第12話 最強種接近遭遇!
白い空間にスライムとぼっち! 武御雷参上!
青いお空白い雲! そして私は鳥になる!
空の旅って暇なんだな…←今ここ!
レッドドラゴン以降、特に何が起きるということもなく、異世界船スライム号に搭乗していた隆一だが下界の風景にも飽き、ファルシナの記憶から得た知識の整理も終わり、草薙を枕に青空を満喫していた。
ぶっちゃけヒマだった。
「こんだけ広いんだから国も総じて大きく増えるもんだと思うんだけど」
隆一はこの世界の大きさと人口の比率、何より未開地域の広さに違和感を感じた。
隆一のいた現代では戦争があっても総人口は増加の一途をたどっていた。ドーナツ化現象のせいで田舎の過疎化が進んではいたが、人口そのものは減ってはいない。
広い土地に対してここまで国の数が少ないというのはどういう意味なのだろうか?
「これだけ広い世界なんだからもしも魔王が生まれてもその存在が周知されるまでかなりの時間がかかるはずだろ?」
隆一の言葉に草薙は枕にされているためかややくぐもった声色で過去の隆一が調べた結果を話し始める。
「魔王自体の発生は時代周期的に大体把握されてるからな。その時期になったら自然と各国とも魔王発生の予兆有りとか御触れを出して警戒態勢を上げるんだ。
それに魔皇妃が魔王を産むときは一時的に空間に歪みができる。妊婦がお産でいきむ時に力を入れるのと同じ理屈だな。
その時ばかりは2柱がかりで貼った結界も大きく弱体化する。
別次元に移している魔力をその隙に消費して、生まれてくる魔王に移す作業を行うと世界規模で大地震が発生するんだ。
それに合わせ地脈を通して拡散される魔皇妃の魔力に当てられて弱い魔物が凶暴化する。それら一連の行動が発生されると魔王が復活する前触れとされるようになったんだ」
実際の状況に加えて本人に話を聞いた内容だから確実だぜ。
草薙は前にあの街の制作にある時の魔王に協力を仰いだと言っていたがその時に話を聞いたのだろう。
なんでも魔王というのはその結界から生まれた副産物的な存在らしい。魔皇妃から異次元に移されている魔力が限界値まで溜まった時、もしくは魔皇妃が魔力を物体にして生み出そうとした結果、偶然として魔王が生まれる時があるのだという。
実際には魔皇妃は短い周期で魔力を物質化させて生み出しているらしく、大抵は無機物として体外へと排出しそれらを加工して他の魔物たちが利用しているのだという。
しかし、人間で言うところの便秘のような状態にたまに魔皇妃が陥るとその規模が大きくなる。
結果、別次元に移されていた魔力に加えて魔皇妃が体内で蓄えまくった魔力で錬られ創られた存在は命を持ち自我を持って行動する。
それが一定の周期で発生するので魔王が生まれるのがわかるというからなんというか。
「女性で言うところの生理周期みたいなノリだな」
魔王が生まれるとその時別次元の魔力と魔皇妃本人の魔力がすごい勢いで消費される。無機物と違い、有機物である魔王はその消費が半端ないらしい。
「純粋な魔力の変換効率は最悪でどんなに効率化しても千から一取れればいいぐらいだそうだ。
それのおかげでこの世界は保たれてるといってもいいだろうな。そうでなければ神を淘汰できる存在がゴロゴロ排出されちまう」
なるほどと他人事(実際にはまさに他人事なのだが)のように相槌を打ちながら周囲を見渡すと、まだ距離はあるが巨大な積乱雲が海の向こうから行く手を阻むかのように白じろとそびえ立っていた。
上手く気流に乗れているとはいえ高度は随分と下がっているはずなので、これ以上高度を上げて逃げ切るのは難しい。
その上見る限り雲の層も分厚く時間で雲が散る気配もなさそうだ。
暇を潰すがてら、ファルシナの記憶から自分たちが落とされた地形から現在地を探してみたところ、ファルシナの記憶の中に『マッピング』という魔法があることを発見。
記憶だよりに魔法を行使してみたところ、ここが人族の大陸、それも大陸の最南端に位置している場所に落とされたことがわかった。
なんで海という他大陸への交易にむいていそうな場所なのに国の一つもないのだろうと訝しんだが、よくよくマッピングの魔法の範囲を広げてみると、その海の向こう側には龍族が支配する大陸が存在することがわかった。
それも距離にしてわずか1万2千km。
なぜか距離まで計算された状態で浮かんできたことに全力で無視することにして、地球で見ればかなりの距離があるのだろうが、この世界の常識からしたらすぐ隣のイメージなのだろう。
現に落ちて早々レッドドラゴンから驚かされたばかりなので、もしかしたら頻繁に人族の大陸に餌を求めてやってくるのかもしれない。
龍族もあれだけの大きさだ。餌も大量にいるだろうし恐らく大陸にいられる龍族は皆実力者で他の大陸にやってくるような龍族は生存競争で負けた類だろう。
風向きからして雲は龍族のいる大陸の方向から流れてきているのでこのままだとあの分厚い積乱雲は俺たちのようにうまく風に乗って飛んでくるかもしれない。
そこまで考えた隆一の視線の先、ちょうど雲と隆一の間に立ちはだかるかのようにいくつもの魔法陣が浮かび上がる。
咄嗟に草薙を手に警戒を取るが、ファルシナの記憶から浮かび上がった魔法陣は全て転移術が織り込まれたモノで、さらに内円には攻撃用と思われる術式が別で盛り込まれている。
術式の照準はこちらへと迫ってくる巨大な積乱雲。
魔法陣の輝きは時間とともに強大になり、空気の震えがスライムの中にいる俺にまで伝わってくる。
そしてそれは一斉に前方、積乱雲に向けて放たれた。
それは多種多様な色の虹。いや光線と呼べるものだった。
ファルシナの知識では『集団魔術』と呼ばれるものらしく、国家間での争いに頻繁に登場する戦略級の魔術だそうだ。
威力は高く、当たれば地図を作り変える必要があるほどの威力。
しかし魔術の発動に必要なのは最低でも上級魔術師が千人規模の4大隊。
しかも発動から発射までのラグが長く、連射は不能、その上一回放つと最低4千人強がお荷物に変わるハイコストハイリターン
それを積乱雲に向けて発射しようとしているのでこちらへの害はないと判断。少しだけ警戒を解く。
放たれた光線は幾重にもなる層を貫き、余波だけでその分厚い雲を破壊し散らしていく。
昔見たアニメで高出力のレーザーとか放つとあんな形に雲がドーナツ状になっていたな。
光線は直線にとどまらず、縦横無尽に駆け巡り雲を散らしていく。
この世界では規模は大きいとはいえ、たかが積乱雲に対して大規模魔術を放たなければならないほど自然への驚異が激しいのだろうか?
隆一のその考えは目の前で答えとなって現れる。
一筋の光線が不意に何かにぶつかってその光を消滅させる。
あれだけ巨大だった積乱雲もほとんど消えかけているのに、なぜか中央にやたら黒々とした密度の濃い積乱雲が存在し、その近くを通過しようとした光線が消滅したのだ。
それを皮切りに幾重もの光線が四方八方からその雲で形作られた球体へと軌道を変えて突撃する。
弾幕ゲームをプレイしているみたいだ。
多数の光線は黒い球体に近づくにつれ減衰し、雲に当たると弾けるように消えてしまう。
そして光線が球体に全てはじかれ消滅すると黒い球体は急激にその体積を膨張させて周囲を巻き込み大爆発を起こす。
それは遥か遠くにいるはずの隆一達の身すら巻き込んで盛大に乱気流を生み出し大気をかき乱す。
スライムも突然の気流の乱れから自身と隆一を守るべく最初の爆発の余波を使用してうまく軌道を上へと変更し、次の気流で流されすぎないように微妙な風の流れを掴んでその身を宙へと固定する事に成功する。
隆一はある意味答えにたどり着いていたのだ。
彼は考えていた。
『あの分厚い積乱雲は俺たちのようにうまく風に乗って飛んでくるかもしれないと』
ここは異世界で龍族は空を飛べるのだ。
それに気流に上手く乗ることさえ出来れば龍族や鳥類など軽々と海を渡り、長距離を移動できる。
目の前で隆一の想像は具現化してその存在をあらわにした。
『グルゥウオオォォォォォォ!!!』
未だ遠方にいるはずなのに雄叫びは風によって隆一の耳元まではっきりと聞こえてきた。
それは白銀の龍。
東洋の龍に似て特徴的な、流線のとれた細長いフォルム。
体に纏わせている細かくも荒々しい緑色の光は、先程の隆一のように体から漏れ出ている魔力の奔流であろう。
「正直この場でコイツに出会うとはつくづく数奇な運命だな」
草薙はしみじみとした口調で特に焦ることもなく淡々と告げる。
目の前の龍は雄叫びでわずかに残った雲を散らし、未だに展開を続ける魔法陣をギロリと睨みつける。
なんとなく魔法陣の裏にいるはずの俺の方まで敵視されているのは気のせいであろうか?
どちらかというと魔法陣二割俺八割くらいの勢いで俺を睨んでいませんか?
もしかしたら魔法陣を作ってあの銀龍にぶつけたのが俺だと思われているのだろうか?
もしそうなら断固抗議しなければいけないが、距離がかなりある上こちらから銀龍にコンタクトを取るすべが存在しない。
「草薙、さっきあの銀龍を知ってる感じだったよな?どういうやつなんだあの龍って?」
銀龍はこちらを確実に目視し、出方を伺っている。この隙になんとか逃げ出したいが、いかんせんスライムは気流に乗って航行しているだけなので今以上の速度は出しようもない。
「あの龍こそこの世界で最古参の4大竜王の一角『銀龍煌』だ。他の3体の龍族とは異なり比較的好戦的で向上心が強く、好奇心が旺盛、そして大食らいだ」
まぁ典型的なトラブルメイカーだと草薙は結論づける。
※銀龍煌視点
最近になって何故か創造主が頻繁に俺たちに接触するようになった。
なんでも近々俺を含めた龍族の中でも特に力の強い4匹の龍族(人間どもは勝手に4大竜王などと呼んでいるらしいが、最強なのは俺だけで残りの3匹は俺の舎弟だな!)を自分が新しく作る予定の世界に住まわせてやろうとか言ってきたのだ。
話によると今のこの世界では思うように創造主の威光を世に示すことができず、創造主の側近であるファルシナ様や創造主側近のエメルディア様が創造主よりも世に知れ渡っている始末だと言って我らの前で泣いている始末。
こんなのが我らを創った創造主だと言われても信じられないが、本能的に創造主の言葉には逆らえないのか、創造主の話の間常に平身低頭で耳を傾けてしまった。
人族や他の種族ならこういうのをお告げや神の声だというのだろうが、我ら龍族は強者であり最強であるという誇りがあるため滅多なことでは頭を下げることはしないのだ。
その我らの頭を下げさせた創造主が霞むほどの威光を放っているというのだろうかその二人の女神は。
気になった俺は体に積乱雲を纏って人族の住む大陸へとやってきたのだ。どれだけその2柱がすごいのかこの目で確かめてやろう。
しかし、途中の航路で慌てふためきながらこちらへと逃げてくる赤竜を発見、どうせ人族の強者にでも負けて逃げてきたのだろうと軽く殺気を放って注意をこちらへ向けさせると、その姿は特段傷ついた様子はなく、目に涙こそ浮かべているものの五体満足な体であった。
誇り高い龍族が涙目で人族の大陸から逃げてくる。
その様子に俺の頭は怒り一色になってしまった。
聞けば人族が我らよりも高い空を飛び、並の龍族を圧倒するほどの魔力を身に纏い、こちらをゴミを見るような目線で見下し去っていったという。
その光景を思い浮かべ、思わずその赤竜に尻尾ビンタを食らわしてしまった。
勢いよく海中に叩きつけられた赤竜は、涙目をさらにひどくしてビンタを食らわせた俺を非難の目で見つめてくる。
背筋をゾクゾクと嗜虐心が走るが、あくまで俺は赤竜が情けなくて叩いてしまっただけなのだ。
「誇り高い龍族の、それも純色種がそれだけされて逃げ出すとは何事か!」
俺の言葉に海上に浮かんでいた赤竜は身を縮こませながら謝ってくる。
おいおい、やめてくれよ。興奮しちゃうじゃないか!
などと行っている暇はない。
そんなに強いなら一言挨拶でもしてやらないと龍族の名折れだからな。
別にその人族に興味があるわけじゃないんだからな!
久々の更新です。
もしも待っていた方々がいてくださったなら申し訳ありません。
ようやく暇が出来ましたので久々投稿でありますれば。
気長に次回を待っていてくださると幸いです。




