第10話 そして過去へと遡る
大剣に名前つけてスライムがプルプル!
この女神嘘の味がする!
そして過去へと遡る ← 今ココ
光の中に隆一はいた。
後ろを振り返るも通ったはずの扉はなく、周囲には光り輝く自分の肉体と震える体でこちらへと近づこうとしているスライムがいる。
体が徐々に消えていく一方、体の中に何かが入り込んでくる感覚がある。それは不快な感覚ではなく、むしろ馴染むという感覚が強い。
ファルシナから流れてきた赤い光は既になく、次第に肉体から出てくる光も収り、全ての光が体の中へと消えていった。
後には俺の他にスライムと白い空間が残るのみだ。
体の中に馴染んでいく感覚は未だに続いているがおそらくは赤い光、ファルシナの力であろう赤い光の奔流が体の中を巡っていく感覚がある。
それはまるで体の表面を撫で回されるような感覚だ。
くすぐったいという感覚があるがそれも一時的なものだとなぜかわかる。それに体の中に感じる力の奔流を無意識に感じ取れてしまう。
感覚が鋭敏になったと考えるべきだろうか?
周囲が白い空間にいるので目を開けても閉じても目の前が白か黒かの違いなので変わらないと考え、ならばと目を閉じ自分の体の中にある力を感じてみようと意識を向けてみる。
こういうのは漫画やラノベで似たような場面を真似てやってみる。
意識を内側に、体内を巡っている力に傾けるイメージを思い浮かべる。
力が駆け巡る感覚はまるで血管に血が流れているように全身を末端まで浸透していくような心地よさを感じる。
これは俺自身の力だろう。
それとは別に体の表面を撫で回す感覚はファルシナの感覚が俺の身体をコーティングしているかのようだ。
そして体の奥底、核とも言える部分に今度は青色。意識的にそう表現しかできないが自分の色が白ならファルシナは光の色と同じ赤、ならばこの青色の力は恐らく武御雷の力であろう。
俺の力が血ならばファルシナの力が体、武御雷が心臓といったところか。
俺とファルシナの感覚が強すぎて隠れがちだが、奥底で確かな存在として自己主張を続けている。
「これが今の俺か。なんか他人事だな」
「その通り。他人事だよ今はまだ」
誰ともなく呟いた俺の言葉は、続く返答に重ねられた。
思わず目を開けた俺の目の前、どうにも時代錯誤な神主姿の男が仁王立ちで俺の姿を見ている。
「あんたが武御雷、様か?」
不審げな俺の言葉に相手は苦笑いで応える。
長髪を頭の後ろで一本にまとめて束ねたちょんまげロングに顔は黙っていれば美形、しかし笑顔は苦手そうだ。
それを肯定と受け取り、今頭の中で綯交ぜになっている記憶から得た情報を確認していく。
「ファルシナの記憶が頭の中に入ってくるが、これに対しての肉体的や精神的な悪影響はあるのか?」
「ない。必要な記憶以外を消去した上でファルシナは君に力と己の全権を譲渡した。彼女はこの世界から消え、創造主『ゼウスマキナ』から与えられた力の一端を君に移した」
武御雷の言葉はファルシナから流れ込んできた力とやらのことだろう。もしかして神の一端をこの身に受けたということか?
「君の考える神というのならば私もファルシナも正確には違うとしか言い様がないな。私自身も八百万の一員ではあるが、その中でも私個人の力は、そうだな社会の序列で言うならしがない課長クラスといったところか。中間管理職とでも言えばいいのかな。ファルシナとは君の転生予定だったときの縁で知り合ったが、今回の件の詳細はファルシナから聞いて把握しているし、君自身ファルシナの記憶を受け取り把握しているだろう?」
武御雷の言葉に頷き、自分の身体を改めて確認する。
「本当に俺の体はなくなったんだな?」
力が入ってきた感覚はあっても、ファルシナの力が肌の表面を撫でるような感覚があっても、見ている限り肉体が受肉した感覚はない。
うつむき口にする言葉には絶望や負の感情はない。ただもう帰ってこないという現実がファルシナの申し訳なさの感情と共に流れ込んできていたからだ。
ファルシナの感情も記憶も受け継いだ俺には、あの時ファルシナのとった行動の理由も全てが理解できた。
武御雷は何も言わずに俺の頭に手を置いた。
「肉体が失われてもお前の魂はここにいる。力も与えて俺も手を貸してやる。ゼウスマキナ様は確かにこの時代ではファルシナの管理する世界を見捨てて別の世界を創造した。それは過去へ行っても変えられない出来事だった。俺自身ファルシナに聞かされるまではこの世界の実情を知る由もなかったんだ」
頭をクシャクシャと撫でながら、武御雷は真剣な顔で俺を見つめる。
「だが今回の歴史は違う。俺は気づき、ファルシナは託し、お前は歩みを変えた。これは、この世界線は今新しい過去へと向かっていると言ってもいい。
『if』にすがる今までとは根本が違う世界を過去へと戻り作ることが可能になった。
今から過去へ向かうに連れ一時的にだがゼウスマキナ様の加護が全盛期に近い勢いでお前の内に流れ込むことが予想できる。抗うな感じろとは言わん。神の一端をその身に宿す者としてまずはファルシナの力を制御して見せろ。その間に時渡りで開いた時間軸に俺が細工をしておいてやるから落ち着いたあたりで深奥に眠る俺の力を触媒に俺に交信をかけてみるがいい」
詳しい知識はファルシナの記憶に眠っているはずだからそれを参考にしろと武御雷は一気にまくし立てる。なんでも強引な時渡りの術式介入は武御雷の力を持ってしても短い時間でしか存在を維持できないのだそうだ。
武御雷曰く、世界線への介入は八百万の中でも中級クラスの神なら誰でもできるが時間軸に関する領分は上級クラスの神が統括して管理しているらしく、本来ならファルシナ自身でも実現はできないらしい。
なぜ何回も時間軸を移動できたかについては、ゼウスマキナから時間軸への干渉を調整の力の一端で借り受けていたからだそうだ。
『管理者権限』とでも言うのだろうか?
しかし行使する力が過去へ遡るほど力の消耗が激しいらしく、今回のように何千年単位の移動はファルシナの力を大きく落とすことになるのだそうで、今回は俺の力の一端とファルシナの最後の力で補い過去への移動を果たしたのだそうだ。
武御雷は一通り話し終えた後、ふと思い出したかのように和装の袖口から1つの巾着を取り出し隆一へと手渡した。
ぱっと見ても布の切れ端で作ったようなどこにでもある巾着袋だ。中を見ても何も入っていないし何に使用するのかもわからない。
?を浮かべる隆一に、武御雷は巾着袋の使用法を教え始める。
話を聞くところによると、この巾着袋はどうやらゲームで言うところのアイテムボックスなるものらしい。
どう見てもただの巾着袋だし、すでに手元には前の俺が使っていた収納袋があるので正直ダブリアイテムな感じが否めない。
武御雷自身もそれはわかっているのか、使用法は収納袋と同じだが収納力は巾着の方が多いらしく、過去に遡る俺のためであろう生きていくのに必要なサバイバルキットと言えそうな各種調味料や器具、そして何故か解体の書という今から向かう世界にいる生物の解体方法が記された書物、そしてそれを利用したレシピ集が収められていた。
「まぁ、これだけあれば生きていくのに困るまいよ? 何かあったらまた交信が可能になった時に教えてくれればできる限りの支援はしよう」
武御雷のその言葉を最後に再び視界が白く染まっていく。
どうやら目的の過去へと到着したらしいな。
「これからは俺のやりたいようにやるだけだ。他の誰でもない俺だけの歴史を作る」
隆一の言葉に武御雷の笑い声が聞こえる。
「やってみせるがいい。お前の生き様がゼウスマキナ様の御眼鏡に叶うのならば新世界への道も開かれるだろうさ」
笑い声は遠ざかり、視界は白く音は止み、静寂に包まれた後しばらくして隆一は一面の青空に放り出された。
久々の投稿でございます。
コックリさんのOPをBGMに頑張って生きてます。
次回からは新章というよりも第1章の過去世界編に移りますのでよろしくお願いします。
ちまちまと3000文字くらいを基準に更新しているので内容が全然進んでいませんが、時期を見て再編集でまとめようと思います。時間があれば(^_^;)
誤字脱字等発見された場合はご指摘お願いします。
ここまで読んで下さり有難うございました




