2479.再会するルードリヒ国王
城の廊下でソフィ達を待っていた様子の国の宰相だというレルピルに案内されながら、ソフィはその背の高いレルピルの後ろ姿を眺めながら思案を巡らせていた。
(このレルピルという男はこの国の宰相だというが、少し前に訪れた時は顔を見せた事はなかった。単に公の場に姿を見せなかっただけなのかもしれぬが、それにしてもやはり人間でこの若さの者が、一国の宰相を務めているという事実がまだ信じられぬ……。レキの関係者の『魔族』の線もあるかと考えたが、こうして何度探ってみてもやはり人間にしか見えぬ。リカルド達の話ではレキの組織に居る者は世界そのものは異なるが、全員が『魔族』で間違いないと口にしていた。という事はこの男はレキ達の組織とは関係がないという事だろうか……?)
確かに魔族が人間に化けているという可能性も無いわけではないが、その際は必ず『魔』の概念技法が使われる筈であり、概念技法を使う為には少なからず『魔力』が影響する。
しかしソフィ達を欺く為に『魔』の概念技法を使っている素振りを全く見せず、またソフィ程の大魔王がこうして何度も探ってみても『魔力』を用いているようには全く見えない。
そちらを疑うより、レルピルが人間だと信じたほうがしっくり来るほどであった。
(本当に全くレキ達とは関係がなく、偶然にもこの若さで宰相に抜擢されてここに居るという事であろうか? ではエイルがレキ達の一派に『魔瞳』等で操られているのではなく、この新たな宰相となったレルピルの提案でトウジン魔国に冒険者を派遣するように促したとは考えられぬだろうか? いや、エイルの様子を見ぬ内から中途半端に先入観で物事を捉えるのは良くない事だな。まずはエイルに会って直接その辺の事も尋ねるとしよう)
ソフィはミッシェルやミューテリアの一件から、何もかもレキが関連しているのではないかと勘ぐったが、何とか結論を出す前に思い留まる事が出来たのだった。
前回エイルの元に通された部屋と同じ場所に辿り着くと、レルピルがソフィ達の方を振り返り口を開くのであった。
「お待たせしました、国王様はこの部屋におわします」
「うむ、案内感謝するぞ。レルピル殿」
ソフィが礼を口にすると、恭しく頭を下げて中に居る国王のエイルに声を掛け始める。
直ぐにエイルから入るように促す言葉が掛けられると、レルピルは一歩引いてソフィ達の為に道を開け始めるのだった。
あくまで今回の謁見は国賓扱いのものではなく、エイルが提示した『友人との面会』という事をレルピルも心得ている様子であり、彼は部屋の中にまでは入るつもりはないようだ。
本来であれば、如何にソフィを信頼していようが、一国の王に客人達だけで会わせる危険を冒す事はしない筈だが、レルピルは全く疑う素振りを見せず、堂々とソフィ達に中に入るように促して見せたのだった。
「む……。本当に我達だけで入って良いのだろうか?」
「? ええ、もちろん構いませんよ。前回ここにお越しになられた時は、何か異なりましたか?」
レルピルの言葉にソフィはどうだったかなと考えを巡らせたが、何かを思い出す前にレルピルが再度口を開いた。
「前回はどうだったかは存じませんが、今回このような面会を希望したのはエイル国王です。我々はソフィ様がたに全幅の信頼を置いておりますので。どうぞ遠慮なく、このままお入り下さいませ」
この国の宰相にそう言われてはソフィも何も異論はなく、静かに頷いた後にエイルの居る玉座の間の扉を開けるソフィであった。
…………
玉座の間の扉を開くと、部屋の中央に前回と全く変わらぬ姿のエイルが玉座に座っていた。
そしてソフィの姿を見ると直ぐにエイルは立ち上がり、嬉しそうな表情を浮かべながらソフィを出迎えてくれるのだった。
「ソフィ殿、久しぶりだな……! ずっと会いたかったのだぞ!」
「うむ。エイルよ、本当に久しぶりだな」
満面の笑みを浮かべながらそう告げるエイルに、ソフィも直ぐにエイルに近づき共に握手を交わす。
そしてエイルはソフィの手を離すと、後ろに控えて立つ『ヒノエ』と『六阿狐』に視線を送るのだった。
「ソフィ殿、それで彼女達は……?」
「我の婚約者である『ヒノエ』と、こちらは大事な友人から預かった客人にして、我の護衛を務めてくれておる『六阿狐』だ」
最近はヒノエ殿と呼ぶ事が多かったソフィだが、しっかりと婚約者であるヒノエを呼び捨てにしながら、ルードリヒの国王であるエイルに紹介をするのだった。
ヒノエはそのソフィの気持ちに一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、直ぐにその表情を戻して口を開く。
「お初にお目にかかります、エイル国王。私はソフィの婚約者の『ヒノエ』と申します」
「……お初にお目にかかります。私はソフィ殿の護衛を務めさせて頂いております、六阿狐と申します!」
先程まで少し緊張気味であった六阿狐も、ヒノエが先に堂々と挨拶を行った事で冷静さを取り戻したようで、自己紹介を行う時にはしっかりと普段通りの声色に戻すのだった。
「お、おお……! ヒノエ殿に六阿狐殿か。余はこの国の王のエイルじゃ。よろしく頼む」
そう言って二人とも握手を交わすと、再びエイルはソフィに視線を向けて口を開いた。
「いやはや、前回ユファ殿を見た時にも驚いたものだが、ソフィ殿の周りには本当に美人揃いで羨ましい限りだな」
そう口にするエイルにソフィも無言で笑みを向けたが、その視線だけはしっかりと、エイルが正常なのかどうかを探り始めていたのだった。
(ふむ……。まだ何とも言えぬが、この様子を見る限りでは魔瞳などで操られておるようには見えぬな)
単に『金色の目』で操られている場合であるのならば、ソフィであればもう少し違和感がある事を感じられるのだが、自然にユファの事を口にしているところからも、エイルは誰かに洗脳されている様子には見えなかった。
(やはり、直に訊き出して見ぬ事には分からぬか……)
こうしてソフィは仕方なく、当初の予定通りにエイルから会話で訊き出す事にするのであった。
……
……
……
『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!




