2490.レルピルと大魔王メナス
「……分かりました、全てをお伝えしましょう。ですが、最初に言っておきますが、別に私は良からぬ企みを抱いて貴方がたの組織に入り込んだわけではありませんよ。もちろん大魔王レキ様を利用しようなどと考えた事も有りません。あくまで私情を抱いて組織の方々の誘いに乗っかり、ルーヴァンス様の口添えで直属の配下にして頂き、この国の宰相をしています」
「私情……ね。まぁひとまず主様を利用しようとしたわけじゃないっていう君の言葉を信じるとしよう。でも君は『呪法師』じゃないよね? 確か煌聖の教団の魔族達は、色々な世界で『呪法師』だと判断した者だけを連れてきている筈だけど、君はどうやってここに入り込んだのかな? それと僕はルーヴァンスが君を配下に選んだ事もよく分かっていないんだ。その件も含めて教えてもらえる?」
レルピルはメナスのこの後者の質問に関しては『ルーヴァンスに直接訊けよ』と思ったが、今もまだ殺意をばら撒いているメナスの神経を逆撫でするわけにもいかない為、素直に喋る事にするのだった。
「もちろん話させて頂きますが、この『次元の狭間』の空間だけは元に戻して頂けないでしょうか? 私のような『魔』の概念に乏しい者では、口を開くのも億劫に感じてしまい、上手く説明が出来るとは――」
そこでメナスは不機嫌そうに眉をひそめるのだった。
レルピルもその一瞬のメナスの変化を見逃さず、言葉を続けようとしていた口を噤むのであった。
「あのさぁ、僕のこの『空間』で普通に今まで喋れていたのに『魔』の概念に乏しいはないでしょ? それって僕のこの『空間』は『魔』の概念に乏しい者達でも問題なく喋れるって暗に言いたいわけ?」
ここでレルピルは演技ではなく、本当に驚いた様子でレルピルを見るのだった。
(こ、こいつは一体どういう思考回路をしているんだ? 自尊心が高すぎるからこういう言葉が出て来るのか? 分からねぇ……。大賢者と言われていた俺でもコイツの事はよく分からんな。こんなに会話をするだけで面倒だと思える奴に会ったのは、この世界で初めてだ……)
ルーヴァンスを含めた多くの者達が感じている『メナス』の面倒さを、ようやく理解するに至るレルピルなのだった。
「い、いえ、最初に申し上げた通り、私の世界では『次元の狭間』を生み出せるような『結界』使いは居ませんでしたから、それだけでもメナス様が素晴らしい強さをお持ちだと感服しております。そ、それに、普通に喋れていたように思って頂けていたようですが、実際は先程から意識を保つ事が困難になりつつあったので、何とか止めて頂けないかと思っての必死の発言だったのでございます。い、今でも気を抜くと意識を失いそうなのです」
「ふーん……それが本当なら、どうやら君はギリギリ『魔神級』の中位ってところなのかな? まぁ、中には下位クラスでも耐魔力が高ければ僕の『結界』でも難なく意識を保っていられるけど、君の場合は余裕すら感じられていたんだけどなぁ……。本当に気を抜いたら意識を失いそうなのかい?」
「は、はい! メナス様にお話をさせて頂こうと懸命に耐えておりますが、このままでは……」
「そっかぁ、それじゃ仕方ないね。はぁ……全く、こんな『魔』の概念に乏しい雑魚を相手にするのは本当に大変だよ。何で僕がこんな雑魚の為に配慮しないといけないんだよ」
ぶつぶつと身勝手な文句を言い始めるメナスに、レルピルも表面上は申し訳なさそうな顔を浮かべていたが、内心では血が沸騰する程に苛立ちを募らせていた。
(こ、この大賢者にして、世界を支配していた俺を雑魚だと……!? 何なんだこの鬱陶しい魔族は!? い、いや、落ち着け……。ここでコイツに手を出したら、今まで素直に従ってきた意味が全て無に帰す。ここは堪えるんだ……!)
もちろんレルピルがこの『次元の狭間』で意識を失いそうになっているというのは嘘であり、実際は普段の力の七割くらいまでなら問題なく出せる程の余裕さ加減は保っている。
しかしそれでも何かあった時に、メナスを相手にするのに七割の力では流石に不利だと感じた彼は、いつでもこのメナスを相手に制圧が行えるように、普段通りの力が出せる状態にしたかったのである。
ただ、その代償にレルピルは、相当のストレスを抱かされることになるのであった。
やがて無機質な空間から、元のルードリヒ王国の城の一部屋に戻り始めていく。
「はい、これでもういいでしょ? さっさと喋ってくれる?」
「ご、ご配慮、ありがとうございます……! そ、それでは、この世界に来る事になった経緯から話をさせて頂きます」
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