2491.最悪の相性の魔の概念理解者達
レルピルはこれまで自分の担当についていたルーヴァンス以外には、レキの組織に居る者達に明かしていなかった出身の世界の話をメナスにし始めるのであった。
ただ、もちろん自分がヨールゲルバの世界でかつて支配を行っていたという事はルーヴァンスにも伏せていた筈あり、その事を何故ルーヴァンスが知っているのかは不明であるが、ひとまずメナスにはあくまで大賢者として魔族達から人間の国を守っていたと説明を行うのだった。
「私が居た世界では、この世界のように魔族と人間が共同で何かを行おうとする程に親しくはなく、常に魔族と人間は争っていました」
「へぇ、君は人間なんだよね? という事は、君の世界の魔族たちは『魔王』にすら届いていないレベルだったの?」
「……いえ、そのような事はありませんよ。少なくとも、この世界の魔族達よりは強い事は間違いありませ――」
「あくまで今のこの世界の魔族達よりは、だよね?」
「え? あ、は、はい……。すみません、その通りです」
レルピルがこの世界の魔族より、自分達の居た世界の方が強い事を伝えようとすると、再びメナスの殺意が高まり始めて、レルピルが喋っている最中に訂正させようとするのであった。
レルピルも指摘されて直ぐ、メナス達は自分と同じように別世界から来た者ではなく、元々はこのリラリオ出身の魔族なのだと失念していた事を思い出すのだった。
「えっと、そうですね……私では、ヨールゲルバの魔族達の戦力値の数値などを正確に推し量るような真似は出来ませんが、それでも魔族達は『青』や『二色の併用』といったオーラを纏えておりましたので、少なくとも『真なる魔王』から『大魔王』の間ぐらいの力量を持つ魔族が一般的と言えたでしょうか」
「ふーん。それならまぁ、僕の『結界』の中でもしっかりと意識を保つことが出来ている君ぐらいの実力があれば、十分に君達の世界の魔族達の侵略を防ぐ事は容易に可能だろうな」
魔瞳を使っていなかったとはいえ、メナスの『結界』の中でしっかりと意識を保つ事が出来ているのであれば、少なくとも『真なる魔王』領域の魔族など相手にもならないだろう。
「ええ……。少し前までは魔族達の襲撃が行われても、何とか追い返す事が出来て居たのですが、最近になってそんな魔族達の強さが急激に上がりましてね。というより、見慣れぬ魔族達が突如として現れてから戦況が大きく変わってしまい、我々人間の大陸は魔王達によって未曾有の脅威に晒され始めたのです」
「まぁ、唐突に強い奴が現れ始めるのは、別に魔族達の世界では珍しい事じゃないしね。寿命も君達人間より長いのは間違いないんだし、もしかしたら長く生きてきた魔族の誰かが、経験から力に目覚め始めたんじゃない?」
レルピルの世界であるヨールゲルバが、魔族と人間どちらも大したことがないという事が分かると、あっという間に興味を失くしてしまい、話半分にメナスは聞きながら適当な言葉を口にし始める。
「ええ、そうかもしれませんね。貴方の『結界』でも意識を保つ事が可能な私でさえ、あっさりやられてしまえる程ですので、潜在的な強さは相当なものだったのかもしれませ――」
「君さ、僕を怒らせたくてわざとそんな言い回しを行っているの? あんまり調子に乗ってると本当に殺すけど?」
レルピルはおざなりに自分の話を聞き始めたメナスに苛立ち始めて、少しだけ意趣返しのつもりでメナスが反論しにくい程度の言葉で溜飲を下げようとしたが、そんなレルピルの言葉に直ぐに我慢出来ずに言い返すメナスだった。
(……我儘で言われて嫌な事には直ぐに反論する癖に、自分の事以外には興味を示さずに話すら真面目に聞かない。こいつは魔族でそれなりに長く生きている筈だというのに、中身はまるで我慢を知らない子供と変わらないな)
レルピルは自分が尋問をされている立場ではあるが、結界が解除されてからは、今なら戦えば自分が勝てると確信を抱いている為、冷静にメナスの性格を分析し始めるのであった。
「も、申し訳ありません。私も賢者として長く生きてきた弊害か、少し論理的といいますか……本質に沿った考え方と物言いをしてしまう癖がありまして、そういうつもりではなかったのですが、本質的な面であるがままに申してしまったといいますか……!」
「ああもうっ! もう、もう! もう、分かったから、さっさと話を進めてよ! どうでもいい事ばっかり喋って、謝っての繰り返しじゃないか! 僕は君と無駄話をする為にここに来たわけじゃないんだけど!?」
メナスはその場で地団太を踏みながら、癇癪を起こしたかのように大声で騒ぎ始める。
(浅いな……。こんな精神が幼い奴がどうして『魔』の分野での『魔神級』最上位になれたんだ? 天は二物を与えずとはいっても、あまりに才能の無駄遣いだろう)
レルピルはメナスが努力型の『魔法使い』ではなく、生まれ持った才能だけでここまで強くなったのだろうと判断するのだった。
「何? その不満そうな顔! 僕に怒られたからって無言になって、それで抵抗しているつもり?」
「そ、そのような事はございません! ど、何処まで話をしたかと思い出していただけでございます!」
「ほら! ほら、見ろよ! くどくど同じ事ばっかり言っているから、自分でも何を言っているか分からなくなってるんじゃないか! 君はもう少し僕達みたいに協調性を持った方が良いよ! 自分では自覚がないだろうから、今までそんな事を考える事もせずに全く分かっていなかったんだろうけどさ!」
その言葉にレルピルは、とうとう我慢の限界が近づいてきていることを自覚する。
(私は、こいつとは最悪といって良い程に相性が悪い。駄目だ、このままこいつと長く話をしていると、計画を破綻させてでもコイツを殺したくなってしまう。もう分析は良い、さっさと話してしまおう……)
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