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第11話 空の旅

白い空間にスライムとぼっち! 武御雷参上!


青いお空白い雲! そして私は鳥になる! ←今ここ!

 白い空間から放り出された隆一は、一面の青空を眺めながら真下へと猛烈な速度で落下していった。


 隆一本人は知る由もないが、その時の高度は地上から約30000Ftほど上空、速度は体感で当初60キロ程だろうか。どちらにせよこのまま地面とキスすれば正に出オチであろう。


 しかし手持ちの中でパラシュート代わりになりそうなものなどローブぐらいしかない。

 

 そのローブとて広げてもバサバサと音をたてるだけでまったく浮力を得られない状態だ。正に通気性抜群!


「草薙! 何か案はないのか!?」


 背負っていた草薙を胸に抱き、この窮地を脱するべく今までの経験則から導き出される回答は?


「ねぇな。やっぱり今回の出現位置も初見だし何より馴染みきってない力を無理に使おうとすれば余計な惨事を引き起こすぜ?」


 辛辣かつ無慈悲な言葉に隆一は言葉を失う。


「どうすんだよ!? 武御雷にあんなにドヤ顔で決め台詞吐いた手前こんなとこで車に惹かれたカエルみたいに死んだら歴代の俺の死因の中でもワーストじゃねえか!」


 ファルシナから流れてきた記憶の中には歴代の俺の死に様集のような区域があり、今までの俺の死に様が走馬灯のように思い浮かべることができる。もしも今回、こんな死に方をしようものなら間違いなく歴史の汚点になることだろう。


 そんな隆一の体が突如として形容し難い感触に包まれた。


 隆一は自分が包まれたのがスライムの体だと中に包まれてから気づいた。カビの生えた水饅頭と評していたスライムだが、まるで俺を守るかのようにその体を広げて俺を包み込んでいる姿はまるで子宮の中にいる赤子のようだ。


 見れば俺の服の表面にはうっすらと霜が貼り付きここがかなりの高度なのだとわかる。

 

 スライムにしても霜を張り付かせながらも体をグライダーのような形に変化させ、俺を包み込んだまま滑空を始める。


 その芸の細かさに思わず草薙と一緒に感嘆の声を漏らしてしまう。


「スライムって丸っこいのが定形だと思ってたけど、思えば粘性の不定形生物なんだよな。コイツの中って意外と暖かいことにも驚いたけどさ」


 隆一の言葉に草薙も同意する。


「この手の不定形生物はこの世界じゃアストラル系と喚ばれるゴーストなんかと同じで知能はそれほどじゃなかった気がするんだが、ファルシナが連れてきた生物のことだけはあるみたいだな」


 スライムは隆一を中心にグライダーの形をとり滑空しているが、完全に風に乗っているためにここからどこへ向かっているのかわからない。


 とりあえず命の危機を脱し心に余裕が生まれたので視線を下に、目の届く範囲で辺りを見渡す。


 遠くに海と思しき青い景色が広がっているのが見えるが、今自分が見ている範囲で町や都市、集落と思えるものは見当たらず、広大な平原、この高さからでもわかるぐらいに険しい山脈などあまり人の手が入っていない大自然が広がっている。


 なんでもこの世界の大きさは地球の3倍強! それだけの大きさに地球と同じくらいの数の人口しかいないらしいのだ。


 それならこれだけの自然が手付かずで存在するのも頷ける。


 そして隆一はその雄大な景色に圧倒されしばらくの間言葉が出なかった。


 地球だって自然はあるしテレビでだって見たことがある。しかし高い空の上で四方が緑一色という壮大な景色は迫るものがある。


「いい景色だな」


思わずそうつぶやいた。


 ファルシナが己の全てを賭けてまで守りたいもの。


 そしてこれから俺が過ごしてゆく世界。


 歴史の上では千五百年程昔に時渡りをしたはずだから感覚で言えば中世よりも昔、日本で言えば奈良や飛鳥時代といったところか。


 俗にゲーム風な言い方を言わせてもらえば「これからまだ見ぬ仲間や敵と、新しい出会いが俺たちを待ってるぜ!」的な描写が入っているだろう。


 そういえばもうゲームとかできないんだなぁ。


 感傷的になっている隆一だが、不意にスライムが内側だけをプルプルと震わせる細かい芸で現実へと戻させる。


 何事かと隆一が視線を下へと向けると、視線の先に飛び込んできたのは一匹のドラゴンであった。


 一口にドラゴンといっても地球で呼ばれていたドラゴンといえば寸胴な胴体に二足歩行で主に西洋で語られているような竜種と蛇のように長い前足になんか珠を持った東洋の龍。


 字的に表すと『竜』と『龍』で表すと不思議としっくりくる。


 今回のドラゴンはどちらかといえば『竜』だろう。


 西洋風のフォルムに色は赤。見た目でレッドドラゴンといえばそのままだがそれ以外の名称が思いつかない。


 おそらくあれがこれから絶滅すると言われている龍族と呼ばれているものなのだろう。


 レッドドラゴンは、しばらくは俺たちの真下で飛行していたが、自分の頭上に影が、俺たちがいた事によって発生した陰影がレッドドラゴンにかぶさったあたりでホバリングしつつ視線を上にあげた。


 無論ぱっと見ても本来なら高度的にはまだ小さくスライム自身も半透明だったためにそこまで気にならないはずなのだが、どうやら龍族というのは五感が優れているらしい。


 大きな鳴き声を上げたかと思うとこちらへ向かって飛び上がってきたではないか。


 普通に考えたら慌てるところでは済まないが、スライムに包まれている現在俺自身に攻撃手段はないし、なにより龍族も一定以上の高度から上には飛び上がれずにいる。


 これは空気が薄くなって来た事によって浮力が得られにくくなっていると言っていいのだろうか。少し前に授業で習ったところだから覚えている。


 この世界の物理法則が地球と同じなら火を吹こうにもここまで届かないし威力もしょぼいだろう。


 しかし上空にいる俺たちにとってはこれ以降ずっとレッドドラゴンに付きまとわれるのは勘弁して欲しいところだ。


あくまでも今の状態は飛行ではなく滑空であり、上昇気流に乗って飛行できているものの高度自体は緩やかに下がってきているはずである。


どうにかしてあのドラゴンを撒くかしないと近寄られたら一貫の終わりだ。


「とりあえずファルシナの記憶を漁って役に立つ力を把握するか。力が馴染むまでまだ少し時間がかかるだろうし」


 隆一の言葉に草薙も同意し、スライムはわずかに体表を波打たせることで答える。


                

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


 それから2時間ほどだろうか。空の上にはスライムが光り輝いて飛んでいる。


 正確にはスライムの中にいる隆一が光り輝いているのだ。


 その光は赤く、ファルシナから流れ込んできた力の奔流を思わせるように体の表面を覆っている。


 それはまるで界○拳を会得したサイ○人のようにたまに激しく時に静かに赤い光を身にまとっている。


 それは下方にいるこちらに追随してきたレッドドラゴンにも見えたようで、一際大きな鳴き声を上げたかと思うと身を翻して一目散に来た道を引き返していく。


 隆一がこの赤い光を纏うきっかけになったのは、ファルシナから受け継いだ記憶の中に身体強化の方法が残っていたからだ。


 白い空間でファルシナの力が体の表面を覆っていたのをイメージして身体強化を試してみたところ、今の状態で落ち着くようになった。

 本来なら見えない力がうっすらと体を覆う程度のものらしいが、この世界で魔力と呼ばれる誰もが体の中に有している力が隆一のように異常に多いとこのようにスーパーサイ○人になってしまうらしい。


 この世界の調整を行っていたファルシナは、こういった事柄に関して随分と深い知識を持っていたらしく、オリハルコンやヒヒイロカネといった特殊な合金の比率や錬金術のように細かい配合を用いる術式の知識を膨大に取得していた。


 草薙は、残念ながら物理先生に特化した知識だったので、こういった知識はかなり重宝する。


 それにこの世界の貨幣経済の仕組み、各国の分布図や勢力構成なども知識の中に含まれていたので今自分たちがどこにいるかも知ることができた。


 この世界は人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、巨人族、魔族、そして龍族という7つの代表的な種族が広大な3つの大陸にそれぞれ国を持ち生活をしているそうだ。


 その中でも今の隆一のようにスーパーなサイ○人になるほどの魔力保持者は人族の中だと大魔道師と呼ばれる人や勇者など一部の例外、エルフ族ならばハイエルフやエルダーと呼ばれる最古のエルフなど上位者、獣人族やドワーフ族、巨人族は己の肉体こそ最強!魔法なんぞ弱者のやる事と豪語しているらしく一部の変人を除いて魔力は低いらしい。


 中でも龍族、そして魔族はすべての種族のかなでも平均魔力が最も高い種族だそうで、どんな最低レベルの龍族、魔族でも人族でいうところの王国宮廷魔術師レベルらしい。


 知識を引き出した隆一は思わず頭を抱えてしまった。


 これだけの力を持っている2種族のうち龍族が絶滅する理由がわからない。


 普通に考えれば子供ができないで少しずつ個体数が減るとかそういった理由なのだろうが、ファルシナの記憶によるとゼウスマキナが強い個体を根こそぎ囲ったのが原因らしい。


 囲うとは言葉通り、ファルシナが各種族を争わせ、ゼウスマキナのご機嫌取りを行っている傍ら、それをいいことにゼウスマキナが強種族である龍族、それも最強種と呼ばれていた4大竜王を創造主の権限により強奪、おもちゃにしていたのだそうだ。


 ファルシナはそれを知りつつもまだ他の龍族が残っているので心配いらないと判断し、ゼウスマキナ…もうめんどくさいからゼウスでいいや。の行っている行動を見て見ぬふりをしていたみたいだ。


 結局大抵の歴史はそこが破局点の一つとなり、強者を望む龍族は強い龍がいなくなったことで生殖能力が低下し、数を減らしていったのが絶滅の真相。


 これってゼウス説得すれば終わるんじゃね?


 隆一はそう考えたが、ファルシナも意見具申は幾度も行ったようだ。


 その全てがゼウスの一声「ヤダ!」で潰されているのは泣くところだろうか、笑うところだろうか?


 とにかく今の現状ゼウスの意識を龍族からそらせる必要がある。


 ファルシナは後半そうやってゼウスの魔の手から龍族を保護しようと画策したようで、それらの知識も探せば出てきた。


 色々と話が脱線してしまったが、魔力が高いのは強者の証、そういう認識で間違いないようだ。


 さきほど逃げ出したレッドドラゴンも、龍族の一員だけあって普通なら圧倒されて終わるだろうが、こちらはファルシナと武御雷の力を持っている身だ。ぶっちゃけて言えば生身の肉体がないだけのこの体は純粋な力の塊とも言える。


 神の一端を宿した力の塊が人の体をしているのだ。


 人の体をとり押さえ込んでいる力をこのように開放すればそりゃまだ成長期のレッドドラゴンなど逃げ出すに決まっている。


 ファルシナの記憶と草薙の知識によれば、最低でも今の俺の強さは龍族なら古龍種、それも太古から存在することをファルシナに認められた最古種のドラゴン。魔族なら当然魔王。ではなく魔王を作り出すためにファルシナともう一柱の神工神が創り出した魔王生成のための母体。


 名前を『魔皇妃ヴァルプルギス』と言う、魔王を生むためだけの魔力そのものの存在。その魔力の大きさに作った本人の2柱が慌てて次元の狭間に魔力の大半を常時封じ込める結界を貼ることでその範囲内でのみ存在を許された魔族の最強種。


 俺は単純な魔力量ならその2種を相手取っても対等に渡り合える存在らしい。


 我ながら壊れ仕様な存在になったものだ。


 レッドドラゴンが逃げ去り、手持ち無沙汰になった隆一は、ファルシナの記憶を漁り、草薙と話をしながら今までの俺がたどってきた道筋を主観で見てきたファルシナ、客観で見てきた草薙の双方の情報で補完していくのだった。


ようやく異世界ものらしく旅立ちました。


まったりと更新していきますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。


誤字や脱字がありましたら気付き次第対処します。


どうぞよしなに

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