2484.レルピルの思案
大魔王ソフィとエイルは対談を終えた後、前回の時のように宴を始めるのであった。
今回は公式の場での謁見という形ではなく、あくまでエイルが友人としてソフィを招いて対談をするという形であった為、宴といっても他に王族や貴族が居るという事もなく、本当に国王としてではなく、エイル個人としてソフィと酒を楽しく酌み交わしているのだった。
すでに宴を始めてからそれなりに時間が経ち、話はソフィがラルグ魔国王の座を退いた後のミールガルド大陸の話になっていた。
「そう言えばソフィ殿、ニビシアの町を覚えておるか?」
「ニビシア? ああ……確かミールガルド大陸の魔法使い達が大勢居る町だったか?」
「うむ。そして前回のギルド対抗戦で、ソフィ殿が決勝トーナメントで戦った冒険者ギルドがあるところだ」
ソフィはその言葉で、試合で戦えなくなったニーアの命を奪おうとした『ルビア』を思い出すのだった。
「ああ……うむ。我もあまり良い記憶はないが、そのニビシアの町がどうかしたのか?」
「実はな、最近少しキナ臭い話を耳にしたのだ。その話ではニビシアの町のギルド長が数多くの暗殺や殺しを生業とする輩を数多く集めて、試合で戦った……いや、ルビアという男の命を奪ったと噂のソフィ殿を狙っているという話だ」
「殺し屋……? いや、しかし何故今更になってニビシアの冒険者ギルド長が?」
「あくまで噂に過ぎぬ話だが、実際に最近はあの町も治安が悪くなっているらしくてな、どうにも魔法使いの町という印象が薄れる程に良からぬ輩が大勢町に入り込んでいるようだ」
「……ふむ」
(そう言えば『おやじ』を狙ってミッシェルの奴も暗殺者を多く雇っていたようだが、それ程までにこの世界では、暗殺者や殺し屋とやらが多いのだろうか? 冒険者ギルドというものがあるくらいなのだから、もしかすると裏ではそういった殺しを主とするギルドみたいなものも存在しているのかもしれぬな……)
ソフィは自分が狙われているという話をされたというのに、そちらには興味を示さずに全く関係ない事を考え始めるのだった。
「この世界……あ、いや、この大陸でもそういった連中が存在してるんだな。辻斬り連中がどれ程のモンか、一度手合わせ願いたいもんだぜ!」
どうやらヒノエはノックスの世界でそういう輩とも戦った経験があるようで、この世界の暗殺者や殺し屋を辻斬りと呼んで戦ってみたいと口にするのであった。
「ヒノエ殿はソフィ殿の婚約者と聞いたが、いやはや、これは勇ましいな……」
「クックック、こう見えてもヒノエ殿も六阿狐も相当の強さなのだぞ? それが証拠に我の護衛も兼任してくれておるのだ」
「ほう……!」
エイルはヒノエと六阿狐を見ながら、感心するような表情を浮かべるのだった。
「先程、冒険者ギルドに所属したと言っていたが、御二方も対抗戦が行われた暁には、参加をするつもりなのだろうか?」
「ああ、そりゃもちろん! です……」
「は、はい!」
ヒノエは大きい声で返事をしようとしたが、途中で話をしている相手が一国の王だという事を思い出して、慌てて言葉を付け加えるのだった。
「ほほう……! これは楽しみが増えたな。是非『対抗戦』は実現してもらいたいものだな」
そう言って再び豪快に笑い始めるエイル国王であった。
「安心するがよい。我が責任を以て会談の場を設けるのでな。その時にしっかりとルール等も決めると良いだろう」
ソフィがそう言うと、上機嫌な様子でエイルも頷くのだった。
(大陸間ギルド対抗戦……か。開催が決まれば、更に大魔王ソフィ達が大魔王フルーフの元に向かうのが遠のきかねないな。しかし逆に言えばそちらに意識を向けてくれている内は、彼らが大魔王フルーフの元に向かう事もないという事か。ふむ、一度ルーヴァンスにこの事を伝えとくか)
ルードリヒ王国の宰相であるレルピルは、表面上はにこにこと笑顔を取り繕っているが、裏では大魔王レキと繋がっている『ルーヴァンス』に、新たに報告する事が出来たと考え始めるのであった。
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