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第38話 赤縁の品格と大暴走処理中

赤縁3人が揃うとき、物語は始まる・・・


ヒャッハー! 獲物がいっぱいだー! ←今ここ


 湖底遺跡下層


 古城から侵入する非正規ルートを通る場合、まず初めに相手にしなければならないのは地中を進む土竜種だ。


 竜の名こそ冠しているが分類的には竜ではない。かつて湖底遺跡までの道を掘る際に飼育していた土木作業用の魔獣が逃げ出し、そして湖底遺跡の魔物との交配により凶暴化したものがルーツだとされている。


 元は土木用の気性の優しい魔獣だったのだが、性格の凶暴化により目につくものすべてに自慢の螺旋鼻を繰り出し突撃してくる。


 硬い岩盤を破壊する彼らの鼻は武器破壊や防具破壊を得意とするため、この地域では冒険者泣かせの二つ名を持つ魔獣である。


 しかし討伐は簡単で、彼らはまっすぐしか進めない。


 大きすぎる鼻が視界を塞ぎ、方向転換がしにくいためである。


 故に通り過ぎるのを待ってから横から切り捨てるのが最も効率のいい討伐法として確立されてきた。


「麻呂の前に立ちふさがるなでおじゃ!」


 小さな子ども達が各々武器を構えて土竜を牽制する中、ジャマイカスは魔道書を片手に髪を振り乱しながら珍妙な踊りを見せている。


 バックダンサーである少年少女も嫌々手伝っているような気がしないでもないが、踊りの合間に繰り出される風は鎌鼬となり、土竜種を切り刻んでいく。


 その威力は赤縁と呼ばれるだけの威力があり、見た目と行動さえ目をつぶればすごいと認めざるを得ないだろう。


「ほんとにあれさえなければ・・・・・・」


 後方からついてきていた冒険者が、目の前で子供の奴隷にセクハラしているジャマイカスを見て小さく呟くが、その言葉は誰にも聞こえなかった。


 同じ古城の別のルートから侵入している宮廷魔術師ルカルスは、複数の騎士甲冑を連れて敵を蹂躙していた。


 土竜種の攻撃で騎士甲冑の鎧の一部に穴があくが、その中は空洞で騎士も気にした風もなく、刺さっている土竜種の鼻を両手で掴み一息にへし折った。


 鋼鉄並みに硬い土竜種の鼻をへし折る姿を見て他の土竜種は一斉にその鎧へと群がり次々に鎧に突き刺さる。


 全身に土竜を生やした形になる騎士だが、ルカルスは気にした風もなく他の騎士甲冑を操り刺さっている土竜達を各個撃破していく。


 積み重なる死骸の山には興味を示さずに進んでいくルカルス。


 背後では土竜の死骸に群がりハイエナのように解体をはじめる冒険者連中がいるが、それらを一瞥して不愉快そうに鼻を鳴らして先へと進む。


「なぜ俺がこんな雑用を押し付けられるのだ・・・・・・」


 自身の作り出した魔力で出来た糸を無機物へとつなぎ、人形のように動かすルカルスが宮廷魔術師となる原因となったオリジナル魔術『パペット』


 複雑な工程を脳内で処理するために一度にルカルスでも5体程度が限界なのだが、1つのパーティーメンバー分の動きを自分好みに動かせるため個人的には使い勝手が良い魔術だと思っている。


 それに単調な命令『突撃』『防御体制』などの基本行動をあらかじめ仕込んでおけば、一度に魔力の限界であもある千体規模の人形を操ることができることから『一騎当千』という称号を国王からもらってもいた。


 そんな彼が今回ここに来た訳は、その国王からの命令でもあった。


 大事な論文提出時期にこんなところにいるわけにはいかないのだが、今回ともに派遣された赤縁の一人は国王が目をかけている冒険者らしい。


 ルカルス自身も元は別の国の出なため、冒険者ギルドで住民登録のため冒険者ギルドのカードを作ったのだが、その時自分の魔力量を知って以降、自分の実力を高めて認めてもらうことに邁進してきた。


 そんなルカルスよりもぽっと出の魔術師に国王が注目していることが何よりも許せないのだ。


 初めて見たとき、魔力の気配が以前王城で感じられた気配と似ていることを思い出した。


 近くの元は王族所有の屋敷を手に入れた赤縁の冒険者がいると一時期話題になった男だ。


 当時は気にも止めていなかったのだが、いつからか王城ではあの男の噂が独り歩きし始めた。


 曰く『大量の奴隷を侍らしている』


 曰く『竜の武力を盾に冒険者ギルドで好き放題している』


 曰く『次期の宮廷魔術師を国王と約束している』


 特に最後の噂だけは国王に直談判して確かめてしまったぐらいだ。


 国王からはそれはありえないと回答をもらったが、それ以外の噂については口を濁す形だった。


 そして国王が口を濁した理由も今回あの男を見て確信に変わった。


「紅色の飛竜を従え多くの奴隷を引き連れ何様のつもりなのだあの男は!」


 噂と違わぬ姿を目にしてルカルスは憤りを感じ、そして同時に両脇に控えていた二人の女性に目を奪われた。


「確かアリサとアリシアと言っていたな。かつての上級貴族にそんな名前の姉妹がいた記録があったはずだが・・・・・・もしや奴隷堕ちした姉妹を買ったということか?」


 没落した上級貴族の話は度々王城内でも話題に上がる。


 城仕えの貴族連中は明日は我が身と、没落した貴族をネタに世間話に興ずるのが習慣になっており、嫌々ながらもルカルス自身何度か話の議題にしたことがある。


 貴族はこれだから好きになれないと思いつつも、王城内で孤立しないためには必要な社交辞令として身につけた知恵でもあった。


 そんな情報も役には立つものだと皮肉りながら、ルカルスは綺麗な身なりで隆一の後ろに立っていた二人を思いながら遺跡の奥へと足を進めるのであった。


「なんとかして手に入れられないものか・・・・・・?」


 内に秘めた醜い欲望を知らず口にしながら・・・・・・。





「「っ!?」」


 知らず身の震えを感じ周囲を見回すアリサとアリシアの両名はそれぞえ別の場所で周囲を見回すが誰かに見られているような感覚はない。


 今回の遺跡へはアリシアが奴隷たちを引率する形で参加し、アリサは交代要員用の奴隷達を連れて野営地の強化に当たっている。


 姉妹からか、ほぼ同時に起きた悪寒からの周囲の警戒は離れていても二人同時だったのは誰も知らないことだ。


「ん? どうかしたのかアリシア?」


 前方では群れで襲いかかってくる魔獣に対し、大盾を構えた防御陣の隙間から槍で刺す戦法で小さくダメージを蓄積させていく奴隷達を見ながら、隆一は視線だけずらしてアリシアの様子を伺う。


 しばらく周囲を警戒していたアリシアだが、何も起こらないのを確認すると頭を振って意識を切り替え何でもありませんと指揮に戻る。


 実は悪寒に似た感覚を隆一も感じたのだが、今まで何度も貴族共から受けていた感覚に近く、直感でまた面倒なことが起こりそうだと考えていた。


 一方陸上では、悪寒の原因はわからないものの、体の奥に響くような嫌な感覚が続いたため、野営地の防衛力強化に一層精を出すアリサの姿があった。


 夕方になり辺りが薄暗くなった頃、隆一は再び凍りついた湖の中から五体満足の姿で現れた。


 その後ろにはわずかに傷つきながらも目立った外傷のない奴隷たちの姿と、隆一と同じく傷一つなく奴隷達を率いているアリシアの姿があった。


 氷は時間で溶けるので、今度はわざわざ壊さずに放置していく隆一一行だが、他の冒険者の中には朝の出来事を覚えている人間が多いのかうかつに近寄らなくなっている。


 朝の一件を知らない冒険者は嬉々として氷のトンネルに姿を消していくが、湖底までの距離は短いとは言え抜けた先は遺跡の中でも激戦区の地帯である。


 命の保証などできないし、冒険者である以上は自業自得であるとも言える。


『冒険者は冒険してはいけない』


 隆一が読んだことのあるラノベの中でも結構な頻度で引用されている格言だが、実際に異世界の冒険者になってその言葉の意味も重みもよくわかるようになった。


「奥深い言葉だよなぁ」


 誰にともなく呟く隆一に周囲は不思議な顔をしているが、アリシアは素知らぬ顔で奴隷に指示を出していく。


 そんな隆一達の目に飛び込んできたのは、よくぞここまでとも言える急ごしらえとは言えもはや立派とも言えるくらいにガチガチに固めた簡易要塞とも呼べる野営地の姿だった。


「お帰りなさいませご主人様」


 アリサの言葉に周りに待機していた奴隷達も一斉に頭を下げて主人である隆一を出迎える。


 全員がアリシア手製のメイド服や執事服を着用しているのが不思議で堪らない。


 とりあえず明日は今日参加した奴隷とは違う奴隷達を連れて行く旨を伝え、隆一はラトを呼び出す。


 どこからか現れるラトに今日の成果と遺跡の状態を伝えてエンズワーグのアーカードと王城に連絡するよう伝える。


 そしてアーカードにはダンケに奴隷が増えた旨も報告して欲しい事とジャマイカスの素行の悪さはどういう事だという苦情も追加で伝えてもらう。


 ラトは隆一から言われた内容を冒険者ギルドと王城へ送り、そして追加報酬のチーズを与えることを付け加える。


 エインズワーグではギルドではアーカードと数人のギルド職員の手により、王城では宰相他数人の文官の手により軍隊鼠による伝言の翻訳が始まる。


 忙しい中送られてきた内容に両者ともに呆れにも似た感情がやってくる。


 明らかに規格外の実力者がちょっと遊びに行ってみたくらいの気持ちで遺跡にいるのだ。


 文面からはジャマイカスの素行の悪さを収めた内容も伝えられ、アーカードは奴隷契約の書類を持っているダンケの元へと使いを走らせ真偽の程を確かめる。


 しかし帰ってきたのは「奴隷ギルドに登録が存在しない」という回答であった。


 帰ってきた使いが持ってきた書類にはジャマイカスの奴隷の雇用履歴が添付されていたが、何度読み返しても隆一が伝えてきた奴隷の人数と相関がとれない。


「違法奴隷か・・・・・・」


 隣国とは言え、エインズワーグに本拠地がある奴隷ギルドへ情報が届いていないはずがない。


 支部側で故意に情報を秘匿しているのでないならば違法に取引された奴隷である可能性が高くなる。


 例えAランクの赤縁とは言え刑は免れないであろう。


 軍隊鼠に大暴走が落ち着いた後隆一とルカルスの両名にジャマイカスの身柄を拘束するように伝達してもらい、王城にも秘匿性の高い情報として国王の耳に入れておく。


 もし本当に違法奴隷ならばギルドの恥となる事案であるからだ。


「それにしても、またリューイチの奴隷が増えるのか」


 今でも街中に出れば高確率で隆一の子飼いの奴隷達を見かけることがある。


 中には奴隷身分から解放されてなお忠誠を誓って働いているのもいるらしいが、冒険者ギルドの中でも街中の人々の出す雑用系の依頼を中心に消化してもらっているので住民の信頼も厚い。


 ダンケにマナーを躾けられているので社会性や礼儀作法にも聡く、他貴族の間でも隆一の所から巣立った使用人の雇用は一種のステータスになっているとも言える。


 その上冒険者登録をしているのである程度の武芸の心得もあり、その個人価値を高めることにもつながっている。


 いろんなところで日夜引き抜きが行われ続けているのは本人のあずかり知らぬところであろう。


 鼠たちにチーズを食わせ、アーカードは大暴走鎮圧のために緊急依頼を張り出す指示を出すのであった。


 一方、王城ではアーカードのもたらした情報を元に騎士団の編成を行っている最中であった。


 冒険者にとっては稼ぎ時であるのだが、国を預かる身となっては問題の種である。


 赤縁三人で事に当たっても、ピーク時の出現速度から考えてもって大暴走開始から持って三日が限度だろうと軍上層部では考えていた。


 今回は規格外である隆一と紅、そしてかれらが連れている奴隷も戦闘に加わるので、ある意味一大隊くらいの人数が参加しているものと推測している。


 実際は新米ばかりの奴隷だとはこの時誰も知らないことであった。




 翌日は朝も早いうちから魔獣たちの奇襲攻撃が始まった。


 遺跡の魔獣にとって目の前の紅は恐る存在ではないようで、牙や武器を鳴らしながら紅色の龍鱗を煌めかせる真紅の飛竜へ群がっていく。


 そんな魔獣たちを失笑しながら見つめていると、紅の口から近寄るだけ爛れそうなほどの温度を誇る自分の龍鱗と同じ色の炎を吐き出し迫り来る敵をなぎ払う。


 相変わらず火力に関しては凄まじいが、それらを放置して優雅に寝そべる紅の姿に呆れもする。


 とにかくそんな早朝の騒動も終わって焼けた魔獣たちを解体しての朝食作り、女連中が焼けた水性魔獣を調理し直している姿はえぐいものだが、昨日食べて美味しかったので気にしないことにする。


 男連中はその間に薪の調達と全員分の装具の手入れとやることを分担して指示を出していく(アリサとアリシアが)


 朝食が出来るころには他の冒険者連中も動き出したり襲撃にあって動けなかったりしているが、別段機能と変わるところはないようだ。


 他の赤縁は見かけないが、古城ルートから侵入しているのなら、今日行く予定のルート上でかち合うこともあるだろうし、共闘もしくは敵対する事もあるかもしれない。


 どうにも出会い頭のルカルスが見ていたアリサとアリシアを見る目が澱んで見えたのが気になる。


「気にしすぎかな?」


 食事の準備が終わったのか呼びに来たアリシアに返事を返しながら隆一は呟く。


 ジャマイカスが霞むくらいの面倒がすぐそばに迫っていることなど彼はまだ知らない。







日付はあきましたがお久しぶりです。


もう少しこの赤縁三人編は続きますのでお楽しみに!


ここまで読んでくださりありがとうございます。

不定期ですがこれからもよろしくお願いします

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