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第34話 屋敷完成!国王来訪!そして宴会!

ようやく一段落がついた事件


そして待ちに待った屋敷の完成!


ようし!今日は宴会だ! ←今ここ!

 メントスの行動が起こした面倒な騒動も一応?の収束も見せ、メントス自身を騎士団に引き渡した数日後、ようやく屋敷の改修が完了した。


 見た目古びた洋館だったのが真新しい白壁で彩られ、材料には木工ギルドの人たちが厳選した樹木で内装を統一、室内も清潔感ある白で日光を反射しやすく屋内は灯りがなくても隅々まで光が行き届く配慮。


 夜間は足元に明かりの魔道具を設置(ここらで鍛冶ギルドの人たちに手伝ってもらった)することにより夜中の暗闇の不安を軽減。小さい子供もトイレまで安心していけるだろう。


 俺の部屋は隠し通路のある大きな絵が飾られた部屋にし、たまに屋敷内を巡回できるようにした。


 そしてこれは重要だが鍛冶ギルドと協力して水洗トイレと大浴場を作ってもらった。


 一応トイレも風呂もあったのだが、トイレは汲み取り式だし風呂は井戸から水を汲みあげなければならない昔風の風呂しか普及していなかった。


 現代っ子として、ゆとり世代の代表として立ち上がり、鍛冶ギルドと総力を結集して作り上げたのがこの二つだ。


 地下道を通っていくうちに気がついたのだが、元々この国には下水設備が備えられていたようで、水脈も近くに流れていた。


 井戸もあったので水脈があるのは確信していたが、なぜか廃れている下水設備を有効活用するべく、水脈の一部を引き込み土魔法で作成したパイプを通して屋敷屋上に備え付けた巨大な貯水タンク二つへ蓄え、一つはそこから生活に必要な水周りへパイプを走らせ(厨房付近や風呂などのラインは隠し通路を利用し視界にパイプが見えないように工夫した)常に水が供給される環境を構築してみた。もう一つはトイレ専用にした。同じ所から引いた水であっても同じタンクだと不衛生だからだ。


 その後はトイレや風呂などに引き込んだ水を排水するために現代知識を活用してU字溝やS字溝などを鍛冶ギルドの中でも技術力の高いドワーフへ教えてパイプを作成してもらい、風呂やトイレに備え付ける。これらの設備の意味を理解していないようだったので、図で説明してみせると驚いていた。


 当然だが汲み取り式が一般の世界だと、トイレは臭くて当たり前という常識がある。しかしU字溝やS字溝はカーブの部分に水が貯まるため汚臭が漏れにくい利点があるのだ。


 清掃は大変だが、それは定期的に水魔法でどうにかしようと考えている。


 排水は廃れた下水設備を辿ると少し離れた国外の川に流れていたのでそこへ流すことで解決することにした。


 元は軍隊鼠が発見したのだが、商人を拷問している際に調査しそのまま利用することにしたのだ。


 はじめこそ屋内にトイレを設置することに難色を示していた奴隷達も、実際のトイレの清潔さを目の当たりにして目の色を変えていた。


 ドワーフたちも技術と金儲けのアイディアを得たのか目の色を変えていたが、勿論この世界にも特許の申請はあるみたいなので釘を刺しておく。


 大浴場も、貯水タンクから引き込んだ水を本来調理用に設置される火属性の魔道具を並列起動させて温水が出るように工夫したのが元になっている。


 こちらは魔道具の並列起動を行うので魔力が少ないと実現不可能な技術だったのだが、こちらには俺という魔力タンクと紅という火力タンクがいる。


 俺がいない時でも紅に頼めば風呂の下に設置してある魔石に火の魔力を加えれば五右衛門風呂のように湯沸かしができるようにしておいた。


 こちらも一度火の魔力を込めれば魔力切れになるまで使用できるため、普段はこちらを利用することになるだろう。


 追い焚きは俺自身が火魔法を使用すればいいだけの話だ。


 元々俺自身が生活するために必要な拠点を手に入れるためだったのだから俺以外の人間が使用するなどは最初から考えていない。


 奴隷という副産物をノリと勢いで手に入れてしまったので色々と面倒だが、テンプレはやるべきと言う武御雷の声が聞こえたような気がしたので問題ないだろう。


 水周りも照明も全て含めると今まで稼いだ金額が全て消えてしまうと思いきや、なぜか支払いの段階で木工ギルドからはレイが、鍛冶ギルドからはゲイルに、今回の支払いは必要ないと言われてしまった。


 理由を聞いても答えてはくれなかったが、レイは一言「こないだの騒ぎの関係だ」とだけ告げた。ゲイルは特に何も言わなかったが、草薙の研究器材が新しく入ったから近いうちに顔を出すように言われた。


 なんとなく理由を察したのだが、口止め料のつもりであろうか?


 たしかに金額的に考えれば今まで貯めた資金が無くなる程にかかったが、それでも取り戻せる額だ。


 鍛冶ギルドでの『知識ある武具インテリジェンス・ウエポン』の研究での定期的に入ってくる金に奴隷たちを連れて毎日クエストをこなしているので生活に余裕はある。



 まぁ、貰えるものはもらっておこう。


 あって困るものではないのだし、何かあったらそれこそ事を起こせば済む話だ。


 危ない思考を切り替えて一人で実際に屋敷内を一つ一つ確認していく。


 自分の部屋として使用する予定の部屋に飾られていた巨大な絵画は、仕掛けだけを残して取り外し、そこには壁一面の棚を設置することで扉を偽造することにした。


 今のところ棚には偽造用の書棚の他、銀龍煌の龍鱗やゲイルに作成してもらった草薙を元にしたレプリカなどを陳列させているだけで寂しいので、今後色々と物を増やしていこうと思う。


 棚にある銀龍煌の龍鱗だけでも一財産を超えるだけの枚数があるのだが、これは屋敷改修終了までの間に何回かアシッドアントの巣周辺を散策して手に入れてきたものだ。


 以前は奴隷たちを連れていたので回収は諦めたが、未だに他の冒険者たちはアシッドアントの巣の攻略に躍起になっているようだ。


 冒険者の質も疑わしいものだ。


 隆一はそう考えたが、世間では隆一のように銀龍煌の龍鱗が散らばっているのに無理やり魔法でゴリ押しなど出来ようはずもないのだ。


 脳筋たちで構成された攻略組も、後衛のバックアップが望めない以上わずかだがジリ貧になるしかない。


 現在巣に篭城しているのがナイトアント以上の上位種だったらなおさらである。


 最初に討伐隊の召集を蹴った身としてはこれ以上深入りする気はない。


 食堂や厨房、トイレや風呂などの設備を確認し、水漏れや不具合がないかなどを確認し、異常がないことを確かめた後に木工ギルドが用意した書類へサインして引取りとなった。


「これで正式に俺たちが暮らす家となったわけだが、まずはダンケと共に考えた勤務計画でしばらくは生活することになる」


 隆一の言葉に奴隷達は皆一同に頷く。


「とりあえず今日はこれから完成式と称した宴会を行う。男共は紅とともに食料の調達。女子供は俺と共に市場へ買い出しだ!」


 隆一の言葉に全員が喝采の声を上げ、各々が支度をはじめるのであった。





 隆一と奴隷達が来たのは市場の中でも最大の規模を誇っているノイマン商会が出している露天だ。


 エインズワーグ周辺の村や国から卸してきた食材や、冒険者が仕留めたと思われる巨大な肉塊などが並び、活気を見せていた。


「とりあえず、建築に携わった人間は全員呼ぶ予定だからあるだけ大量に買うか?」


 あまりに無計画に告げる隆一に奴隷達はドン引きするが、何人かの女奴隷は目利きが優れているようで、新鮮な野菜や安めの調味料などを買いあさり、小回りの効く子供はそんな女奴隷達のファンネルと化していた。


「おや?君は確か以前門前で見た子だな?」


 ついと話しかけられ振り向いた先には、久々に見るノイマン商会の会長、ノイマン・ヒースクリフがいた。


「ご無沙汰しています。お元気そうで。お腹の子は順調ですか?」


 以前の他愛ない会話を覚えていたのが嬉しかったのか、それから奴隷達が戻ってくるまでの間、ノイマンと最近の世間事情について情報交換をおこなった。


「へぇ。上層区に屋敷をねぇ?」


来た時に無一文だった時を思い出していたのか軽く笑うがあの時交換した宝石類は加工して妻と生まれてくる子供用にと家族ペアのアクセサリーとして使用しているのを思い出す。


「君が交換してくれた宝石類だが、あれほど質がいいのを見たことがない。東の国と言ったら鉱石都市『エルドラド』が有名だがそこで取れたのかね?」


 ノイマンの探るような声音に人差し指でバツを作る。


「残念ながらそこまでは言えないよ」


 だって武御雷の巾着にあったやつだし・・・・・・。


「ギルドカードも手に入れているようだし、冒険者業で稼いだ金で屋敷を手に入れたのかね?」


 それについてはイエスだが、回収費用は何故か事件の関係者さんが立て替えたようなので正しくイエスとは言い難い。買った金だってぶっちゃけ決闘システムの賞金だし。


「まぁ気にせずに。よければ今度招待しますよ。見れば驚きますから」


 笑いながら告げる隆一の言葉に「是非ともお願いするよ」とノイマンは告げて連絡先を教えあった。


 ノイマンは「その住所は確か?」と思い出そうとしてるようだが、上手い具合に奴隷達が帰ってきたので早々に話を切り替える。


「連れ達が戻ってきたようなのでこれで失礼します。また贔屓にさせてもらいますからその時はお願いしますね?」


 笑いながら立ち去る隆一に手を振りながら、ノイマンは隆一が連れている奴隷の数を見て身を見張る。


「中々に稼いでいるようだな。あれ?あの奴隷の子は確か・・・・・・」


 連れ歩いている奴隷の中に、前に上級貴族の夜会で見た少女が二人混ざっているのを見た。


 しかしその姿もすぐに人混みにまぎれ、見えなくなる。


 風の噂でノイマンの知る少女が隆一の奴隷になったと知るのはもう少しあとの話だ。


「ご主人様。先程話されていた御方はノイマン様では?」


 アリサが隆一へ話しかけたのは市場から少し離れた中層区の帰り道であった。


 ノイマンはうろ覚えであったが、アリサの方はノイマンの顔をしっかりと覚えていたようだ。


 隆一はアリサや他の奴隷たちにノイマンとの出会いを簡単に話す。


 奴隷達は隆一の意外な社交性の高さに驚きつつも今度生まれてくるという赤ん坊にプレゼントを贈るのはどうかと隆一に言ってくる。


 この世界には生まれてくる子には花を贈る風習があるらしく、鮮やかな季節の花で生まれてくる子に世に生まれた幸せを贈るらしい。


 この先ノイマン商会には勇者になる予定の子を含めて色々とお世話になるだろうから今のうちから懇意にしておくに越したことはないだろう。


 隆一達は屋敷へ戻ると厨房へ食材を置いた後、紅不在の中庭へと出て立食式の宴会準備に入る。


 工房のドワーフや木工ギルドの人たちを呼ぶにあたっては隆一自身が足を運ぶと決めて、他の奴隷達にはそのまま食材の下拵え等を頼むことにした。


 まずは中層区に入ってすぐの鍛冶ギルドへと足を運ぶことにした。


 隆一の言葉にゲイル達は酒が飲めると騒ぎ始めるが、そういえば酒や飲み物を準備していなかったことを思い出して帰りに買っておこうと決めた。


 まだ男連中が狩りから帰ってきていないため、宴会は夜行うことを告げて大体の時間を教えておく。


 同じように木工ギルドへ出向いてレイに同じことを伝えると、レイから冒険者ギルドのアーカードや受付嬢などの華もいたほうが楽しめるのではないかと言われたので急遽冒険者ギルドへ出向くことになる。


「ほう。色々とあったが屋敷が完成したのか」


 告げられた言葉に含みがあるが、今回は招く側なので別に気にしないことにした。


「それはそうとアシッドアントの巣の殲滅は終わったのか?」


 隆一の言葉にアーカードは言葉につまるが、別に隠すほどでもないのかあっさりとまだ片付いていないことを告げた。


「どうやら上位個体の中でも亜種化した個体が存在するらしく、組織だった動きに即席のパーティーが翻弄されて攻略ができていない状態にある。ソロ冒険者も数に押されて先へ進むことができず手詰まりの状態だ」


 現在は銀龍煌の龍鱗の撤去作業に冒険者を回しているのでもしかすると銀龍煌の龍鱗が値崩れを起こすかもしれないとアーカードに言われた。


 かなり痛めつけたから龍鱗も大量に散らばっていることだろう。


「へぇ、亜種ねぇ。暇なときに奴隷連れて攻略しに行っても問題ない?」


 一度は蹴った誘いだが、珍しい個体がいるとなれば見に行くのもイイかもしれない。


 アーカードは渋々ながらも了承してくれたので、今度奴隷を連れて久しぶりに攻略に洒落こもう。


 帰りにコノカが受付に立っていたので屋敷で宴会する旨を告げると他にも何人か誘って来るということなのでお願いしておいた。


 ひとしきり回ったところで屋敷へと帰ることにする。勿論途中で酒樽を購入するのを忘れない。


 ドワーフは結構飲む種族というので大目に見て10樽ほど上層区の屋敷へ届けてもらえるように手配した。


 そうして酒が届くよりも早く屋敷まで戻ると、門前に豪華な馬車が一台止まっているのを発見した。見ればアリサが硬直しながらも対応を頑張っているようだ。


「えっとあの、主は現在・・・・・・あっ!申し訳ありませんご主人様!お客様がお見えになられています!」


 帰ってきた俺の姿を見たアリサは肩の荷が降りたと言わんばかりに俺を手招く。


 馬車に見える家紋から考えればファルシナの記憶にあるある家紋と一致する。


「君がこの屋敷の主かね?これはまた随分と若い子だ」


 一人の初老の男が隆一の前に立ち話しかける。馬車の中には明らかに世俗離れした煌びやかなドレスを着た少女が扉の隙間からこちらを見ている。


 男の一連の所作には隙がなく、一般市民出身の俺に対してさえ礼儀を忘れぬその姿勢には惚れ惚れするほど自然に頭が下がる。いや、下げされられる。


「これはまた、急なお越しを。ここで立ち話はなんですから中でお茶でもどうでしょうか?」


「急な来訪なのに済まないね。お言葉に甘えさせていただこう」


 隆一はアリサに、応接室として使用する予定の部屋へ男と少女を案内させ、厨房にいる奴隷にお茶と巾着から菓子類を幾つか取り出し皿に乗せて後で持ってくるように命じておく。


 元とは言え貴族出身のアリサならなんとか場を持たせるくらいはしてくれるだろう。


「お待たせしました。アリサは下がって皆の手伝いに回ってくれ」


 応接室へ入ると少女から質問攻めにあっているアリサの姿があったので、助けるついでに厨房にいる奴隷達への救援に回す。


 アリサが部屋を出ていくのを待ってから隆一は終始笑顔を絶やさない男の対面に腰を落ち着ける。


「この度は出資していただきありがとうございます。と言えばよろしいのでしょうか?」


 開口一番の隆一の言葉に目の前の男、エインズワーグ国王『アレハンドル・エインズワーグ』はその笑みの色を一層濃くする。


「私と君は初対面のはずだがどこかであったかね?」


 アリサが最初、対応に困っているようだったのは目の前の男が国王だと知っていたからだ。


「さすがに外から来た人間でも馬車に刻まれた王家の紋章ぐらいは覚えています。が、貴方の体から出る風格はそれだけで一角の人物だと知れる。知においても武においても」


 隆一と同じく体の中で魔力を練っているのがわずかだが確認できる事から相当の魔力を保有していることが知れる。


 それを外へ漏らさない技量もさすがのものだ。


 隆一は血液をイメージして魔力を循環させているが、目の前の王はそういった知識もない世界で独学で編み出したのだろう。


 素直に尊敬を感じるとともに、その隣でソワソワしている少女が気にかかる。


「改めて自己紹介を。この屋敷の所有者にして赤縁の冒険者として登録している龍ヶ崎 隆一と申します。この度は屋敷の改修に際し資金を援助してもらったようで申し訳なく思っています」


 あくまで定形に沿った挨拶だが国王は笑みを浮かべたまま畏まるなと隆一に促す。


「此度の改修工事は城からの緊急用避難通路の発見にも一役買ってくれておる。無論、その道中についてもメイド長から報告があった。君からの報告を受けて早急に信頼できる部下数名に探索させ通路内の掃除をしておいた。キナ臭いものがいくつか出てきたが、もう随分昔のものゆえ足跡も辿れないものも多いのだがひとまず形にはなった。有事の際は利用させてもらうがそちらからはなにか要望はあるかの?」


 ならばと、隆一は草薙のレプリカを取り出し国王に見せる。


「私の家に伝わる『知識ある武具』、草薙のレプリカになります。この剣の形状に似たモノを、ご存知ないでしょうか?」


 国王に見せたレプリカは、隆一が持っていた過去の自分が書いた手記の中から形状だけを抜き出してゲイルに作成してもらったものだ。


 草薙を形作る金属の製法が不明なため、ゲイル達のレプリカは通常の金属に隆一が知っていた日本刀の知識を教えて作らせた鍛造製の本物に形だけ似せた、ただのよく斬れる剣でしかない。


 しかし、鍛冶ギルドの努力の結晶だけあって市場に流せば上級の冒険者なら目の色変えて飛びつくだけの価値がある。


 それを国王も見定めたのか剣の装飾よりもその剣に秘められているであろう切れ味に魅せられたようだ。


「ううむ。知識ある武具の情報は簡単に外へ漏らしてはならぬ情報故、おいそれと返答できぬのが心苦しいのだが、少なくとも我が国内にこの剣の形状と酷似した剣の情報は存在しないとだけ告げておこう」


 全ての武器が草薙の形状をしているわけじゃないので仕方がないのだが、知識ある武具の情報は部外秘の情報なのか。


 知識ある武具の金属が手に入れば修復の手助けになると考えたのだがそう簡単にはいかないようだ


 別の報酬を考えていた隆一だが、続く王の言葉に思わず身を乗り出すことになる。


「しかし遺跡の、それも文明的に多世界が絡んでいるとされる遺跡の中にならもしやすると存在するのかもしれん」


 多世界が絡んでいる遺跡?そんな情報はファルシナの持っている記憶にも草薙から聞いている情報にも存在しないぞ?


「その遺跡というのはどこに存在するのですか?」


 隆一が身を乗り出して詰め寄る姿に驚きつつも国王は遺跡に関する情報を教えてくれた。


 なんでも、ある時国の一部に地割れで穴が空き、中から古代文明の遺跡と思われる建築物が姿を現した。


 しかも、そこは半ば迷宮化していて、その地域では存在しないはずの魔獣や見たことのない怪物の類が闊歩していた。

  

 それらの生物は何故か遺跡から外へ出ることはなく、探索隊が中を調べたところ今までに知られていない言語で書かれた書物や製法がわからない陶器、刀剣類の類が出土した。


 そしてその後も遺跡は地割れとともに姿を現し、明らかに今のこの世界の技術では再現不可能な技術が多用されていることから『異世界の落し物』という通称で認知され、魔獣たちがあふれださない様に間引きすることも含め冒険者たちに広く開放しているのだという。


 そして出土品の中には知識ある武具も含まれているという。


「もしかしたら君の持つ剣も出土品の一つなのかもしれないが、明らかに別世界の技術で使われている製法の場合再現は不可能。実は遺跡の文献の中には解読に成功し再現した技術も世に出回っているがそれも出土した中から見れば微々たるものというのが現実だ。故にもし遺跡に向かい調査をするというのなら私は止めないし技術の進歩に貢献してくれるなら歓迎しよう」


 そこで話がひと段落した所でついに我慢できなくなったのか、隣に座っていた少女が国王に詰めかけた。


「お父様! なぜ私の紹介をさせてくださらないのですか!?」


 草薙のレプリカを隆一に返した後に国王に詰め寄るあたり一応礼儀は知っているのか?


 アレハンドルも王女の事を失念していたのか詰め寄る王女を押しとどめながら「すまなかった」と謝っている。


「すまなかったな。儂の娘でエインズワーグ王位継承権第2位、『ミリアリア・エインズワーグ』だ。今日は娘が避難経路先の屋敷を知っておきたいと駄々をこねてな。強引についてきたのだ」


 アレハンドルの言葉に思うところがあったのか国王を肩肘でつつくと王族らしい所作で自己紹介を告げる。


「国王アレハンドルが娘、ミリアリア・エインズワーグと申します。今日は突然の訪問お許しくださいませ」


 先程名乗ったのだがもう一度ミリアリアに対して自己紹介をして王女の容姿を目端で確認する。


 金髪の長い髪を後ろに束ねたポニーテール。クルクルドリルじゃないのはテンプレとして残念に思うが、先程の国王の言動から察するにおしとやかというよりも体育会系の性格なのだろう。容姿も整っていて出るとこは出ている感じだが、年齢的には俺と同じか少し上ぐらいであろうか?


「いざとなった時に通路先にいる人間の人となりを知らぬ状態では通路として利用するにも不安が残るでしょうし気にしていませんよ。これから屋敷の完成式を称した宴会を行いますがよろしければどうでしょうか?」


 屋敷の住人やそれに携わった人たちも出席するから顔だけでも確認してはどうか?という意味合いを含めた言葉だったのだが、気づいたのは国王で、単純に宴会という言葉に目を輝かせたのはミリアリアであった。


 国王と王女という肩書きを隠して屋敷の管理をしていた城に住む役人親子という設定で宴会に出席していた人たちには紹介した。


 レイとアリサ他何人かはきっと式典などで顔を見たことがあるのであろう驚いた顔をしていたが、隆一の静かにしていろというジェスチャーが伝わったのか、それとも黙ってろという威圧が効いたのかそれ以上のリアクションを出さずに宴会が始まった。


 なんと、紅と男奴隷達は再びジャイアントポテトと黒毛を狩ってきた。


 なんでも国から出て程近い場所で紅がジャイアントポテトの匂いを感じ取り向かったところ、食い荒らされたポテトの残骸と、巨大な洞窟があったらしい。


 中へ入った所、周囲にはポテトの残骸が散らばり、奥に黒毛の幼体と成体がいたそうだ。


 最初は子持ちの黒毛を殺すのが忍びなくて立ち去ろうとしていたが、黒毛がこちらへ気づき、子供を守るために殺気を込めた威嚇をしたところ、紅がそれに釣られて戦いが始まったそうだ。


 無論飛竜に動物が叶うはずもなく、黒毛は肉となったが、幼体はまだ生後幾ばくもないのか死んだ黒毛の乳を吸おうと乳房を咥えながら離れようとしなかったので連れてきたという。


 見れば黒毛の肉に紛れてまだ赤茶けた毛並みの、それでも普通の牛ほどもある幼体が黒毛の乳房に吸い付き、出なくなった母乳を吸っている。


 命を喰らうものとしては例えこの仔牛を生かしておいても、親の死を恨み人間に襲いかかるかもしれない。


 幼いといっても凶暴で知られる黒毛なのだ。成長して人を襲うようになれば目も当てられない。


 ひと思いに楽にするか、それとも紅と同じく奴隷契約で縛ってみるか?


 その判断を隆一に仰ぎたいのだという。


 生かしておいて肥らせて食べる選択肢もあるが、さてどうしよう?


「あの。よろしいでしょうか?」


 背後からかけられた声に振り向けば、ミリアリア王女がこちらの袖を引きながら子牛を見つめている。


「もしそちらがよろしければ王城で引き取らせてはもらえないでしょうか?黒毛の仔牛は発見が非常に難しく、肉の他にも、黒毛から取れる乳にはかなりの価値がありますので、王城でそれなりの値段で買わせていただきたいのですが?」


 背後で王が頷いているあたり相談して了承をもらっているのだろう。


「わかりました。奴隷としては紅もいますし、さすがに親を殺した者と一緒に生活させるわけには行かないと思っていましたから。しかしひとつだけ条件があります。もし黒毛が暴れた際は躊躇しないこと。それともし乳が採取できるようになったらウチにも卸してもらいたいのです。美味しいミルクが飲めるのならお金は要りませんので」


 隆一の了承を得て黒毛の仔牛は正式に王城へ輸送されることになる。


 輸送は翌日に回し、今日は奴隷達が使用していた小屋へと運び込み、藁を敷いて即席の住処とした。


 一応のため、ミリアリア王女との売買契約を結んだ書面を作成し、仔牛には首輪をはめてミリアリア王女のサイン入りのタグをぶら下げた。


 所有権がミリアリアにあることを主張するために裏面にはこっそりと国王にもサインを頂いておいた。


 様々なハプニングもあったりなかったりしたものの、ジャイアントポテトや黒毛の肉を盛大に振る舞い、その場にいるもの全てが身分の差など関係なく騒ぎ、食い、歌い、踊り、夜遅くまで宴を満喫したのであった。


 それはある意味で隆一がこの世界に来て初めて楽しめた一日だったのではないだろうか?





 それは本人も気づかないうちに訪れたいっときの平穏であった。


 




皆様、めでたくつい先日誕生日を迎えることができました!


誕生日前日に壊れたvitaを買いなおすのが自分への誕生日プレゼントになりました。


これからも不定期更新に相成りますが、読んで下さりブックマークに登録してくださった方々や目を通してくださった方々のために作品を更新し続けていきたいと思いますのでこれからもご愛読してくださればと思います。

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