評価
「もしかしてダメル?私の母親と何の関係も無かったの?」
「・・・なかったよ」
「だから顔を良く覚えていないのね?」
「まあ、そんなところだね」
「でもそれならどうして私をダメルのところに預けたのかな?ダメルは人が好さそうだったから?」
「好さそうって」
「だって実際に、自分とは何も関係のない私を預かって、育ててくれたのでしょう?」
「そうだけれど」
「でもあの人は、ダメルには身に覚えがあったから預かってくれたんだって言っていたけれど、ダメルと他の人を間違えていたのかな?」
「それは、他の人と間違えたのではなく、私と男女の関係にあるって思っていたからだよ」
「え?そう言う関係ではなかったのよね?」
「なかったよ」
「あの人はダメル自身の事ではなくて、他の人との関係をダメルとだったって勘違いしていたって事?」
「いや。酔っぱらって道で寝ていたところを私の部屋に運んだんだ。女性が外で寝るのは危ないと思ってね。もちろん何もしていないよ?私はその日はアパートの廊下で、ドアの前に座って寝たからね。そして次の日の朝、様子を確認しに部屋に入ったら裸で寝ていて、慌てて上掛けを掛けたら目を覚まして、勘違いをされたんだ」
「それは、なんか、ごめんなさい」
「ローザが謝る事ではないけれど、こんな話を信じてくれるかい?」
「ダメルの事はもちろん信じるし、あの人はそういう事をやりそうな気もする。多分、ダメルの言い分を聞かなかったのでしょう?もしかして、そう言う事が何回かあったの?」
「そうだね。それからは酔って私の部屋に来て泊まって行ったよ」
「ダメルはその都度、外?」
「もちろんだよ」
「その、あの人の事、好きになったりはしなかったの?」
「私の部屋に来る時は、大概かなり酔っていたからね。ちょっと、好きになる暇はなかったかな」
「そう・・・でも、私を預かって育ててくれたのって、私があの人に似ていたからではないの?」
「似ていたも何も、顔を覚えていないくらいだよ?」
「やっぱり覚えていなかったのね」
「あっ、いや、ごめん」
「私に謝る事ではないわ。でも、美人で評判だったんじゃないの?私が言うのもあれだけれど」
「評判だったよ。でも、私の部屋に来る時は泣きながらの事が多くて、化粧とか崩れているから美人かどうか分からないし、次の日の朝は飲み過ぎだか泣き過ぎだかで顔が浮腫んでいたりするから、やはり美人かどうかは判断できなかったな」
「・・・なんか、あの人が私を預ける相手にどうしてダメルを選んだのか、何となく分かった気がする」
「え?どうしてだい?」
「酔っぱらっていても化粧が崩れていても顔が浮腫んでいても、いつも同じ様に接してくれているダメルなら、信用できたのかなって」
「・・・そうか」
「そうよ。でも何故ダメルは私をそのまま預かったの?あの人と再会したいとか思わなかったのでしょう?」
「再会を望んではいなかったけれど、迎えに来るかとは思っていたんだよ」
「どうして?」
「それは、子供を自分で育てずに人に預けて行った割には、その時の服装とか装飾品とか生活に余裕がある事を感じさせたし、貴族の出だと言っていたからローザもその都合で傍に置けないのかと考えたからね。恋人との間に生まれた子供を殺されたとも聞いていたし」
「その事も言っていたの?」
「酔っぱらってね」
「そう、なのね」
「ああ。それなのでローザの事もいつか迎えに来るのだろうと思ったのだけれど、孤児院に預けたり養女になったりすると、迎えに来るタイミングに拠ってはローザが辛い思いをするかと思ったんだ」
「辛い思いって?」
「養子って片親は駄目なんだよ。夫婦でなければ駄目で、つまり優しい養母に懐いているのに一度はローザを手放した実母が迎えに来たりしたら、可哀想じゃないか。相手が貴族だと養父母が抵抗しても奪われるだろうし」
「確かにそうかも」
「養女にならないで孤児院で教育を受け続けたら、迎えに来られてからの令嬢教育に付いていけないと思ったし」
「もしかしてお姫様ごっこってその為だったの?」
「まあそうだけれど、ローザがお姫様になりたがったから利用させて貰ったからね」
「お姫様になりたがったのが先なの?」
「先だったね」
「そうだったのね。でもそれだけで私を預かってくれたの?」
「たまたま薬草採取の指名依頼を受けていたのもあって、ダンジョンに入らなくても生活が出来ていたからね」
「ニオラさんの?」
「そうだよ。ギルドを通すと品質が悪くて、私はまだマシだからって指名して貰ったけれど、文句を言われなくなるまでは大変だった。でもそれからは高値で買ってくれたから、ちょうどローザと暮らす余裕があったんだよ」
「・・・ごめんなさい」
「・・・何がかな?」
「私の為にダンジョンに入らなかったのに、気付かずにわがまま言って」
「そうではないよ」
「でも皆に馬鹿にされていたのに我慢させて」
「ローザの父ちゃん、ダメおやじって?」
「うん。それとか他にも」
「ダメおやじって、他国とは言え侯爵家の人間を馬鹿になんかして、本人に知られたら、知らなかったでは済まないだろうに可哀想にって思いながら聞いていたから、何ともないよ」
「え?知っていたの?バラローズ侯爵家の事」
「それはだって、ローザが貴族の娘かもと思ったら、危険を避ける為に調べるだろう?ピオニー王国らしいとは思っていたし、婚約者がいた男性の子を産んだ事も実家が取潰しにあった事も聞いていたから、バラローズ侯爵家の事は直ぐに見つけられたよ」
「もしかして、私が連れ去られて直ぐに、行き先が分かっていたの?」
「ローザの魔力は見つけられなかったけれど、バラローズ侯爵家で靴の魔道具の反応が見つけられたからね」
「ダンジョンで助けてくれたのも?」
「あれは偶然だね。元王子がダンジョンの視察をする話は広まっていたから、ローザの相手の顔を見てやろうと思って」
「相手って?」
「ローザが連れ戻された理由があると思って調べたら、ロザリーゼ・ノバラー男爵令嬢の話を見つけて、そのお相手だった王子が急にバラローズ侯爵家に通う様になっていたら、ローザに関係があるって思うだろう?」
「そう?思う?」
「思うさ。ロザリーゼ・ノバラー男爵令嬢は美人だったって話だから、王子が面食いならローザを見逃す筈はないじゃないか。まさかロザリーゼ・ノバラー男爵令嬢がローザとそっくりで、名前まで同じになっているとは思わなかったけれどね」
「でもどうやってダンジョンに入ったの?あそこは国の管理だから、冒険者でも簡単には入れないのでしょう?」
「国の管理以外のダンジョンがある事は知っているかい?」
「ピオニー王国に?」
「そう。王都の傍にもいくつかあって、王子が入るダンジョンと出て来る魔獣の種類がかなり重なるダンジョンがある。そこは入り口は別だけれど中は繋がっているのではないかと思って、マッピングしたら直ぐに繋がっているところを見つけたんだ」
「直ぐに?直ぐ見つかるのに知られていないの?」
「直ぐだけれどあまり冒険者が来ない様なところだから。大分深いしね」
「それだから覆面を被っていたの?」
「目撃されない様にね。バレたら面倒な事になるのは分かっていたし。ただし、繋がっている事を知っている人間はいると思う。ローザ達が魔獣に襲われた時、ローザ達の他にも人がいたんだ」
「サポートチームも入っていたけれど?」
「いや。国の兵士ではなく、冒険者だ。生け捕りにした魔獣を眠らせて隠して置いて、ローザ達が来たら起こして追い立てたのではないかと思う」
「そんな・・・誰が?何の為に?」
「殺し屋達を捕まえた事で、何かが分かるかもね」
「それって、ダンジョンで狙われていたのも私だったと言う事?」
「ローザを狙うには大掛かりだよね。ローザがダンジョンに入る事は、あまり知られていなかったのではない?」
「その筈だけれど」
「殺し屋を調べても全く関係がなくて、何も分からないかも知れない。でも殺し屋を捕まえた事を上手く利用すれば、悪巧みをしている人間を炙り出す事は出来るかも知れないからね。どちらにしても、ピオニー王国を出てしまえば私達にはそれ程関係がなくなるから。後始末が必要な事は閣下に任せておけば良いよ」
「そうなのね」
「ああ」
ローザに隠していた事を色々と話す事が出来て、ダメルの気持ちは晴れ晴れとしていた。それは声にも表れている。
そしてそのダメルの声を聞いて、ローザの心も軽くなっていた。
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