初めて会った日のこと
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高校に入った私は、文芸部に入りたいと思っていた。
だけど見学に一人で行くのは躊躇してしまっていて、誰か本が好きそうな人はいないだろうかとクラスの女子の様子を窺っていた。
教室で本を読んでいた美月ちゃんを見て、私は一緒に文芸部に見学に行かないかと誘った。
美月ちゃんが読んでいるのがホラー小説と聞いて、私はホラーは読まないけれど文芸部ならホラーが好きな人もいるかもしれないね。と誘い文句を続けると美月ちゃんは一緒に来てくれた。
文芸部に見学に行ったら、そこに来ていたのが今の副部長と一緒に来ていた公平くん。
公平くんは、私たちが文芸部室に入って美月ちゃんの姿が見えるなり、そのまま動きを止めた。
私からしてみたら、部室に入ったら美月ちゃんを見たまま動かない公平くんがいたのだけれど、それまで部室にいた人たちからしてみたら、明るくおしゃべりしていた公平くんが、美月ちゃんを見て急にフリーズしたらしい。
先輩たちは公平くんを気にしながらも、見学に来た私と美月ちゃんに話しかけてくれた。
先輩たちの中にはホラー小説が大好きな人がいて、美月ちゃんと一緒に話し込んでいた。先輩はホラー小説を自分でも書いていて、美月ちゃんに文芸部誌を見せてもいた。
お気に入りのホラー小説を美月ちゃんと貸し借りしようという話がまとまって、美月ちゃんは文芸部に入ることになった。もちろん私も文芸部に最初から入るつもりだったから、美月ちゃんと一緒に入れるのが嬉しかった。
私たちの入部が決まったところで、公平くんが自分も文芸部に入部すると宣言した。
一緒に見学に来ていた今の副部長は「え?お前、本とか読むの?見学ついてくるだけって言ってなかったか?」と言っていたけれど「これから読むから問題ない」ときっぱりと言う。
その場にいる全員が、美月ちゃん目当てだと分かった。
公平くんは美月ちゃんに「『美月』って呼んでもいい?俺のことは『公平』って呼んで!」と話しかける。あまりにもあからさまな言動に、一緒に来ていた今の副部長が取りなすように「じゃあ俺のことも『彰吾』って呼んで、よかったら二人のことも名前で呼んでいい?他の1年生とも名前で呼び合ったらどうかな」と皆んなで名前呼びをすることでまとめてしまった。
最初は名前で呼ぶのが気恥ずかしかったけれど、今ではすっかり慣れた。どんなことでも慣れるものなのだ。それに安藤さんだった頃より、美月ちゃんと呼んでる方がずっと仲良くなれた気がしていい。
結局、文芸部にはその時の4人の他には今の部長しか入部しなかったけれど、ばらばらな性格な私たちが結構まとまって活動できているのは、名前で呼び合っているおかげもあるかもしれない。
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予想通り部長は、文化祭の新しい企画は難しそうだと言った。
「連休中に朗読の動画を見て、自分でも朗読してみたんだけど…僕には満足してもらえるような朗読は出来ないと分かった。残念だけど、自分の展示により一層力を入れる」
部長は悔しげではあったけれど、落ち込んではいないようで良かった。
私も自分の展示を頑張ろう。
だけどそれより先にテスト勉強がある。
中間テストまであと9日。次の読書会は2週間後だ。それまでは勉強を優先しよう。




