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第15話 その国の名は『エインズワーグ』

空の旅って暇なんだな…


デカ! 怖! あっち行けよもー!


銀龍煌⇒龍大陸へポイ! ようやく国に着いた! ←今ここ!

 さて、先刻説明した(自分に対して)生活魔法だが、実のところ魔法陣を媒介とせずに発動するタイプのものがほとんどである。


 魔力量が高くないと発動が難しい魔法がいとも簡単に使えるのには理由がある……らしい。


 正直な話、興味ないし魔力量高いから気にしないしと思ったものの、これから生活するうえで必須になるであろう知識なのでファルシナの記憶をしっかりと思い出しながら頭の中で反芻していく。


 まず、なぜ魔法陣なしの魔術を魔法というのかについて、魔法陣はその魔術を低燃費高効率で運用するために使用する、パソコンでいうところのCPUのような役割らしい。


 本来人間や他の生物が魔法を行使するためには術式の構築、媒体の発生、(火や水といったモノ)距離及び範囲の指定、組み込む魔力の質と量などといった要素を瞬時に計算し、構築して運用するのが遥か昔に行われていた魔法の運用形態だった。


 無論少しでも狂えば術式は暴走し、爆発や術式が術者に返ってくるリバウンドと呼ばれる現象、最悪術式に飲み込まれて際限なく魔力を吸い尽くされてミイラ化、死に至ることが珍しくなかった。


 それをなんとかしようと試行錯誤した結果、術式の構築を文字化し、ある一定の大きさの円陣に書き込む。そのさらに内側に距離と範囲の指定を書き出し、必要魔力量上限になったところで魔法が発動する。


 パソコンのプログラム言語に近いのかな?弄った事はないけどそんな気がする。


 こうしてある程度必要な要素を文字化した紙の束を書籍化したものを世間では魔道書。魔法陣を用いて使用している魔法は術式が目に見える形で発言するため魔術と呼ばれるようになり、それを利用する人々を魔術師。


 一方で魔道書を作成する仕事の人々を魔道士とも呼び、その中でも新形態の術式を生み出していく研究肌の集団を魔術を導く者として魔導師と呼ばれたり、新型の魔道書は別に『魔導書』などと呼ばれている。


 うん。文字じゃないとわからないよね?


 その中でも生活魔法というのは日常使うことの多い魔法の総称であり、正式には『純魔法』もしくは『単一魔法』と言うそうだ。


 例えば単純に火種を生み出したいなら火打石を使えばいいが、何かの拍子に必要になった場合などに使う非常用の魔法という位置づけだ。


 熊の解体に使った水も、本来なら川の近くか井戸の水を汲めばいいのをワザワザ生み出して使っている。


 構築する術式は必要最小限、使用する範囲も基本的に己の手のひらか指先の小範囲なので魔力の少ない人でも最低限の生活は行える程度の消費で使用できるのが生活魔法の条件だそうだ。


 熊の血を洗い流すために蛇口の水をひねるかのように水を生み出していた隆一はある意味大物だろう。


 本来ならあれだけの量を使えば魔力量の少ない人は干からびるレベルだそうだ。


 納得である。


 他にも多々生活魔法に関してのウンチクご高説はファルシナの記憶にあるものの、別に使えれば問題ないので思い返すこともない。


 熊肉をある程度干し肉にして国に向かうまでの食料にする準備に三日、生活魔法と現代知識と『解体新書』の力をもってすればもう少し短縮することもできたが、やはり生き物を殺すという食物連鎖に慣れるまでは気分が乗らず、作業自体は遅々として進まなかったのが現実だ。


 魔力の無駄遣いと言われようが誰も見ていないし、飲み水はほぼ生活魔法に頼る形で落ち着いた。


 途中、血の匂いか肉の匂いかわからないが肉食の狼や黒豹のような生物に襲われた。


 解体新書によると狼は『クレイジーウルフ』、黒豹は『デッドキャット』などと表示され、思わずどこの厨二設定だよとこぼすが、まぁ余談だろう。


 本来はこの世界固有の名前があるらしいが、どうやらこの解体新書、地球の言語で認識しやすい名前が列挙されるらしい。


 せめて正式名称がわかれば知識として蓄えて置けるのだが、そこは国に入れたら図書館なりで調べればいいだろう。


 ファルシナもこの世界をファルシナだけの知識でなく実際に目で見て感じて欲しいのだということは武御雷とあった時にファルシナの感情が流れ込んできたのでわかってはいる。


 ある程度の予備知識と目で見て体験して自分の血肉に変えていくことが効率よく生きていくために必要だろう。


 ともあれ準備ができたら後は出発だ。


 追加で手に入った狼と黒豹の毛皮も少し見栄えは悪いが手に入っているのでもし国に入れたら換金すれば金になるだろう。


 入国料なるものが発生すると草薙からは聞いているが、武御雷から貰った巾着の中にはこの世界でも使えるようにと宝石の類や小振りの金塊が包まれていたので、入国の際はこれで支払いを済ませる予定だ。


 そして出発から数日後、練習も兼ねての筋力強化、俺の命名『韋駄天』による脚力強化で障害物を避けつつ疾走、いやもはや『爆走』とでも言うべき速度で走り続けて数日なので、遠めに見えた国がかなり巨大な国なのだということは途中で気づいていた。


 遠めに見えたときは近くに感じていたが、近づくにつれ城壁が見えていても一向にたどり着かないのはおかしいと感じていたが案の定、見上げてひっくり返るほどに高い城壁にたどり着き、この世界の建築技術の凄さに驚く程であった。


 海沿いからここまでの距離は龍族の住む大陸からだとちょうど両者の大陸と同じくらい距離が離れている。


 ということは、この世界における大陸の縮尺はとても馬鹿げているくらい陸地が広いのか、それともこの惑星自体の規模がでかいのか、ファルシナの記憶にある地図では大陸間の海はどう見ても地球の海と同じくらいの規模としか言い様がない。


 つくづく異世界だなと感心して良いものかと思ってしまう。


「しかしこの国の入門用の関所は、城壁の大きさとは不釣合なほど小さいんだな」


 大型のトラックがギリギリ通り抜けできるかといった大きさだろうか? 


 この世界で言えばそこまで大きなモノがゴロゴロあるわけではいだろうし、この大きさでも十分だろう。


 隆一は個人で納得してたが、実際には大型トラックが通り抜けできる大きさの門は十分すぎるほど巨大なのだ。


 対比するものが城壁だから小さく見えるだけであり、この大きさなら通常の大きさの龍種でも十分に潜れるだけのサイズである。


 その入門用の関所だが、今のところ閉められている。


 それはもう厳重に警備と思われる人間が何十人とここに来るまでに哨戒のようにすれ違ったのだ。


 誰しもがすでに武器を手に取り、捕物のように四周を警戒しながら歩いているのを確認できた。


 こちらから話しかけない限り向こうも対応する気はないようで、完全に歩いている俺のことは無視して通り過ぎていった。


 もしかしたら見えてないだけなのかもと思ったが、相手の目線は確実にこちらを視認しており、若干訝しげな目線を向けてくるあたり、ちゃんと見えてはいるのだろう。おそらく俺が付けている仮面が原因なのだろうが。


 現在隆一は、顔全体を覆い隠すようにフードと仮面を装着している。


 仮面自体はそう凝った作りではなく、出発前に仕留めた黒豹の頭蓋と木を剥ぎ取り用のナイフで加工した不格好の仮面である。


 他に熊と狼の頭蓋も試したかったが、うまく顔にフィットしなかったため諦めた。それもこれも隆一の体が透けているからである。


ほぼ全身を衣服や手袋で覆っているものの、顔だけはどうにもできず、かといって動物の血を顔面に塗りたくるという猟奇的な趣向をするわけにも行かず、結果として骨と木で作った不格好な仮面を作成する羽目になった。


閑話休題


それはさておき、現在門が閉まっているのは恐らく銀龍煌が出現したからだろう。


龍族が俺の足で数日、通常の徒歩なら半月以上かかるような距離で目撃されたというのは相当に危ぶまれる出来事みたいだ。


 それもそのはず、ワザワザ大陸の隅で監視所まで設置して龍族の接近を監視している上に迎撃用の術式まで用意している周到さだ。


 龍族というものがどれだけ人類に対して驚異成り得る存在かということが理解できる。


 まぁ銀龍煌に限って言えば、目算で龍族の大陸の真ん中のあたりまで飛ばしたのでしばらくは戻ってこれないであろう。


 門の周辺には意外と人だかりができて皆門が開くのを待っているようだ。


 周囲にはワザワザ門から出てきて露天を開いている所もある。


 まぁ一度出たら再入門できるまで食料その他は現地調達になるのであろうが。


 しばらく干し肉しか口にしていないのでそろそろ口寂しくなってきたところだ。近場で換金できるなら宝石類と換金でもしてもらおう。


 行商人も何人かいるようだしまともな仮面とかないかなぁ?


「へい、いらっしゃい! 坊主、ここいらじゃ見ない服装だな?」


 この世界に来て初めて口を聞いた露店の店主は、こちらを見て不思議そうな顔をしている。


「東の方からやってきた。済まないが商品を見せてもらっても構わないだろうか?」


 見た目は子供でも舐められないように店主と対等な目線と口調を心がけて会話を始める。


 店主も、俺の身なりがそれなりに身奇麗なのを感じ取ったようで、特段気にするふうでもなく好きに見てくれと愛想よく返してくれた。


「それとあいにく貨幣について持ち合わせがない。物々交換になって悪いがこれで食物を適当に包んでくれ。それとこの仮面とナイフ、それと情報だ」


 店主は持ち合わせがないと聞いた瞬間に顔をしかめたが、さりげなく店主に握らせた宝石と金塊を見て目の色を変えて慌てて言われたものを用意し始めた。


「ほいよ。それで情報ってのは何が聞きたいんだ?」


 店主の言葉に、隆一はこの国に入るために何が必要なのかと今のこの状態がいつぐらいで解除されるのか? それと店主は商店を営んでいるかなど必要な情報と他愛ない世間話を織り交ぜて必要な情報を抜き出していく。


 会話が終わる頃には店主とも打ち解けてある程度の信頼を得られるようになっていた。


 元々人懐っこい性格が功を奏したのか日本人の特性なのか店主も気さくに応じてくれる内に、隆一はこの世界におけるこの国の立ち位置を理解し、そしてファルシナの記憶と道中で草薙が言っていた国の名がこの国で間違いないことを知った。


 現在の歴史は元いた時代から1516年前、ファルシナの記憶では魔王が生まれる5年前、そして勇者と出会う16年も前の時代だ。


 国の名は『エインズワーグ』、後に勇者を輩出しそして俺という魔術師を世に送り出した国の名だった。


 そして目の前の店主こそ、エインズワーグに数多いる商会の頭にして後に勇者を排出する家庭、ノイマン・ヒースクリフと呼ばれる男だった。





ここまで連続で読んでくださった方はありがとうございます。

初めて読んでくださった方ははじめまして!

不定期更新でモキモキ?ヤキモキ?してしまった方はすいません。

ようやく隆一が大剣に話しかけるボッチ回を卒業できました。

これからも気がつくと更新しているなという気持ちで軽く読んでいただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。


誤字脱字等ありましたら連絡いただけるとありがたいです。

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