第44話 6年後の勇者鍛えます!
湖底遺跡から6年後、歴史が動き出す! ←今ここ!
冒険者ギルドの地下に併設された訓練場。
幾多の新米冒険者が技術を磨くその空間はエインズワーグ下層区画のおよそ半分を占めるほど広大な敷地面積を誇っている。
元は古代遺跡の上に建国されていたからこその地下空間活用法なのだが、今その空間の一角には人だかりができている。
有名冒険者が指導をしているのかと言われたら是であり、誰かが挑戦しているのかと言われたらそれも是である。
目の前には身の丈と同じくらいのロングソードを構えた年の瀬6歳くらいの少年。相対するのは二十歳に届かないくらいの背格好、全身をローブで覆い隠し、仮装用の烏人の仮面を被った青年。
加えて言うならその青年は小ぶりのダガーを手に半身で相対している状態だ。
もちろん訓練用の刃引きをしている武器なので切られて血が出るわけではないが、その一撃が当たれば下手すれば骨が折れるぐらいのダメージは入る。
「やあぁっ!」
正眼から一足飛びで青年の間合いに入る少年が気合と共に剣を振りおろす。
シャリイィィン! と大きく音が鳴るが、それは金属同士がぶつけあった音ではなく青年のダガーによってロングソードの軌道が逸らされた際に出る金属の音だ。
青年は攻撃しない。
今回のルールは青年の防御を崩すのが目的の訓練だからだ。
少年は家で担当の護衛から教わった方法のすべてを持って青年と相対している。
護衛の人達からは神童と謳われ現に冒険者ギルドでからまれた際も上手くあしらう事ができた。
自分は特別な人間なんだと思い、外でも屋敷でも偉ぶった態度で使用人達に接してきた。
目の前の青年は父が懇意にしている冒険者だ。
父曰く僕の生まれた頃からの付き合いで顔見知りではあったが、そこまで強いと感じた事は無かった。
この訓練場の原因となった今日も、近くの町の子供を苛めていた時偶然通りかかったこの男に見つかったのが発端だ。
最初こそ黙るように口止めして小金の一つも握らせれば良いかと思えたが、何を思ったか僕の襟首を掴んで壁に叩きつけると苛めてた子供に回復魔術を行ったのだ。
父から凄腕の冒険者だと聞いていたが、魔道書も詠唱も無しで回復魔術を行使する姿にあっけにとられていたが、痛みで泣き出すと男は子供の服を浄化魔法で綺麗にすると帰るように促した。
子供はびくびくとこちらを見ていたがまるで逃げるように立ち去って行った。
それを見届けた後、男はこちらへ歩み寄り、再び襟首を掴んで歩きだす。
首が絞まるからと泣いても許してもらえず、結局父の構えている店まで引きずられてしまった。道中の町の人の目が集中してとても恥ずかしい。
店から出てきた父は、僕の姿を見てから男に言い寄ってきたが、男から話を聞くと僕の頭に拳を振りおろして男に謝罪を口にした。
そしてあろうことか矯正を目の前の男に依頼してきたのだ。
「甘やかしすぎたツケなんでしょうな。君にも世話になっているから申し訳がないんだが、受けてはくれないかね?」
男は二つ返事で頷くと、店から必要な生活用品を買って僕を連れて出て行った。
そして連れてこられたのが冒険者ギルドのこの場所だ。
男は言った。
「別にお前が弱い者苛めしようが一向に構わないが俺のいない所でやれ。そして殺す気概もないのに一方的に暴力を振るうのは俺は好かない。殺るならきちんと殺る気持ちで挑め。油断して殺されるのはいつだってそういう甘い考えの人間だ」
それだけ告げて男は足元から砂を巻き上げて僕の視界を塞ぐ。
眼と言わず口にも砂が入って思わず顔背ける僕の姿に周りの冒険者から呆れの声が飛ぶ。
現にその一瞬で身体の各所にダガーの冷たい感触が幾度も触れ、手に持っていたロングソードは遥か彼方へと弾き飛ばされていた。
「武器を取れ。俺から一撃とるまでは終わらないと思えよ」
男の名前は龍ケ崎 隆一。
少年の名前はグレイラット・ヒースクリフ。
湖底遺跡の大暴走終局後、更に六年の年月が経過したある日の出来事であった。
新章突入です!
プロローグですので文章は短めですいません!




