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肉体の無い主人公が神様から肉体を貰う為にがんばります!(旧:肉体の無い英雄譚)  作者: 紅 時雨
第2章 AGO1500年前~勇者編~
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第48話 明かされる真実(グレイラットのみ)

これが俺の全力だ!


なん……だと!? ←今ここ

グレイラット・ヒースクリフ視点


「っ!?」


 目が覚めると自分が住まわせてもらっている部屋の天井が見えた。


「知ってる天井だ…」


いつぞや隆一が溢した台詞とはまた違う内容でグレイラットは己の状況を表した。


「生きてる?」


 続く自問は、自分がまだ生きてここにいる事の疑問であり確認。


 覚えているのは屋敷の主であるリューイチが現れた所まで。


 そして見つめられた直後に意識を飛ばした筈だ。


 あの部屋の存在は屋敷の人にも極秘だったに違いない。


「目が覚めたか?」


 思考に沈もうとする僕の耳元にあの時と同じ声が届く。


 急速に高なる胸の鼓動と共に、驚きが加わり「ひゃい!」と上ずった声が飛び出した。


 視線を横にずらせば、逆にその言葉に驚いた雰囲気のリューイチがこちらを見ている。


 そしてその後ろには新たに貴族になったアリサさんとアリシアさんが付き従っている。


「まぁ、件もろもろ言いたい事や聞きたい事があるかと思うが、これは国防にもかかわる機密事項なので軽々しく口外しない事。そしてそれを約束できるなら契約の上でお前の疑問に答えてやろう」


 グレイラットは目の前のリューイチの言葉を脳内で反芻する。


 これは試されているのだろうか?


 一国民として知るべきではない秘密に触れられる機会だけど、得られる価値が未知数であり、更にはその対価となる契約の内容もわからない。


 しかし、とグレイラットは思う。


 それは父ノイマンの考え方。


『一時の大儲けよりも恒久的な微得が続くほうがいい。そして常に減り続けるよりも一気に消えた方が開き直れる。』


「契約の内容は?」


「情報の漏えい禁止。これは地図に起こしたりメモしたりすることも含む。話すなんてもってのほかだ。そしてこれから最低4年の修業期間の承諾。これはすでにノイマンにも了承を貰っている。この二つさえ了承すれば契約に移りお前の疑問に答えてやる」


 もしかしたら隆一の強さの秘密に迫る事ができるのかもしれない。


「お願いします」


 グレイラットの迷いのない言葉に、隆一の背後に控えていたアリサとアリシアは苦笑。


 隆一は二人の気持ちを理解しつつもグレイラットの了承の意を汲み取り契約へと移る。


「あれ?契約関係の魔術は専門の契約書に加えて特殊な術式を必要とする筈では?」


 商人であるノイマンの元で常に父の仕事を見てきたのだ。契約関係の内容はすでにノイマン自身から叩きこまれている。


 くさっても商家の跡取りなのだ。


「普通は専門の魔術師を雇って行うのだろうが、俺を誰だと思ってる?仮にも宮廷魔術師筆頭様だぞ。世間でなに言われようが魔術の腕において現段階で俺の右に出る奴はいないと自負している」


 後に創造主やもう一人の女神が現れない限りはが続くのだが、今は言っても理解できないので言わないでおく。


 アリサとアリシアの両名にはすでにこの世界における俺の役割を伝えているので俺の強気な発言にも笑顔なものだ。


「お前の魔導書を生み出したのも俺だぞ。簡単な契約魔法ぐらいは即席でできるものだ」


 深い知識と経験が必要な魔方陣の作成を片手間に作成しつつ、所々でグレイラットに対して注釈を交えながらものの数分で契約の魔方陣が完成する。


「ちなみに魔術と魔法の違いはわかるか?」


 隆一から投げかけられた質問に、以前教えてもらった事をそのまま口に出す。


「魔術は基本的に魔術書を用いて行う術式の事を言い、魔法は脳内で魔術の術式を展開して発動させるもの。魔術師の数が多いのはそちらの方式が手早く簡単に術式の展開ができるから」


 グレイラットの持っている魔導書ではなく市販されている魔道書と呼ばれる一般に使用される魔法の術式を記載した本を使用して魔法を行使するモノを一般的に『魔術師』と呼ぶ。


 それに対し、全てを脳内で処理し即座に魔方陣を展開させて術式を行使することが可能な者を『魔法使い』もしくは『魔導師』と呼ぶ。


 ちなみに魔術『士』と魔術『師』のように細分化もする事ができ、『魔道士』と『魔導師』のように細分化もできる。


 市井では一括りに呼ばれる事もあるが、古い考え方を持つ者はその呼び方にこだわりがあるようだ。


 要は師弟関係の有り無しのようなものなのだろうが、正直俺個人としてはあまり気にした事がない。


 魔法を瞬時に行使できるという意味では魔法使いであり、オリジナルの魔導書を作り出せる上にグレイラットの師でもあるので魔導師としても呼ぶ事ができる。


 呼びたい者は好きに呼べ。宮廷魔術師で王城では通っているためその名で呼ばれるが、王城内に弟子と呼べるものはいないのが現状だ。


「まぁ合格だな。つまりは俺は今言った括りで言うなら『魔法使い』に該当する。そして魔力量は赤縁。それが意味するのはそんじょそこらの魔術師なんて呼ぶよりも俺がやった方が早いという事だ」


 言ってる間にも隆一の術式はその効力を発揮してグレイラットとの間に契約が執行された。


「いつの間に?」


 手の甲に交わされた紋章は隆一が宮廷魔術師になった時に適当にあしらえた剣と竜が交差された捻りのない紋章だが、隆一の経歴を鑑みれば理にかなった紋章にも見える。


 手の甲に淡く輝いていた紋章が次第に薄れて消えていき、完全に消えた所で隆一が契約は成功した事を伝える。


「これでお前が聞きたい事を応えてやれるがどうする?何が聞きたい?」


 グレイラットは考える。


 いざ聞きたい事となると次々思い浮かんでは消えていく。


 とりあえずまずはじめに聞きたい事は


「なぜ先ほどからお二人に抱えられて話しているのですか?」


 起きてから今まで隆一は後ろに着き従えていた二人に両脇から抱えられた状態で話していたのだ。


「飯時まで二人の説教を喰らっててな。未だに足の痺れが抜けないだけだ」


 隆一の言葉に背後の二人もバツが悪そうに視線を逸らしているが、聞きたい事を考える猶予ができた。


 それからの質問は他愛のない事から屋敷の通路の事、そして隆一の仮面についても言及してみた。


 大抵の内容は話してもらえたが、仮面の事になるとわずかに言葉を濁されてしまった。


「プライベートな話なのでな。知りたいなら教えるが荒唐無稽な与太話の類を話すかもしれないぞ?」


グレイラットはそれでも構わないと告げると、隆一はため息をついて仮面を外す。


「っ?!透けてる…んですか?」


 詰まりながらも口にした言葉に、目の前の隆一は頷きを持って返す。


「まさか湖底遺跡の時に何かしらの呪いとかを受けて?」


 グレイラットは呪いの原因を考えて口にしたが、隆一は笑いながらそれは違うと訂正する。


「これはこの世界に来る前からこうだ。正確には呪いと言うよりも因果かね?」


 透けている顔を隠すためのフードと仮面。そして恐らく全身を包んでいるローブの下も透けているのだろう。


「この世界に来る前?リューイチ様はエインズワーグとは別の国からやってきたのですか?」


 グレイラットの言葉は別の世界を国と間違えて受け取ったのだろう。


「正確に別の世界。大陸でも国でもない。グレイラット。お前の、お前達の住んでいるこの世界とは別の星、別の時代、別の世界からファルシナによって導かれやってきた人間。それが龍ヶ崎 隆一という人物のすべてだ」


 隆一の言葉にグレイラットは沈黙する。


 思考が追い付いていないのか。それとも壮大すぎて話しについてこれないのか?


 アリサとアリシアも以前話した内容のはずだがやはり呑みこめていないのだろう。


「これを与太話として聞き流すか覚えておくかはお前の好きにしろ。俺はこの世界を救ってほしいと言われてファルシナの力と俺の住んでいた世界の神の力を受け取りこの世界にやってきた。創造主と言う女神の生みの親に会うためにだ。それがいつになるのかもどうなるのかもわからない。だから俺は地盤を固めてそう遠くないうちにいなくなるだろう。それでもこの国が、世界が大丈夫なように色々と種を撒き芽吹かせる。お前もその一つだと思えばいい」


 そろそろ寝るか。夜も遅いしと隆一は回復したのか二人の手をどけて立ちあがると二人を伴い部屋を出る。


「グレイラット。お前は深く考える必要はない。これは俺の問題でお前は話を聞いただけだ。お前はただ自分ができる事をなせ」


 部屋を去る間際にそう言い残して静かに扉が閉まる。


「話についていけない……」


 言っている意味のほとんどが理解できなかった。


「深く考えたら負けなんだろうな」


 グレイラットは静かに呟いて再度布団をかけ直す。


 とにかく明日からまた修行が再開されるのはわかっている。


 自分にできる事を全力で成す事。


 隆一から言われた事を胸にグレイラットは眼をつぶり思考を切り替えるのであった。



龍ヶ崎 隆一視点


「ご主人様。先ほどの話はグレイラット様にお話ししても良い内容だったのですか?」


 俺の放した内容を知っていたアリサからそんな言葉を投げかけられた。


「あの話を真剣に受け止めるならあいつはどう思うだろうな?」


 意地が悪そうな声を出すとアリシアが軽く耳を引っ張りながら苦言を呈する。


「あまり言いたくはありませんが趣味が悪いです。真実味を持たせるために素顔まで晒すのですから」


 アリシアの言葉に悪かったと謝りながら自分の部屋へと到着する。


 二人はさも当然のように隆一と共に部屋へと入ると扉に鍵をかけて服を脱ぎだした隆一から脱いだ衣類を受け取って脱衣籠へと畳んで入れていく。


 最後に寝巻を着た隆一と共にベッドに腰掛けると二人と共にベッドへ倒れ込んだ。


「やはりお抱きにはなられないのですね?」


 アリサが静かに、しかし悲しそうに呟いた。


「本当なら抱きたいよ?俺も男だもん」


「ならばなぜ?」


 アリシアの言葉に少し詰まりながらも本音を口にする。


「本来ならあの時、俺はあの場にはいなかった」


 後で草薙に聞いた話だが、俺があの時銀龍皇と出逢わなければ、アリサとアリシアとは後々ダンケ経由で向かった魔術国家ステインの奴隷市場で出逢うはずだった。


 しかし、銀龍皇との戦闘により黒が巣を作った事により、その道を通っていた商人が欲を出した結果彼女達は蟻の餌となるところだったのだ。


 俺の行動が少しずつ歴史を変えているのだと思うと、やはり怖くなる時がある。


 だからなのだろうか。彼女達と交わることでまた世界が歪み、変わるのではないかと危惧している事に。


「なんとなくわかってました。あの時奇跡的にご主人様がいらしたから助かったものの、なぜあそこに大量に銀龍皇の龍鱗が落ちていたのか?」


 ご主人様が争われたのですね?と二人は隆一を見てそう告げる。


「そうだ……」


 小さく隆一は呟く。


「俺が持つ力は未来で手に入れたファルシナの力と俺の世界の武神の力が内包されている。創造主を探すために世界を渡るために手を加えられた己の本当の体はもう一柱の女神の手によって破壊され、今の俺の体は魂とも幽霊ともつかないような歪な存在に女神と武神の力を内包した状態で保っている」


だからこわい。


「もしも君達と交わり、もしも子が生まれ、もしも俺の力が受け継がれていたら?俺の役割はそこで終わり、約束が果たせないのではないかと…」


 仮にこの時代で創造主と出逢い龍族の連れ去りを止めさせ、世界が存続するとしても、それは遥か先の時代の出来事だ。


 その時代まで生きられるように調整された己の生身の肉体が消えた過去の俺の末路は手記に記載されていた。


 今回だけ幾百にも上る歴史のフローチャートから外れているのだとして、今回もまた次代の俺に引き継げるのかもわからないのだ。


 ゆえに先の見えなくなったこの時間軸において不確定の要素をこれ以上増やしたくないというのが実情でもある。


 武御雷はそこまで深く考えなくても良いと言ってくれているが、さすがに俺の人生だからな。これ以上抉れるのは喜ばしくない。


 隆一から明かされるあの時の真実に、しかし二人は隆一に両脇から抱きしめる形で答とする。


「あの時の出来事が仮にご主人様が発端だったとしても、そこに至るまでの原因となったのは私たちの家族を陥れた商人達の仕業です」


「それにあそこで逢わなければもっと辱めを受けた後の惨めな姿でご主人様と出逢わなければならないのですから、そう考えればあの場で出逢えた事には感謝しなければなりません」


 感謝の中にやさしさを感じられ、当時の自由すぎた行動が生み出した結果に罪悪感を覚えつつも受け入れてくれた嬉しさを感じ、隆一は二人を抱きしめると静かに感謝の言葉を口にする。


「他の奴らにも言えることだけど、これからも俺を助けてくれ。必ずとは確約できないが俺は今度こそこの世界を救って見せる。過去の俺とファルシナの夢を叶えるために、それに好きな人には幸せになってもらいたいからな」


 隆一の言葉に二人は隆一を見つめ、仮面越しで見えないが恐らくは真っ赤になっているだろう顔を想像して吹き出してしまう。


「「はい。幸せにしてください」」


 二人の言葉を皮切りに三人は部屋の明かりを消して一夜を過ごすのであった。









年末です大みそかです。


ガキ使を見る為に早めに投稿します。不定期なのでそれでも遅いのですが(泣)


今年一年お疲れさまでした。

こんな私ですが、来年もよろしくお願いします。

今回ももうひと作品も更新上げていますのでそちらも見ていただけると幸いです。

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