2480.エイル国王との噛み合わない会話
「さて。それではエイルよ、そろそろ本題に入らせてもらっても良いかな?」
ソフィはエイルとの再会の挨拶や、ヒノエや六阿狐達の紹介を終えた後に少し雑談などを交えたが、当然このまま謁見を終わりにするわけには行かない為、ここに来た理由であるトウジン魔国の冒険者派遣の話題を尋ねるのだった。
「……ソフィ殿。余は前回お主に言われた事を真剣に考えたのだがな」
ソフィは先程までの雑談とは異なり、エイルの話を聞く為に余計な相槌を打たずに耳を傾け始める。
「余はこれまで余自身がこの国を強くしかなくてはならぬのだと考えていた。その為に国王の座に就いたのだと自信を漲らせてな。だが前回ソフィ殿に『本当の統治とは、国の発展とは民を無くして有るべくも無し』と告げられた時、如何に時代に沿った統治を行わなくてはならぬかを知った。余がやろうとしていた事は時代に沿うやり方ではなく、時代に逆行するようなやり方に過ぎなかった。この国やケビン王国だけではなく、ヴェルマー大陸の各国も同様の思想を持ち始めて、それぞれ民が自主的に冒険者ギルドや商人ギルドを用いて活路を見出し始めている。その生き方を妨げるのではなく、余は国王としてこのルードリヒという国を治める者として、余のやるべき事は民達のやる事を尊重して成功させるために力を尽くすべきなのだと……!」
ソフィはエイルが拳を握りながら力説している姿を見て、確かにエイルは王としての在り方の考え方が明確に変わっている事を理解するのだった。
確かにこのエイルの言い分では、民の野郎としている事に寄り添う形で今後のこの国の冒険者ギルドの一助となる行いの為に、トウジン魔国にこの国の最高戦力である勲章ランクAの冒険者達を送り出したと言えるだろう。
ただ、実際に派遣されたのはこの国の人間ではなく、レキ達の組織の魔族達三名。そしてその派遣先がヴェルマー大陸の最主要国のラルグ・レイズではなく、あくまで第三国と言えるトウジンを選んだ事は、ソフィやレルバノン達が求める回答になってはいない。
「民のやるべき事を尊重し、冒険者ギルドに力を注ごうと考えたお主には確かに良き変化が見られたとは思うが、では何故ヴェルマー大陸で最初に設立された最大手のレイズ魔国の冒険者ギルドではなく、トウジン魔国を選んだのだ? それも最初に話を持っていくべき筈のラルグ魔国を無視する形で――」
「少し待って欲しい。ソフィ殿、余はラルグ魔国を無視した覚えはないぞ? 確かにトウジン魔国に余の国の最高ランクの冒険者を派遣するというのは間違っておらぬが、それはいずれルードリヒ王国の冒険者ギルドの発展の為に繋がるように、闘技場に参加出来るように便宜を図って欲しいという目的の為であって、それを実現させるために、余は再三に渡ってラルグ魔国とレイズ魔国に使者と書簡を送って伝えていた筈だ。だが、そちらからの返答は一切なく、それどころかこちらの意志をないがしろにするように、連日に渡ってケビン王国側の貴族と話を進めておるのではないか。むしろこちらはヴェルマー大陸側の返事をずっと待っている立場なのだぞ?」
この時点で明らかにレルバノン達から聞いた話と食い違っているが、弁論を行うエイルは確かに自分の意思でソフィに話をしており、一切誰かに操られて話をしているようには見えなかった。
「……先日、お主がトウジンに派遣したという勲章ランクAの冒険者と会う機会があったが、そやつは人間ではなく魔族だった。エイルよ、先程お主はかつての我の言葉に従って『民の自主性』を重んじると口にしたが、そこにこの国の民ではなく、別の世界の魔族達を用いるのは辻褄が合っていないのではないか?」
ソフィは遂に話の核心を突くように、リースの街でミッシェルの襲撃を謀った『メナス』の事を口に出すのだった。
――しかし、ソフィの言葉を聞いたエイルは、ソフィが想像だにしない返答を口にしてくるのであった。
「む……? 余が派遣した者達の事を『魔族』と言ったのだろうか? ソフィ殿、余が闘技場があるトウジンのギルドに派遣を願った者達は、間違いなく全員が『人間』の筈であるぞ?」
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