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様子と方針

 ローザとダメルは家に帰ると、夕食の用意を始める。

 材料を洗って、切って、煮込み始めたところでダメルがエプロンを外した。


「少し出て来るから、後は頼んだよ」

「出て来るってダメル?どこに行くの?」

「守備隊に捕まった冒険者達がどうなったのか、確認して来るよ。釈放されていたら、しばらくの間は南区に近寄らない方が良いだろう?序でに魔石も納品して来るね」

「私も一緒に」

「いいや。ローザには鍋を見ていて欲しいな。出来上がったら先に食べていて良いから」

「でも」

「大丈夫。直ぐに帰って来るから、心配は要らないよ」


 鍋はもう少し煮ないと夕食にならないので、火を止めて一緒に行くには何らかの理由が必要だ。しかしローザの買い物は済んでしまっているし、ローザはダメルに付いて行く理由を思い付けない。


「誰かが来ても開けなくて良いからね」


 子供に言って聞かせる様な口調でそう言うと、ダメルはローザの頭を撫でた。



 言葉通り、ダメルは直ぐに戻って来た。


「ただいま、ローザ」

「お帰りなさい、ダメル。大丈夫だった?」

「もちろん、大丈夫だよ」

「捕まった冒険書達は?」

「それが釈放されていたし、代官が裁判をするそうで、それが終わるまでは街から出られずに留まると言う話だったよ」

「代官の裁判なんて、しばらくいるって事?」

「そうでもなくて二三日らしい。多分、街からの追放となる。しかし、それまでは街からは出られないしダンジョンにも入れないけれど、それ以外は行動の制限がないそうなので、ローザ。しばらく街を離れよう」

「え?街を離れてどうするの?」

「王都へ続く街道付近で、どうも魔獣が活発化しているそうなんだ。商人からの話で調査依頼が出て、それを引き受けて来た。領地の境界まで見てきて、どんな魔獣がどれほどいるか報告する仕事だ。野宿になるけれど、大丈夫だよね?」

「野宿は良いけれど、魔獣の活発化って危ないんじゃない?」

「私がローザを危ない目に遭わせる訳はないだろう?危険はゼロではないけれど、魔獣の調査をするだけで討伐依頼ではないから、普段草原で(おこな)っている狩りと危険度は変わらないよ」


 そう言いながらダメルは、鍋からスープを掬って皿に移す。


「良い匂いだ。おいしそうにできたね。これを食べたら出掛けようか」

「出掛けるってどこに?」

「城門が閉まる前に、北区から街道に出よう」

「今日から行くの?」

「早い方が良い。釈放された冒険者達がこの家に押し掛けて来たら、出掛けられなくなってしまうかも知れないからね」


 そう言ってダメルは皿をテーブルに並べると、カトラリーを用意しようとするのでローザがそれを手伝った。


「食べている間に来たりはしない?」

「大丈夫だから、ゆっくりと食べて良いよ。彼らは街の人達と小競り合い起こしていたから、しばらくは警備兵が足止めをする筈だ」

「小競り合いって?今起こしていたの?」

「そうだよ。火を着けた店の賠償をどうするかでだね。水浸しになった商品を弁償しろとかしないとか、魔法を弾いた警備兵が悪いとか言って揉めていたから、もしここに来るとしても私達の家の場所を調べるにも時間は掛かるだろうし、来るのは早くても夜中になってからだよ」


 そう言ってダメルは胸の前で手を合わせた。


「だからほら、食べよう。いただきます」


 ローザも急いで胸の前で手を合わせる。


「いただきます」


 スプーンを持ってローザがスープを口にするのを見て口元に微笑みを浮かべてから、ダメルもスープを口にした。




 北区に繋がる城門は、入る際に身分確認が必要になる。それは街の西区や東区から入る時も同じだった。


 北区の城門でダメルは冒険者証を提示し、ローザの立場を保証する書類にサインする。そしてその書類の控えを受け取った。

 そして北区の中心部は避けて城壁沿いに進み、王都へ続く街道に繋がる城門から外に出る。その際にダメルはまた冒険者証を提示して、ローザの分としては書類の控えを手渡した。


「西区の城門から出ても良かったのに」


 北区の城門から少し離れてから、ローザはダメルにそう言った。


「でもこれで、私達が街から出た証拠が残るだろう?」

「そうだけれど、西門からなら誰にも見られずに街に戻れるじゃない。街の外にいた証明にはならないのではない?」

「ローザが賢く育って、私は嬉しいよ」


 そう言うとダメルはローザの頭を撫でる。


「それは良いから。だから、意味がないわよね?」

「街を出た事は門番が証言してくれる。書類も残したしね」

「そうだけれど」

「逆に私達が街にいた証拠はない。実際に街には戻らないし、街で見掛けたと偽証してもその様な嘘は直ぐに暴かれる。少なくとも私には簡単に反証が出来るしね」

「だから何故その様に、アリバイを作る様な事をするの?それを教えて」


 ダメルは一拍置いてから口元に笑みを浮かべ、それをローザに向けた。


「それを疑問に思うとは、ローザは本当に賢くなったね」

「そう言うのはいいから、何故なの?教えてよ」

「それなら自分で考えて御覧。街に戻ったら答え合わせをしよう」


 そう言うとダメルはローザの頭をまた撫でるのだった。

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