2482.上機嫌になるエイル国王
この国の宰相レルピルが密に『ルーヴァンス』と念話を行っている頃、ソフィは玉座の間でエイルとの話し合いは進み、今後の予定についての話にまで発展しているのだった。
「ひとまず話は分かった。派遣する冒険者達の件が何処かで話を止められているというのであれば、我が直接レルバノンとお主の会談の場を用意するとしよう。このまま下手に使者を出し続けていても、お主らの交渉に介入する輩共が存在しているというのであれば、今後も思いもよらぬ妨害が続いて話そのものが頓挫してしまいかねぬからな」
「……それはとてもありがたい話だが、俄かには信じ難い話であるな。確かにヴェルマー大陸の国々に比べれば、国力で遥かに劣ってはいる我が国だが、それでもミールガルド大陸で生活を行う者であれば、この余の国に逆らえば、どうなるかは火を見るよりも明らかの筈じゃ。もしソフィ殿の言う通りに、余が派遣を予定していた冒険者達になりすました魔族が居たというのであれば、やはりヴェルマー大陸の何処かの国が関与しておると言う事じゃろうか?」
「それはまだ詳しく調べて見なければ分からぬ事だが、まず間違いなく『ラルグ』『レイズ』『トウジン』の三大魔国に限っては妨害工作とは無関係だ。直接我もレルバノンやシチョウ達とも話をしたのでな。あやつらが我に対して嘘を言う事は有り得ぬ」
そもそもソフィには、煌聖の教団の残党達や、レキの組織の事をすでにリカルド達を通して知っている為、あくまでこのソフィの説明は、エイルを信じさせるためのモノである。
「あ、ああ……。最初から三大魔国に関しては余も疑ってはおらぬ。当然ソフィ殿が断言する以上、更に間違いない事だと理解するが、しかしだからこそ謎は深まるばかりだ」
今更『煌聖の教団』の残党の事や、大魔王レキ達の話をしたところで、そもそも前段階の『別世界』の話から始めなくてはならなくなる為に、今は申し訳ないと思いながらも、疑問符を浮かべているエイルに対して黙っておく事にするソフィであった。
「とりあえず、お主がラルグやレイズを無視する形でトウジンの冒険者ギルドに直接話を持っていったわけではないという事は理解した。この事は我が責任をもってレルバノン達に伝えておくとしよう。そして今後の事についても会談が行える場を設けるという形を作る事も約束するが、それを踏まえてこの場でお主に訊いておきたいのだが、冒険者ギルドの大陸間における対抗戦を行うつもりはあるのだろうか?」
「うむ。もちろんだ、ソフィ殿。これまではとてもヴェルマー大陸とは話が出来る状態ではなかったが、今はそうではなくなっておる。これまではミールガルド大陸でのみ行われていた対抗戦だが、それがヴェルマー大陸のギルドもとなれば、ますます盛り上がりが増す事になる。なによりそうなれば、冒険者ギルドだけではなく、商人ギルドなどの活躍も見込めるようになるだろう。お祭りには必要不可欠なものが多く、少し考えるだけでも莫大な利益が予想出来る。武力の面だけで見れば、まだまだヴェルマーのギルドにはとても及ぶまいが、今後も継続してやり取りが行われるようになれば、こちらの大陸の冒険者ギルドにしても今後を見据えて良い刺激になるのは間違いない」
そう話すエイルの顔を見ながらソフィは、これまでとは明らかにエイルの考え方が変わっており、口だけではなく、本当に民の自主性を考えて動き始めていると感じるのであった。
ソフィはケビン王国の者達と直接のやり取りを行っていない為、向こうの王国がどこまでレルバノン達と話し合いを進めているかは分からないが、決してルードリヒ王国も外交の面で劣っていないだろうと思えた瞬間であった。
「なるほど、確かにお主の考え方は素晴らしいな。今はまだヴェルマー大陸の冒険者ギルドに所属する冒険者達に勝つことは困難だろうが、明確に力の差というものを知り、その上で今後の目標を決めさせる事も育成面では大事な事と言える。何より商売面で商人ギルドを活用させるというのも良い判断だ。お主は前回会った時と比べてかなり変わったな」
「そ、ソフィ殿……!」
これが他の者が口にするのであれば『何を偉そうに』と思うエイルだが、前回話を行った時に感銘を受けるに至ったソフィに言われては、彼も年甲斐もなく気持ちが昂るというものであった。
「そ、そうであろう!? ケビン王国などは、未だに軍隊の再編を行えばヴェルマー大陸にも勝てる等と、哀れにも現実が見えてはおらぬ貴族共が大勢居るくらいだ。そういう馬鹿共にもしっかりと現実を分からせるという意味でも、こういった催しを行う事は大賛成だ! ケビン王国共とは目論みも違うだろうが、あらゆる面で互いの歩み寄りが国としての成長を促す事に繋がると余は思っておる! ははははっ! やはりソフィ殿と話し合う時間は素晴らしく有意義なものだな。ソフィ殿の時間が許すなら、毎日でも話をしていたいと思える程だ」
まさにご満悦といった様子で大笑いを始めるエイルにソフィだけではなく、ヒノエや六阿狐も苦笑いを浮かべるのだった。
「レルピルっ! 宴だ、宴の準備をせよっ!」
そして上機嫌のエイル国王は、そのまま前回の訪問の時のように、ソフィ達を饗応しようと宰相の名を呼ぶのであった。
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