文芸部長からの報告
文芸部長はお昼休憩が終わる頃に教室へと戻ってきた。
だから私が文芸部長から話を聞けたのは放課後になってからだった。
「足立くんと話してきたけど、足立くん全然怒ってなかった」
文芸部長がそう言うのを聞いて、私はホッと息を吐いた。
「事情を説明して謝ってきた。足立くん前からいい人だと思ってたけど…なんかいい人すぎて本当に申し訳ないよ」
部長が眉を下げる。
「でも申し訳ないけど、公平くんが言いがかりつけたのが足立くんだったのは、不幸中の幸いだったかも…」
思わずこぼれたような部長の言葉に、私は罪悪感で俯いた。
私の様子に部長は慌てたように続ける。
「あ、…それにしても公平くんは何なんだろうね?なんであれだけで美月ちゃんって気づけるんだろう。公平くんの美月ちゃんへの嗅覚を舐めてたことが敗因だった」
文芸部長はそこで改めるように私を見た。
「美月ちゃんは読まないだろうと分かってたけど、まさか公平くんが部誌をしっかり読んでるなんて思ってなかったし、読んでも気づくわけないって侮ってた。ごめん」
部長は頭を下げると言葉を続けた。
「足立くんが疑われることになったのは、僕が選んで決めた場面のせいだ。あの場面を繋げたり、あそこで切るために『家がすぐそこ』なんて追加したから…。
それで個人特定出来ないようにしつつ、小説の体裁に出来たと思い上がってた。
でも公平くん以外は気づいていない。もしも不利益が発生したら僕が責任持って何とかする。絶対に」
部長の真っ直ぐな視線に、私はまた申し訳なさを感じる。
「うん…ありがとう。…それでいつ告白するの?」
後悔する気持ちはあるけれど、掲載を承諾したのは自分だ。だから部長一人の責任のはずがない。
だけど自分が書いたと明かさない以上、部長は一人で足立くんに謝りに行ってくれたし、その上私を気遣ってくれてもいる。それを心苦しく感じて、私は部長からの謝罪を逸らせた。
「うっ…」
部長は言葉を詰まらせて顔を赤らめた。
「絶対告白はする…。こんな無理まで言ったのに告白しないなんて言わない。告白は絶対する。
でも…。だけど…これ…あの。…無事に部誌を発行出来たと言えると思う?」
「穴を開けずに発行したよね」
「でもこんなトラブってしまった」
「でも足立くん許してくれたんだよね」
「それはそうだけど、でも、もう少し様子を見た方が…」
私は心の中で少しだけ苦笑しながら部長を睨むように見る。
「そうだよね。告白しなきゃいけないよね。そう言ってお願いしたんだから…。
…本当に、本当に告白するから…でももう少しだけ落ち着いてからにしようと思っていて…」
言葉を小さくする部長に私は微笑んだ。
「きっと上手くいくよ。応援してる」
「うん。頑張るから…」
そう言って赤くなった頬を押さえる文芸部長を見ながら、私はあの日のことを思い出していた。




