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第28話 エインズワーグヘの帰還

竜と遭遇


芋を食べて意気投合!


BBQヽ(・∀・ )ノ キャッ キャッ!エインズワーグへ私は帰ってきた! ←今ここ!

 現在、隆一は解体された黒毛の肉を商人の荷物の中にあった鉄板の上で焼き、一人焼肉を楽しんでいた。


 勿論手伝ってくれたレイモンドや鉄板を温めるために平たい岩を赤熱するまで温めてくれた紅にも分け与えている。


「うまい!今日は人生最高の日だな!」


 レイモンドは人生で初めて食べた高級肉の味にガチ泣きしながらかじりつき、紅は焼いた肉よりも生の方が美味しいのか巨大なすね肉を一本丸かじりしている。


 そんな光景を見ていた他の奴隷達も食べ終わったあとなのか、こちらを見て生唾を飲み下している。


「あ~、わかったからお前たちも食え。男は肉の切り分け、女は肉を焼いて子供たちにも分け与えてやれ」


 どうせ燻製にする時間はないし、ここで食べきらなければ腐ってしまう。


 隆一の言葉に奴隷達は歓喜して各々が命じられた役割をこなしていく。


「アリサとアリシアか。どうした?」


 一気に盛り上がってきたBBQの最中、奴隷の中で唯一の姉妹である二人は、おずおずといった様子でこちらに近づいてきた。


「良いのでしょうか?黒毛といったら王族の料理に振舞われるほどの高級肉で一頭丸々売れば金貨100枚はくだらない程の品ですが?」


 元貴族なだけにそういった知識は深いアリサの言葉に、妹のアリシアも頷いている。


 一頭まるごと保存する方法がない以上、高級な霜降りの部分だけ凍らした上で既に巾着にしまっている旨を教えてやると、二人は霜降りの意味がわからないのかキョトンとしている。


「黒毛の最も美味しい部位は鍛えられたすね肉の部分で、ご主人様のおっしゃっている部位はおそらく脂がくどくて食べられないと思うのですが?」


 ここで現代人である俺の味覚と食肉文化の中でも中盤と思える時代に生きる人たちとの価値観の違いが判明する。


 ステーキとして食べるのが一般的な日本人にとっては脂滴る霜降りステーキこそ絶品であるが、この時代の人たちにとっては歯ごたえのある肉が至高の品なのだという。


「まぁ、そこらへんは調理の仕方しだいだろうし、調味料が整ったら一度食わしてやるよ」


 二人は楽しみにしていますと告げてBBQの喧騒の中へと身を投じていく。


 隆一はチラリとすね肉を美味しくかじっている紅を見て、もったいないことをしてしまったかもと一人ため息を付くのであった。


 全員が黒毛の肉を堪能し、あれだけ巨大な牛の肉がどこに行ったのかと思うほど小さくなった(それでも一ブロックごとの大きさはデカイが)肉を生活魔法で凍らして巾着へ入れていく。


 この巾着は昔の俺が使用していたものだが、ラノベのように内部の時間が止まっているなんてことはないので、定期的に巾着に手をつっこみ全ての肉を冷凍し直さなければならない。


 最も、紅のおかげで残りの行程は驚く程短縮できたので、遠目のエインズワーグが見えた段階で足の速い獣人族の2名を報告要員として先触れを出し、一旦小休止をしてから国へと歩を進める。





 

 いち早く国にたどり着いた獣人族の二人は、急いで手近にいた門番に詰め寄ると事情を説明し始める。


「済まないがしばらくしたらここに飛竜種が一頭来るが、ご主人様の奴隷なので攻撃しないでやって欲しい」


 門番は焦った様子でまくし立ててくる獣人族を落ち着かせ、細かい話を聞くことにする。


 曰く、私たちは奴隷商人に売られていた奴隷である。


 曰く、銀龍煌が出現したポイントにアシッドアントたちが巣を作っていた。


 曰く、奴隷商人たちは欲を出しアシッドアントに殺されてしまい、私たちは供物にされかけた。


 曰く、それを救ってくれたのがご主人様で、単身アシッドアントの巣に大打撃を与えて私たちをここまで導いてくれた。


 曰く、ジャイアントポテトを食べる紅色の飛竜を奴隷にして黒毛を食べた。美味しかった。


 最後だけ意味不明だが、単身でアシッドアントの巣に大打撃を与えられる人材となると赤縁の人間、それも上位ランカーと思われる二つ名持ちぐらいなものだと思うが、いずれもこの国から離れていて戻ってくるという話は聞いた事がない。


 しかしこの二人が嘘を言っているとも思えず、とりあえず二人とともに門番の待機室にてご主人様というのがやってくるのを待つことにした。


「あっご主人様の匂いだ」


 待つこと2時間ほどだろうか、不意に獣人族2名が顔を上げて門の外へと飛び出した周囲を確認し始める。


 獣人族の嗅覚は種別にもよるが人間よりも遥かに高いと聞く。主人の匂いを遠方から感じ取るなど造作もないのだろう。


 しばらく付近を確認していた二人だが、こちらがギリギリ視認できるかといった距離で確信したらしく、両手を振って存在をアピールし始める。


「あれがご主人様とやらか」


 遠めだが、大柄の虎族と思われる獣人が熊族の獣人とともに武器を携えて歩いてくるのが見えた。


 服装が貧相なのは背後に見える紅色の飛竜種との戦闘で破壊されたからだろう。周囲にいるのは少し身なりの良い少年と、おそらく手を振っている獣人と同じように奴隷にされていた者達であろう。身なりのいい少年は誰なのかはわからないが、道中一緒になった冒険者とか言ったところだろうか。


 門前まできた主人たち一行の元へ二人が戻るのを待ってから主人と思われる獣人二名の元へと出向いて手続きの話をしようとするが、そこで身なりのいい少年が口を挟む。


「とりあえず全員分の入国手続きを行ったあと冒険者ギルドへ出向いて換金処理を行いたいのだが問題ないだろうか?」


 少年の言葉は獣人よりも自分を優先しろとばかりに無愛想だが、もしかして貴族の出なのだろうか?


「済まないが君はこの者たちの連れなのかい?」


 疑問を口にする兵士の言葉に、少年は先に行かせた獣人二名を見やると、二人は慌てて首を横に振る。


 その様子から、双方の間でなにか誤解を生む出来事があるらしい。


「ああ、そこの二人にお願いしたのは紅が来るけど攻撃するなという事を伝えに行かせただけだから、落ち度は俺の方にあるんだろうな」


『ベニ』と呼ばれたのがあの紅竜だとすると、この少年があの紅の飛竜と奴隷契約をした者になる。


兵士は今まで主人だと思っていたガタイの良い二名の獣人を見るが二人は少年を指差して自分の首筋にある奴隷紋を晒す。


「つまりは君が彼らの主だと?」


 兵士の震える言葉に、少年は「正確には紅だけが正式に契約している状態だが」と言い換えて概ね肯定する。


 詳しく話を聞こうにも飛竜種がいるという噂が出始めたせいで門前に人垣が出来始めてきた兵士は、全員を一旦兵の待機室へと案内し、紅と呼ばれる飛竜には一旦馬用の兵舎で休むように主人と呼ぶ少年に伝えた。


 少年の手振り一つでおとなしく兵舎へ向かう飛竜の姿を見て獣人の話していた内容が真実なのだと実感し、他の人の目を避けるように一行を待機室へと案内する。


「まずは奴隷の者たちはこちらで入国用の手続き書類を記入してもらいます。主人であるあー「隆一だ」リューイチ殿には彼らの身元引受人として一人銅貨1枚、そしてこれは一応規則なのですが、テイマーの中でも危険種族のテイム者にのみ記入してもらう契約書があるのですが、それを書いてもらいます」


 渡された紙は奴隷達の人数と各種族等を記入する一般の入国同意書と赤縁で彩られた危険種族同行許可書という裏に魔法陣が彫られた薄い木版が手渡された。


「この木版は、他種族や魔獣の中でも特に危険度が高い種族をテイムした者に書いてもらっている契約書になります。本来なら赤縁の魔術師を仲介役にして記入してもらうのが通例なのですが、現在王宮に一人いるだけで他の赤縁は出払っていまして」


 隆一が内容を確認すると大まかに3つの項目について説明されていた。


 一つ目、テイム者はテイムしたものが暴れた場合はこれを速やかに鎮圧し処分しなければならない。


 二つ目、国内において必ずテイム者はテイムしたモノから目を離しかつ放置しないこと


 三つ目、国が危機に瀕したときテイム者はテイムしたものを連れて必ず馳せ参じなければならない。


 つまりはペットの躾はちゃんとしろ。強いもの連れてんだから国の役に立てと。


「中々に面白い内容だがまぁ納得の内容だな」


 裏面に彫られている魔法陣はおそらく奴隷契約と似た感じの契約型の魔法陣だ。法で縛るのなら当然の行為と言える。


 特に龍族を従えている人間などこの世界には隆一以外存在しないのだ。


 龍族と並んで魔獣ならばコカトリスやバジリスクなど、異能力を持った種族や海域に面しているのならセイレーンやクラーケンなどの種族がテイムされる種族として危険種族に当たる。


 最も今回は、奴隷契約を結んでいるためこの木版は必要ないとも言える。なぜなら紅は奴隷であり、使役されるべきテイムモンスターではないからだ。


 スライムである餅はテイムモンスターとしてここで必要な手続きを行ったため、とりあえず紅の奴隷契約の件を伝え、奴隷契約の手続き文書と入れ替えに木版は兵士に返してしまう。例え奴隷契約をしていても危険種なので必要に応じて呼ぶ場合も緊急の場合を除いて許可がいるらしい。


 本来奴隷契約は賃金を対価に奴隷を働かせて労働の対価として給金を支払っている。つまりはギブアンドテイクな関係なわけだ。


 内容は肉体労働から夜のご奉仕までなんでもあるが、総じて肉体労働系の仕事は犯罪奴隷が担当することが多い。


 最も、奴隷を買う主人の思考によって行う行為は様々だが、今回は紅以外の全ての奴隷達を解放し、その中で俺に仕えたいという奴隷だけを残して正規の手順で奴隷商人に引き渡す予定だ。


 とりあえず奴隷達人数分の入国費用と国には入れないものの紅の入国?費用を支払い奴隷達とエインズワーグ内へと歩を進めていく。


 勿論向かう先は目の前にそびえ立つ冒険者ギルド本部だ。


「いらっしゃいませ。あらリューイチさんですか。暫くぶりですね?」


 対応に応じてくれたのはコノカだ。最後に見たのがあのチンピラを燃やした後の賭け金の支払いの時だから確かにしばらくぶりと言えるだろう。


「アシッドアントの討伐部位の換金をお願いします」


 そう告げて背後にいた奴隷達が運んできた数を見て、コノカは慌てた様子で他のギルド職員に応援要請を出しに消えた。


 しばらくすると、コノカの他に数人、見たところ屈強そうなガタイのおっさんを筆頭に職員の人たちが駆けつけてくるところだった。


 よく見ればガタイの良いおっさんはギルドマスターではないだろうか?


 イチャモンか?クレームなのか?


 一気に機嫌が悪くなる隆一を他所に、コノカが先導してきたギルド職員は手早く奴隷達から素材を受け取り種類別に整えると鑑定を行うために素材一式を持って裏の方へと下がっていった。


「ではリューイチさんはマスターがお話があるようなのでこちらへ。その他の方々は申し訳ありませんがこちらの待機室でお待ちください」


 ギルドマスターの手前ややビシッとした動きで案内するコノカだが、剣呑な雰囲気を出している隆一を目にしてややタジタジである。


 まぁ、コノカに悪気はないので深呼吸して落ち着きを取り戻すと奴隷達にある指示を出して、おとなしくコノカに先導されてギルドマスターが入っていった部屋へと一緒に入っていく。


「で?」


 部屋に入るなりコノカは退出してしまったので、不愉快さMAXで目の前のギルドマスターに問いかける。


「君が先日の決闘システムの事について憤っているのなら謝ろう。しかし今回はそれとは全くの別件で君に質問したいことがあるのだ」


 アーカードは考える。


 あれだけの甲殻や素材、恐らくは巣を討伐したんだろうが流石に素材の量が多すぎる。それに情報では道中で紅色の飛竜をテイムしたという。それだけの実力を低レベルの冒険者で居させて良いものかどうか。


 色々と考えが頭をめぐるが、手前の一つ一つを片付けていくことに決めた。そうしなければ目の前の少年の機嫌が悪くなる一方だと気づいたからだ。


「まずはじめに君が連れていたのは奴隷だろう。彼らは?」


 遠まわしに買ったのか?拾ったのか? という質問だったのだが


「アリの巣駆除の戦利品みたいなもんだ」


 隆一の言葉によってまず買ったという選択肢が消えた。そしてやはりアシッドアントの巣を討伐したようだ。


「ふむ。アシッドアントの巣を討伐したのだな?」


「いや、正確には雑兵だけ減らすにとどめた。奴隷たちを連れて殲滅戦は危険が大きすぎたからな」


 隆一の言葉で数は減らしたが全滅はさせてない。そして奴隷達はおそらくアシッドアントたちが手に入れた供物の一部だということだろう。


 アシッドアントの女王種は通常個体とは違い明るい場所を好み、人と同じような外見をしていることが多く、また人肉を好んで食べることでも知られている。それに周囲を守る近衛蟻のソルジャーアント達が相手では足で纏いを抱えて戦えるほど優しい相手とは言えないだろう。パッと見た限りでは素材は下位の通常種とロックアントしかなかったので上位個体は戦線に参加すらしていないはずだ。


「パッと見た限りでは全て剣か鈍器で破壊されたようなモノばかりだったな。君は魔術師ではなかったかな?」


 ギルドマスターの言葉に忌々しげに


「銀龍煌の龍鱗のせいで魔力が形をなさない。奴らは出現場所の近辺にコロニーを作り拡大していた。奴隷達に手渡せる武器がなかったらこちらも危険だった」


 実際はゴリ押しでどうにでもなるのだがここではあえて精一杯だったという表情を作っておく。


「やっかいだな。ロックアントの壁が減っても魔術師が役に立たないのでは戦略が絞られてしまう。貴重な情報を前もって知ることができたのは僥倖だ」


 会話をしながらアーカードは国内及び周辺に滞在している上位ランカーの冒険者たちの中から近接職に特化した人物のリストを思い浮かべていく。魔術が使用できない空間で彼らより優れた冒険者は他にいないだろう。


「そして紅色の飛竜をテイムしたと連絡が入っているのだが、それについては?」


 テイムしたモンスターが危険種として指定されているのなら、これから出すアシッドアントの巣の駆除隊に入って働いてもらわなくてはならない。


 起こり得る被害と天秤にかければ例え隆一個人に恨まれても誓約書類を書いたのならそれに従わなければ処罰される。


「あぁ、まぁ道中でジャイアントポテトを見つけてな。そこが紅、俺の飛龍が縄張りにしていた領域だったらしくてひと悶着あってな。芋を半分やって手懐けた感じだな」


 隆一の言葉にアーカードは目頭を抑えて考える。


 確かに飛竜種はジャイアントポテトを好んで食すが、別にそれだけで手懐けるほど飛竜種は馬鹿ではない。竜騎士と名乗る者たちは厳しい訓練の末、比較的幼くおとなしい飛竜種を狙ってテイムを行い極低確率でそれに成功し竜騎士となれるのだ。


「つくづく枠の外の考え方だな」


 アーカードの皮肉に対して「元々外様の人間だからな」とこちらも皮肉で返す。


「内容は理解しがたいがとにかく理解した。そう考えないと常識が崩れそうだ。ついては危険種のテイム者なら門番に木版を手渡されたはずだ」


「ああ、確かに手渡されたな。それがどうした?」


 奴隷契約なのでテイムとは違うと門番に伝えて返したけどあえて口にはせずに話を促す。


「これからアシッドアントの巣の殲滅作戦をクエストとして発注する予定だ。付近にいる近接職の冒険者を主軸として第三次までの派遣部隊を組織し討伐に向かう。そこで危険種テイム者である君にも強制依頼が下ることになる。略式だが否は許さない。紅の飛龍とともにアシッドアントの討伐作戦に参加するように」


 木版には自身の魔力を流したあと宮廷に勤めている赤縁に再度魔力を注いてもらいそこで契約が完了となる。しかし今からだとおそらく木版にはま魔力は注がれていないはずだ。ここで言質をとってしまえば後でいくらでもごまかしはできる。


 あの宮廷の赤縁に借りを作るのは尺だが致し方あるまい。


 ギルドマスターは計算高くなければいけない。表の顔はシリアスでも内心は拒否られたらどうしようとビクビクしている。


 しかしそれを尾首にも出さずに堂々と隆一を見据えるアーカード。


「だが断る!」


 隆一は断固とした決意で拒否を告げた。


 アーカードはシリアス顔のまま開いた口が塞がらない。


 隆一は追い討ちを仕掛けた


「話がそれだけなら換金処理が終わっただろうから帰る」


 アーカードが意識を取り戻すよりも早く隆一は踵を返して扉を閉める。


「……っえ?」


 ギルドマスター威厳ゼロである。


 受付に戻ると隆一の匂いを嗅ぎつけたのか奴隷達が全員揃って主人を出迎えた。ギルドマスターが出てこないのを不思議に思いつつもコノカは奴隷達に各々の取り分を均等に分配してくれているらしい。


 中には借金が帳消しになるほどだったのか感激にむせび泣く者やあとちょっと届かずに肩を落とす者などいるようだが、隆一の仕事はここからだ。


「全員金は貰ったな。貰った額で自分を買い戻せるなら今から奴隷ギルドへ行って手続きを行うし、足りない奴らもとりあえず減額できる分は支払いを済ませておけ。今後奴隷ギルドへお前たちを引き渡すわけだが……」


 隆一は一旦言葉を区切る。奴隷達の中には借金の額が多いのか嬉しそうな顔が一変して不安そうな顔に変わってしまう。


 当然だ。道中怖い思いもしたが、通常口に入れることもできない王宮料理に出されるような品を口にしてしまったのだ。


 今更奴隷生活時の食事に戻ることなどできない。道中の狩りで食べた肉さえ奴隷商人に連れられている間は欠片すら口にできなかったのだ。それに自分を買い戻せてもそこで支払った額で手持ちの金が尽きてしまう者がほとんどだろう。それから先暮らすための家も金もない状態ではどうしようもない。


 現実を思い知った奴隷たちの表情に陰が落ちる。


「お前たちに三つの道を提示する」


 隆一の言葉に奴隷達は顔を上げて隆一を注目する。


 目線が全てこちらに向いたのを確認して隆一は告げた。


「一つは奴隷ギルドへ行き俺以外の主人に買われるまで再び檻の中で住み続けるか。二つ目は自分を買い戻し更に俺から金を借りて自由を手に入れるか。三つ目は俺の下で正式に奴隷契約を結び働くかだ。どれでもいいが俺としては三がオススメだ。飛竜種の紅と同僚で後輩だぞ」


 威厳があるだろう? と隆一が告げると奴隷達は口を揃えて


「「「「「三で!」」」」」


 ギルド内に響き渡る位の声量で叫んだ。


「じゃあ正式に契約をしに行くぞ。お前らの今回の報酬は取っておけ。今はまだ高給取りじゃあないが住む場所も改築する手はずになっている。決して不自由させないと約束しよう」


 隆一は言葉と共に冒険者ギルドを立ち去り、ハーメルンの笛吹きのように奴隷達が後ろに続く。


 子供、女など含め総勢十五名にも及ぶ奴隷達の集団が隆一の奴隷として正式に雇われることとなった。


「リューイチはどこ行った!?」


 しばらく後、現実に帰ってきたアーカードが血相を変えて飛び出してくるや周囲に聞こえるように大声を張り上げ、その喧騒に周囲は何事かと注目を集める。


 受付の一人が扉を指差して既に帰った事を告げると、肩を怒らせて飛び出そうとしたので手近にいたギルド職員に押さえつけられる事態となった。


「やつめ!ギルド依頼を断るとはどういう事だ!」


 危険種である飛竜をテイムしたことまでは口にしないが、周囲に聞こえるのもお構いなしに毒を吐くギルドマスターに周囲はただ事ではないと野次馬を作り始める。


「ギルマス」


 そんな中、一人の青髪の少女が一枚の書類を手にアーカードの元へとやってくる。


 いや、正確にはパンツ一枚の四つん這い姿勢で歩いてくる巨漢の上に仁王立ちでバランスを取りつつロデオよろしくやってきたのだ。


 隆一が見ればエインズワーグへ来た時、冒険者ギルドの出張所にいた一人だと気づいただろう。人垣がモーゼの如く別れ、少女に道を作る。


乗っているのが巨漢の男でなければ神々しいとも言えるだろう。


「マリアか、また男が変わっているのはさておいてなんかようか?」


 特に男についての深い言及がないことから、普段からそうなのだろう。


マリアと呼ばれた少女は「書類、不備?」とだけ告げて紙をアーカードに渡して再び割れた人垣を通り仕事へと戻っていく。


「なぜ疑問形なんだ? これは奴隷契約書の写しか……っ!?」


 ギルドマスターは固まる。


 内容は紅が隆一の奴隷であってテイムしたモノでないこと。その証明として赤縁の契約書類まで使用している念の入れようだ。


 アーカードは急いで最善案を模索する。


 これでは危険種をテイムしているという理由で討伐に参加させることができないはないか。


 ギルドマスターの権限でランクを強制的に上げて参加させることも可能だし、冒険者ギルドの近接職全員に強制収集をかけて参加させようか?


 いや、しかし、リューイチの実力は決闘システムを見ていた観客からしたら高威力魔術の使用による明らかに後衛向きの戦闘スタイルだと思われている。しかも大剣を背負っていることから生じる外見的特徴を偽装に使う徹底ぶりだ。今回のアシッドアントの討伐では魔術師が使えないことから呼ぶとなると揉め事になる可能性が高い。


 アシッドアント達の素材の損傷具合から少なくとも剣戟、もしくは鈍器による近接戦闘もこなせるとは思うが実力が見えない以上うかつに声すらかけられない。本人は奴隷達に倒させたと言っていたので審議は分からないが納得せざるを得ない。


 彼一人に固執するなど一ギルドの長としては失格なのかもしれないが、アーカードの隆一を見る目は既に新米を見る観察の目ではなく、いつ自分に牙を見せるかもしれないライバルを見る鷹の目だ。


 結局アシッドアントの討伐は隆一を除く近接職を中心とした部隊を編成し討伐へ向かうことになったのだった。



お久しぶりです。

ようやく更新できました。


今回の肉に関する内容はあくまで筆者個人の見解ですので勘違いなきようお願いします。


肉くいてー……

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