表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/58

第24話 アリの巣壊し

家決定!


改修工事が終わるまで金を稼いでおこう! ←今ここ

 改装や修理は来週から作業が着工されるので、その間俺はギルド本部にある討伐系と言われる魔物を主としたクエストを何枚か受注してクエストへと出発する。


 難易度は低いが討伐総数が多いクエストのため、討伐証明部位だけメモを取ってギルドで買取ができないものはその場で焼却処分することにした。


「にしてもゴブリンにオークに、まんまファンタジーな世界だよな」


 手にした討伐対象の書類を見ながらつぶやく言葉に答えてくれるものはいない。


 現在隆一は国を出てまっすぐ南、位置的には銀龍煌と接敵した場所目指して駆けている。


 徒歩で数日かかる道だが魔力を纏わせた体で縦横無尽に駆け抜けていく。


 エインズワーグに向かう道でも使えばよかったのだが、途中の通行人に見つかった場合、まだ国に入国する前の状態で見つかるのと色々と仕出かしたあとで同じ行為を見るのとは幾分かインパクトに差が出ると考えたのだ。


 最も今の隆一は獣が作ったと思われる獣道をひたすら進み、道中出くわした獣や魔獣は草薙で斬って捨てている。


 血糊もつかない草薙の刀身は、時々陽光を浴びて光を反射させている。


 そのせいで遠目から視認した動物たちは光に興味を持ち近づいてくるのだが、隆一はそんな事情を知らないし、草薙も知っているけど話さない。


 ある意味、隆一に早くこの世界に慣れてもらうために行っている行動だと草薙は割り切っているし、隆一はこの世界の常識に早くも慣れ始めていた。


 無論異世界の知識など知る由もないので、過去の自分が綴ったとされる書記をひたすら読んで大事だと思われる知識については時間の許す限り暗記できるレベルまで読みふけった。


 ファルシナの知識と自分の調べ上げた知識と草薙から教えてもらう知識。これら三つが現在隆一の持ち得る最高峰の情報源だ。


 故に現在、図書館を探す必要などなく、必要な人物との正合は草薙に投げている状態だ。


 木々の間を縫うように走りぬけ、幾多の獣や魔獣を倒し続けること半日ほど、どれだけの速度で駆け抜けてきたんだと思うほどに早く目的地に到着できた隆一は、そこで自分が仕出かした惨状を目の当たりにする。


 そこは元々深く森が茂り、幾多の動植物が住んでいたのであろう。


 銀龍煌を転移した際、魔法陣の展開先を地面から広範囲に渡り術式を組んだ為、恐らく地面ごと銀龍煌を飛ばしてしまったらしい。


 クレーター状に広がる元森の光景にしばらく唖然とし、その視線が自然と下へと向く。


 そこにはクエストの依頼にあった大型のアリと思われる集団がコロニーを建設していた。


 ある程度深く地面がえぐれているため洞窟のような穴がそこかしこに点在し、それら全てにアリが出入りしていることからそれらの穴全てがアリの巣なのだと解る。


「正直見ていて気分のいいものじゃないな」


 軽く口元を抑えながら見ている隆一の視線の先には、おそらくは銀龍煌のウロコでも探しに来たのであろう冒険者や商人たちが、アリの集団によって肉団子にされている光景だった。わずか数日の目撃談でここを探り出して探しに来るとは冒険者やるな!と言いたいところだが、目の前の冒険者たちは肉塊と化しているため伝えるべき相手はいない。


 人の命をなんだと思っているんだ。


 路地裏や訓練場で行った自分の行動を棚に上げて隆一は吐き捨てるように言う。


 隆一は即座にコロニーを焼き尽くそうと魔力を放出しようとするが、その魔力は中々思うように固定化されない。


 おそらくは破壊した銀龍煌の龍鱗の破片が至るところに点在しているためであろう。


 肉団子にされている冒険者の中には魔術師らしき風貌の者も見受けられるため、おそらくは後方の支援ができないまま数に蹂躙されたのだろう。


 見たところアリの中でも働きアリと思しき種類の他に、岩のような表皮を持ったアリも見受けられた。


 おそらくディフェンスがそのアリでオフェンスが働きアリといったところか。


 他にも種類はいるのだろうが、目指できる範囲には存在しないのでおそらく女王アリの護衛にでも回っているのだろう。


 そんなことを考えていた隆一の視線は、洞窟へと今まさに入っていくアリの集団に向けられた。


 冒険者の身につけていた武器や防具の他、商人が抱えていたであろう商品がアリ達によって洞窟内部へと消えていく。


 それらの商品の中に奴隷と思しき数人の人間が入った檻が含まれていたのだ。


 アリ達も、檻の中にいる人たちを肉団子にすることはせず、知能が低いのか商品の中に紛れていたという理由だけで一緒くたにされている可能性もある。


 奴隷制度のある国じゃモノとして扱われているのを知っているだけに隆一は何とかしてあの奴隷達を手に入れる方法はないか模索する。


 手っ取り早いのはアリ達を全滅させて全てを頂く行為。


 しかし、上手く順番を守らないと檻の中の奴隷達が死んでしまうかもしれない。


 ならばどうするか。最初に助け出すのは勿論ダメだ。


 隷属契約という契約を結んでいない奴隷の行動は束縛することができず、持ち主以外の人間の言うことなど聞くわけがないとすスライム飛行中に草薙から聞いている。


 故に最初に奴隷達の居場所を探し出しその部屋を魔法で隔離、その後ゆっくりとアリの巣を駆除する。


 確実に倒すためにはなるべく一箇所に集めてから仕留めたいのだが、魔法の行使に多大な魔力を消費するので、無尽蔵に沸かれた場合は俺自身の魔力量がもしかしたら尽きてしまうかもしれない。


 おそらくないだろうがそういう考えも想定して隆一はアリの巣駆除の作戦を考えていった。




『檻の中:アリサ・ミズーリ視点』



 私はここで死んでしまうのだろうか?


 栄えあるエインズワーグの上級貴族の一員だった私の生家は、とある悪質な商人の手により一転して借金に塗れた悪辣な家庭環境へと変わってしまった。


 両親は懸命に借金を返済すべく方々へ金策に周り、残された兄弟も出稼ぎや冒険者稼業を通してお金を稼ぐ日々を送る羽目になってしまった。


 しかし、両親は無理がたたって病気に、兄弟たちも私を含めて奴隷堕ちか家を捨てるしかなくなったしまった。


 女である私は愛玩奴隷として他国の高級娼婦として連れて行かれる途中にこの悪夢の惨劇に出くわしてしまった。


 目つきのいやらしい奴隷商の視線に耐えながら、明日をも知れぬ我が身を一緒に連れてこられた妹のアリシアと共に震えて待つ。


 幸いにしてアリシアも私も未だ純潔は奪われていない。なんでも処女であることこそが私たちが高価な売り物として扱われる条件なのだそうだ。


 どんな変態に買われてしまうのだろうかと、もはや枯れたといってもいい涙の筋を、妹に見せまいとアリシアをキツく抱きしめて檻の中央で震えていると、突如馬車が大きく揺れて姉妹二人檻の中で激しく揺さぶられ、所々ぶつけてしまった。


 薄布一枚かけられただけの私たちは、鉄製の檻にぶつけた手足をさすりながら覆いが取れたことにより、周囲の状況を知ることができた。


「ああ……」


 知らなければよかった。と激しく目の前の光景をみてそう思った。


 おそらく護衛として雇っていたのであろう冒険者が数名、巨大な昆虫型の魔物、図鑑で見た記憶が正しければ『蟻酸蟻アシッドアント』の兵隊と交戦しており、私を売ろうとしていた商人はすでにアリの手によりその身を肉団子状に丸められていた。


 必死にアリシアをかばいながら、私は吐きそうになるのをこらえて冒険者に助けてもらおうと声を出そうとしたが、目の前の冒険者たちも次々と湧いてくる兵隊に手が回らず、魔術師と思しき男性は必死に魔法陣を展開しようとしているが、何故か魔力が体外へ霧散し形にならないのか杖を振り回しながら怒鳴り散らしている。


 そんな後衛に背後から本来拠点防衛用のアシッドアントの上位種『ロックアント』がその前足についた盾にも槌にもなる岩の塊を魔術師に振り下ろして一気に戦線の状況を変えた。


 撤退どころか潰走すらすることができずに冒険者の人たちも奴隷商人と同じ結末をたどることになった。


 アリたちは私たちの入っている檻を冒険者の身につけていた武具や商人が運んでいたと思しき積荷とともに、日の入らない倉庫のような場所に置いていった。


 必死に妹を庇い身を固めていたことから、調度品の一種だと思われたようだ。とにかく今の状態は死にはしないが助かりもしていない状態だ。


 このまま捨て置かれていたらきっと飢えて死んでしまうだろう。


 そうじゃなくても叫んで助けを求めたらアリにバレて肉団子にされてしまう。


 道具もない、力もないただの小娘が二人、どれだけの知恵を絞ったところでこの先に待ってるのは絶望だけである。


 目の前からアリたちが消えた途端、同じ檻の中に入っていた他の人達が小さな嗚咽を漏らし始める。


 奴隷とは違い、もはや生きる希望も可能性も絶望にあるのだ。泣いてしまうのはしょうがないだろう。


 魔術師と思われた人が魔術を発動させられなかった事から考えると、きっと魔力を拡散させる何か、もしかしたら龍族の頂点に立つ一匹『銀龍煌』の龍鱗が辺りに点在していたのかもしれない。


 高い魔術無効化能力を持っているその龍鱗は、一枚あるだけでエインズワーグの上層区に一軒家を建てることが出来るだけの価値がある。


破片を一つでも見つけたのなら周囲にもっとあるはずだとあの強欲な商人は考えるだろう。そうでなければ蟻酸蟻の巣に迷い込むはずがない。


 いつ現れたのかは定かではないが、アシッドアントは安全と思われる区域でのみ巣を作る習性があると本で読んだことがある。


 銀龍煌の龍鱗による魔法無効化範囲内なら、ロックアントやナイトアントなどの近接戦が得意な上位種の独壇場とも言える。


 アシッドアントの蟻酸でさえ近接職の冒険者には荷が重いというのに、上位種が量で来たら災厄級の驚異になってしまうだろう。


 誰か遠目にでも気づいて国に伝達さえできれば、討伐隊が組織されて助け出される可能性があるが、アシッドアント達の一番楽な駆除の方法は毒性のある煙を洞窟内で充満させて燻り殺すことだと聞いている。


 勿論人体にも有毒なので、それをされた場合は私たちも死んでしまうことだろう。


 もはや救いはない。


 アリシアを抱きしめて二人は静かに目を閉じていつ来るか知れない救いを待つことにした。



『龍ヶ崎 隆一視点』


 とりあえず魔力が普通に使える場所まで下がり、松に似た木から太い枝を一本拝借し、即席の松明を作成する。


 生活必需品のタオル関係はもったいないから使いたくない。故に松脂を出すようならそれで代用してしまおうというわけだ。


 魔力を高めて循環させた魔力が体外へ霧散しないように気をつけて洞窟の一つへと侵入する。


 酸素濃度とか調べたいが、やり方がわからないしアリが生活できているなら空気は大丈夫であろうと仮定して行動している。


 洞窟内の見取り図を頭に思い浮かべながら、奴隷達が監禁?されている場所を目指して周囲のアリ達をステルスキルしながら奥へと進む。


 簡単に言えば体内で循環している魔力を一瞬だけ足に集中させ、瞬足で近づき首を刎ね、頭を返す草薙で更に断ち切ることにより、昆虫特有の首が離れても動き続ける行動を行わせないことを主眼としている。


 無論、複数巡回している場合もあるので、その時は魔力にモノを言わせて一撃でアリを氷漬けにして破壊していく。


 鳴き声で仲間を呼ばれないように頭だけは必ず破壊するように徹底する。

 

 先程蟻酸が体内から出ていて地面をとかしていたので、念には念を入れて行っているのも一つだ。


 両手を岩のようにしたアリ等もいたようだが、洞窟内ではまだその姿を見ていない。


 兵隊アリなら拠点防衛用といったところだろうか? 巡回?をしているアリは通常個体のようだし、用途ごとに統制がとられている様は訓練された兵隊を彷彿とさせる。


 意思疎通のたぐいはできそうにないから話すことすらせずに出会い頭に殺していくけど。


 近い場所からしらみ潰しに部屋を覗いていくが、いくつかはアリの餌置き場のようで肉団子が足の踏み場所もないくらい散乱していた。即座に魔力に物を言わせて火葬してしまい、灯りと熱気で異変に気づいたアリ達が何匹か押し寄せてくる事態になった。


 とは言っても所詮は兵隊蟻なので、素早く頭を凍らせて胴体と切り離す作業に移る。


 この間数秒の出来事だ。魔力を無駄に消費してしまっているが、体内の魔力は依然有り余るほど湧いてくる。


 さすがは女神と神のお手製の体だと生身の肉体こそないものの自身の肉体の凄さに感銘を受けてしまう。


 そうして再び奴隷達を探すこと幾ばくか、そろそろ全て回ったのではなかろうかというところで兵隊蟻達が列になって冒険者や商人のモノと思われる武具や商品、それに野生の魔獣や獣の肉類を捧げ持ちながらある一点に向かって隊列作って歩いていくのを発見した。


 どうやら女王蟻の場所へ向かっているようで、持っているものから戦利品の報告にでも向かうのだろう。


 そんな中、ようやく隆一は檻の中に囚われたままの奴隷達を発見することができた。


 すぐに助けに行きたいところなのだが、闇雲に突っ込んでいったら奴隷達の身が危ないし、こちらも無事では済まないかもしれない。


 しかし、あのままほっといてもアリ達の胃に収まるだけだろうし。


「よし、まずはアリを運んでいるアリたちとその他を分断しよう」


 空気中の水分を凝縮して氷を生み出す『氷結』と呼ばれる生活魔法を、魔力に物を言わせて部分的かつ広範囲に張り巡らせる。


「題して氷壁!」


 そのままなネーミングセンスだが、体内循環させていた魔力をフルに活用し、檻を運んでいたアリの目の前と後ろの隊列を氷壁で分断。


「そして俺が出ると!」


 身体能力を魔力で上げて駆け抜け、周りでごたついていた蟻共を一薙で両断し、素早くその身を凍らせる。


 銀龍煌の龍鱗がまだ残っている影響で、想像していたよりもうまくいかなかったが、檻と奴隷達は無傷のようだし結果オーライというやつだろう。


「さて、早速だが奴隷契約をしよう」


 目の前で檻を切り刻み自由にしてやった奴隷達を目の前に、意地が悪いほほ笑みを浮かべながら隆一は目の前で状況について行けず怯え震えている奴隷達に悪魔の手を差し出したのであった。




一ヶ月ぶりくらいの更新です。


一応ヒロイン枠に成り得るかもしれない新キャラが2名追加になる予定です。


野郎の出番が少ないのは筆者が男だからだという理由ではないのです!


後々ちゃんと出すんで!出しますので!


気長に読んで次回を待っててくださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ