピルを毛嫌いし始めていたのだが、そのレルピルの口から大魔王ソフィの名が出ると、地団太を踏んで文句ばかり口にしていたメナスも静かになり、じっとするように動きを止めてレルピルに視線を向け直すのだった。
「それは何、大魔王ソフィの配下が君達の世界を侵略しに入り込んできたって事?」
(それを今から俺が説明しようとしているところだろうがっ! さっさと話せと言っておいて、自分から話の腰を折ろうとする。ほんっとに精神年齢の低いガキの相手は面倒だ!)
レルピルは胸中でそう叫んだが、当然に表立ってはメナスにそんな発言をせずに首を横に振るのだった。
「いえ、奴らも侵略をしにきたわけではなく、どうやら何の因果か彼らがヨールゲルバの世界にやってきたのも『煌聖の教団』のせいであったらしく、何やら戦争の最中に『煌聖の教団』の大魔王の『時魔法』によって、アレルバレルという世界から私共の世界にやってきたのです」
大魔王ソフィの配下がヨールゲルバにやってきたのも『煌聖の教団』が関係しており、更にそんなヨールゲルバの世界にレルピルを勧誘してきたのもまた、同じ組織であった『煌聖の教団』の残党達だというのだから、運命とは面白いものである。
「ああ……。少し前に大魔王ソフィが自分の配下を探す為に『ノックス』っていう世界に迎えに行ったみたいだけど、そっちの世界にも自分の仲間が跳躍ばされていたって事か。僕は大魔王ソフィは危険な奴だって知っているけど、彼の配下もそんなに強いの?」
「そうですね、単純な戦力値という意味ではそこまで強いと呼べるものではないですが、やってきた魔族の二名ともが厄介な能力を有している者達で、更には『金色の体現者』だったのです」
ソフィも少し前にセルバスから、ヨールゲルバの世界に配下の仲間が跳躍ばされているという情報を教えられたばかりだったが、どうやらセルバスの知らないところでもう一体のソフィの配下が、レルピルの世界である『ヨールゲルバ』に同じように跳躍ばされていたようであった。
「大魔王ソフィ自体やばいけど、彼の周りの連中も侮れないみたいだからね。僕が知っているだけでも『超越者』に近しい奴が一体、さっきの僕の『結界』の中でも君と同じように意識をしっかりと保ったまま構えられていた奴が一体。更には僕と同行を共にしていた『魔神級』の呪法師の『呪法』を見事に打ち破って川の汚染を正常に戻してみせた者も居た。少なくとも大魔王ソフィの周りに三体は厄介そうなのが居るって事だ。それを考えれば君の世界に突如として現れたっていう連中も同じように侮れないだろうなって事は、詳しく話を聞く前からよく分かる」
レルピルはメナスの言葉の後の複雑そうな表情を見て、やはりソフィの配下の魔族達と最後までやり合わず、一足先に『煌聖の教団』の勧誘を利用してこの世界にやってきておいて、本当に正解だったと思うのだった。
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