第22話 木工ギルドと一人のエルフ
決闘じゃ(#゜Д゜)ゴルァ!!
(´・ω・`)瞬殺
気分転換に外に行こう! ←今ここ!!
冒険者ギルドから出た俺は、そのまま目の前の正門から出門手続きをして国の外へと出る。
無論今日の朝受けた採取系のクエストを終わらせるためだ。
「なんか気分転換でもしないと割に合わない」
チンピラとの一件ではつい熱くなってしまったが、これで大抵の輩は変にちょっかいをかけてくることもないだろう。
むしろこれで手を出してくるなら容赦なく始末することができる。
「無詠唱に無動作で魔道書の補助なしに術を発動させる。あまりの速さに何人それに気づく奴がいたかね?」
草薙の言葉に笑いつつ近場の森の中へと足を踏み入れてゆく。
今回採取する目的の物は火傷に効果があるとされる薬草に麻酔効果がある花を根ごと採取するという内容だ。
無論手持ちの巾着に土ごと入れれば済む話だが、最低採取数が十株と多いため、できればプランターに入れて持ち運べるようにしたい。
なので手近な朽木を使って簡易式で作ろうと思います。
「ギルドで採取用の道具一式は貸してもらえたし、細工用の道具は草薙と手持ちのナイフがあればどうにかなるか」
結構前に倒れたであろう巨木があったので、だいたい必要な分を目算で割り出し草薙を用いて一閃、さらに真ん中から割って二等分にする。
そしてある程度中を強引に風をドリルのようにして素手で削り取り、くりぬいた形にして中に採取した薬草と花を土ごと詰めていく。
本来なら個別の鉢に入れて持ち運ぶらしいが群生しているなら多少根が近くても問題ないだろう。
細かい工夫こそしていないが、形状としては大型のバナナボートのようになっていて、引っ張るために紐がくくりつけられている。
片手でそれらを一つずつ掴んで再び城門に向けて歩き出した。
「意外とすぐそばに群生してるもんだな」
採取場所は他の冒険者の目に止まらないように国から約一時間程のエリア。最初エインズワーグヘ来た時とは違う道を通り、ある程度森の深いところに現在いる。
行き自体は本人の自重してない脚力で飛ばしてたので気づいていないが、道中その速さに新種の魔物と見間違えられていたのを本人は知らない。
比較的大きい二つの手作りプランターを引きずる隆一の姿は入門に近づくにつれ目立ち始める。当の本人は気にしていないが、周りの冒険者は隆一が引きずっているのが薬草の入った手作りのプランターだとわかるとその運搬方法に驚いていた。
「また大層なものを、薬草をそういう方法で運搬してきたのは君が初めてだよ」
対応してくれた兵士の言葉に他の冒険者の運搬方法を訊いてみると、なんでも奴隷を複数連れて運搬させるのが普通らしい。
「奴隷なんているんですね。他国との距離も結構あるので大抵は国内の人間ですか?」
隆一の言葉に兵士は首を横に振る。
「残念な事にほとんどが国外から来た流民だよ。命からがらこの国まで来たもののそんな状態で生きていけるわけがない。貧民層、この国ではスラムと呼ばれている区画が非公認だがあってそこで暮らさざるをえないんだよ」
兵士はスラムの状態まで丁寧に教えてくれた。
「勿論治安も最低だし殺し強姦盗みに恐喝、特に女子供が真っ先に狙われてしまう。私たちも巡回しているが兵士たちの中でも貴族育ちの兵士は嫌悪していて、犯罪が起きてもスラムの住人なら見て見ぬ振りをする奴までいる。内緒だけどね?そしてこれが問題なんだが、彼らは階級人種性別を気にしない。ある種あそこ一つが小さな国のような体裁を持っていると言っても過言ではない」
奴隷はそこからさらに食いぶちがない人たちが身売りをした結果なんだよ。と兵士は教えてくれた。
「ありがとうございます。なるべく近寄らないように気をつけます」
隆一は兵士にお礼を言ってその場を後にする。
「そういえばこのプランターに車輪つけたほうが運びやすかったな」
隆一の呟きに答えてくれるものはいない。
夕方になって再びギルド本部内は賑やかになり始めていた。
隆一と同じように今日一日の成果を報告するために受付に長蛇の列が出来ているのだ。
「あら、リューイチ君ですね。今日の成果報告ですか?」
隆一を対応してくれたのは朝に見たコノカという狐耳の女性だ。
「午前の終わりに一回配達クエストの報告に来ていたんですが、ちょっと色々ありまして、とりあえず納品をお願いします」
そう告げてコノカに納品用に用意された台の上に小さく別に作った手作りの木製植木鉢が置かれていく。
あのバナナボートの枠には更に内側に個別に取り出せるように四角に作った植木鉢が組み込まれていたのだ。なんていう無駄設計。
「これはまた。手作りですか?」
バナナボート型の木枠をみたコノカが小さく笑いながら訪ねて来たので首を縦に振ることで答えとする。
「重量的に一人だと厳しいですがこれなら大量に運搬することもできますね。意外とこの国周辺の薬草は採取され尽くしているので遠くに足を運ぶことになり最近は供給不足になっていたんですが、これで少しは足しになるでしょう」
素直に賞賛してくれたので嬉しいが、コノカの目線はバナナボートに向けられている。
「採取するために必要ならギルドに譲りますけど。ていうよりもこんな不格好よりもそれ専門のギルドに似たやつを作らせれば良いのですは?」
隆一の言葉にコノカは残念ですがと前置きをして、できない理由を口にする。
「実の所、木工関係の仕事を頼もうにもその木工ギルドのマスターとウチのギルドマスターが大の不仲で有名でして。頼むに頼めないのが現状なんです。しかも今日の午後に何十年か振りの決闘システムを行ったようで、その時の魔術師が放った風で訓練場の天井にいくつか亀裂が入ったとか」
天井が壊れたのは知らなかったが、コノカは俺がその当事者だということも知らないようだ。
どうにかごまかしてクエストの達成報告の報酬と賭け金の回収を済ませてこの場を去ろう。
「なんでも小さな子供がしたことらしいですけど、そんなすごい子供がいるものなんですねぇ?」
コノカはこちらを見ながら納品物を数えていく。
キヅイテナイヨネ?
「はい。確かに品質納品数共に問題なしです。ではギルドカードの提出をお願いします」
ギルドカードに入金するためにコノカにギルドカードを手渡す。コノカは流れるような手つきでギルドカードではなく俺の手首を掴んで自分の手元へと引き寄せる。
それはあまりにも突然で対処が遅れてしまう。結果として彼女の胸の中へカウンター越しに飛び込むような形で身を乗り出す事となる。
「え? ちょっとコノカさん?」
隆一の言葉に耳を貸さずにコノカは自身の体の匂いを付けるかのように隆一の体を包み込み、耳元へと囁きかける。
「木工ギルドへの修理依頼が完了したら賭け金を支払いますからお願いしますね?」
はい、知られてましたー。
まぁ当然か、自分の担当した冒険者が起こした不祥事なら又聞きでも伝わって当然だろう。
「わかりましたから離してください。恥ずかしいです!」
年頃の少年としてはこの状況は嬉しさよりも羞恥心が勝ってしまう。故に彼は周りの目が血涙を流していることにも気づかずにコノカから離れようともがいてしまう。
その気になればコノカを振りほどくなど容易いのだが、顔に押し付けられている柔らかい感触と女性に対し力を入れてはいけないという倫理観から身じろぐことしかできない。
「あっ!」
仮面が外れそうになったため、慌てて抑えようと少し力を入れたところで腕がコノカの小さくはない、平均より巨乳であろうその胸に当たり、服の上からでもわかるくらいに揺れる。
そう、揺れた。揺れたのだ。
流石にコノカも羞恥心が勝ったのか慌てて胸を抑えるが、なんせまだ矯正用の下着すら存在しない時代である。揺れるに身を任せている女性にとってコノカの状態は『あー何かわかる』くらいの認識だろう。
周囲の男の視線を独り占めしてしまうコノカに対し、これ幸いと仮面をしっかりと固定することに全力を尽くす隆一。
双方一旦落ち着いて改めて相対する。
コノカの揺れていたのを見逃したのは後に残念がるが、これはまた別のお話というやつであろう。
「これがギルドカードです。とりあえず木工ギルドへ顔を出して自分が壊してしまった箇所の修理依頼を出してきます。結果はわからないですけど無理なら個人でどうにかします」
隆一の言葉に、まだ若干顔の赤いコノカがなるべく顔を合わせないように頷いてギルドカードの入金処理を済ませていく。
その後は何事もなく頬から赤い筋を流している男たちの間をすり抜けてギルド本部をあとにする。
面倒な話だが、自分で壊したのだからしっかりと自分で尻拭いをしなければ。
何故か今日だけでトラブルがブルブルするくらい発生したが、隆一は本日最後の仕事になるであろう木工ギルドへと訪れていた。
冒険者ギルドが国の看板のような佇まいなら木工ギルドは国を代表するかのような豪華な外装の建物であった。
さすがに上層区ではなく中層区に本部があるのはそこが商業区域だからであろう。
しかし建物の大きさは恐らく上層区にある城を除いて一番なのではないだろうか? 建物だけでも見た感じで四階建てもあるし、恐らくは手彫りであろう紋様が至る所に彫り込まれ、それらの紋様に色鮮やかな塗料が丁寧に塗られているためとてもカラフルだ。
「若干原色が強すぎる気もするが」
何故か赤を基調とした塗装をされており、見続けると目が痛くなってくる。白と黄色と青とかが混ざっていれば連邦軍のモビル○―ツに見えたのに。
「すいません。屋根の修理の依頼を出したいのですが?」
木工ギルドの内装も豪華で、パッと見ホテルのフロントやロビーを彷彿とさせてしまう内装だ。これだけの規模なら頷けるがもしかしてギルド長って木工ギルドに借金とかしてないよな?返済金返してないから強く出れないとか?
「いらっしゃいませ。失礼ですが木工ギルドのご利用は初めてでしょうか?」
受け付けてくれたのは愛想の良いお兄さんだった。ここでも木工ギルド用のチュートリアルのようなものを受けなければならないようだ。
しばらくお兄さんが用意してくれたお茶を飲みつつ木工ギルドで依頼するにあたっての注意点などを教えてもらい、実際に修理しなければならない場所の正確な住所を聞かれた。
「実は冒険者ギルドの訓練場なんですけど」
そこまで告げた途端に目の前の愛想の良かったお兄さんの顔が般若に変わる。
「あにぃっ!?冒険者ギルドの訓練場だってぇ?」
ドスの効いた口調に一瞬身構えるが、相手のお兄さんの雰囲気はあくまで般若なだけで怖さはない。
「決闘システムを用いての戦闘で魔法で風を起こしたんですが、勢いそのままで天井にぶつかってしまい」
隆一の言葉に、目の前の態度が豹変した兄さんは顎に手をやり考え込む。これが本当に考える人か。
ブツブツと一人の世界に入り込んでいた兄さんだが、不意に顔を上げて俺の顔を凝視する。
「あの?なんか付いてますか?」
今のところマスクとかで偽装しているからバレないとは思うけど。
「確かに君の魔力量なら防壁を張った訓練場に穴を開ける事が可能だろう。君が冒険者ギルド所属なのが悔やまれるが君個人の依頼だとしたら断るのは礼儀に反する。まったく冒険者ギルドが出した依頼だったら迷うことなく断っていたのに」
先ほど見てたのは俺の魔力量らしい。ファルシナと武御雷が手がけた俺の肉体譲りの魔力量は桁が違うのだろう。それにしてもこの兄さん良い目をお持ちのようで。
見た目は小さな丸眼鏡を鼻の上に乗せた温和そうな兄さんだ。木工ギルドとか明らかに体育会系の人物を予想していただけにこの知的な雰囲気に場違い感を感じてしまう。
髪だってこの世界でも初めて見た緑髪の長髪ロン毛でサラッサラだ。
でもそのせいかこの人の種族がなんとなくだが予想できてしまうのだ。
「申し遅れた。私はこの木工ギルドのギルドマスターにしてエルフ族のミーシャ・レイ・フレイティアという」
彼は呼び方は好きにしていいが、絶対にミーシャとだけは呼ばないで欲しいと告げてきた。なんでも、男なのに女みたいな名前と外見でその昔散々馬鹿にされていたとのこと。
ああ。冒険者ギルドと仲悪いわけがわかった。
冒険者ギルドのギルドマスターが原因だろう。彼が馬鹿にしていた張本人に違いない。
作業依頼はその後淡々と進み、作業開始日は明後日から行うそうで、とりあえず今から冒険者ギルドへ状況の確認に向かうらしい。
「ではまた修理が終わったら冒険者ギルドへ君あての使いを出す。修繕費用は追々の計算になるが、魔力付与などを行うので工賃が高くつく。支払いが高額になる可能性が高いので作業期間中に代金を稼いでくるといい。ここの木工ギルドでもクエストを発注しているので冒険者ギルドと並行して受けても構わないよ」
隆一はレイ(無難な所に落ち着いた)に別れを告げて木工ギルドを後にする。
隆一の去った扉を見つめて続けること数秒、レイは大きく息をついた。
エルフという種族は生まれながらに魔力の量が人よりも多い。
本来はエルフが多く住まう大陸に住んでいたのだが、およそ百年ほど前にその大陸を離れてこの世界の中心に位置するこの人族のいる大陸へと移り住んだ。
レイは自分がエルフだということを隠して生活していたが、当時の木工ギルドの人間が魔物に襲われているのを助けて以降、彼らの好意で木工ギルドへ森の民というエルフ族の知識を武器にギルドへ技術顧問として就任し、数十年ほど前に木工ギルドのギルドマスターまで上り詰めた。
昔から魔力量が村でダントツだったレイは己より魔力が高い生物を龍族以外見たことがない。
そして彼は今日、隆一という規格外な存在を前に魔力の大きさなど小さきことだと知り、彼の力を目の当たりにして深く考えることをやめた。
一言で彼の魔力量を答えるならば大海であろう。
尽きることのない水を体現するかのように全身くまなく魔力が循環されている。
無意識であろうが彼の流す魔力には無駄が一切ない。
高魔力保有者の多くは大なり小なり体に抑えきれない魔力が外部へと漏れ出しているものだ。
それは練度の差にもよるものだが大抵は持って生まれた資質に依存すると研究結果が出されている。
しかし彼の姿を見ていると、おそらくは資質ではなくもっと根本的なところで見落としがあるのではないかと思えてくるのだ。
それほどまでに綺麗な魔力を持った隆一は、終始私が見つめているのにも興味を見せずに話を進めていた。
エルフの特徴である先の尖った耳を見せると異様に興奮していたのが気になるが、彼は耳が好きなのだろうか?それも男女問わず?
謎が深まる少年だが、これから先きっと似たようなことで何度か依頼に来るに違いない。
根拠はないが自信はあるのだ。
さて。とレイは背後にいつの間にか控えていた秘書の女性に隆一が書いた依頼書を渡して処理するように命じると冒険者ギルドへ向かうために外へ出る。
久々にあのムカつくギルドマスター様に会いに行ってやるとしますかね?
プロデューサーさん!エ○フですよエ○フ!
男のエルフなんて誰得だよ!?
きっとこの作品もいつの日か腐海に沈むに違いない。
ようやく過去に来て色々と他キャラを出すことができています。
ある意味そこに至るまでの独り言を考えるのが辛くて……
他の作者さんもこんな苦行を乗り越えて今があるのでしょうか?
最初から設定ミスった感があるから今更だろ?
とか言わないで今後共よろしくお願いします!




