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解放

「ダメル!」

「ダメル?」

「可哀想に。その名を聞いたからには、死んで貰うしかない」


 ダメルの言葉にローザは目を見開く。


「え?」


 ダメルが近付いて来る事に盗賊を名乗った男は慌てた。


「いや!待て!誰にも言わない!」

「そう言って今まで盗賊を信じてくれた人はいたかい?」

「いや、俺らは盗賊じゃない!違うんだ!大体この荷馬車から一体何を盗めって言うんだ?!」

「御令嬢の命」

「いや!それは!依頼されたから仕方なくなんだ!」

「依頼を請けたんだから仕方なくはないよね」


 そう言ってダメルは剣を盗賊風の殺し屋だと言う男に向ける。

 ローザの眉尻が下がった。


「ダメル?本当に殺すの?」

「この殺し屋達は御令嬢を殺す為に雇われたって言っていただろう?つまり生かして置いてたらもっと人を殺すんだ」

「殺さない!もう殺しは()めるから!」

「そう言って今までに殺し屋を信じてくれた人はいたかい?」

「ダメル。盗賊も殺し屋も死んで構わないけれど、ダメルには人殺しになって欲しくない」


 ローザに見詰められてそう言われ、ダメルは剣を下ろす。


「それなら、殺し屋達には自分の命を買って貰おうか」

「金か?今はあまり持ってないが、直ぐに用意する」

「と言っているけれどそれで良い?殺し屋だから殺してお金を作る筈だよ?」

「そんなのダメよ」

「残念だな。ダメだそうだ」


 そう言うとダメルはまた剣を構えた。


「いや、待て!待ってくれ!殺しじゃなくて金を作るから!」

「盗みかい?」

「いや盗みもしない」

「じゃあ何をして?」

「いや、なんか、適当に」

「どちらにしても、皆もう歩けないから、殺しも盗みも出来ないけれどね」

「え?」

「神経を切ったって言ったじゃないか」

「しんけい?しんけいってなんだ?」

「神経を知らないのなら、神経に付いての説明を聞いても分からないよ。まあ、自分ではもう立ち上がれないって思って」

「え?そんな?そしたらこれからどうやって生きていけば良いんだ?」

「自分の生き方が決められないのなら仕方ないよ」

「いや!助けてくれ!」

「御令嬢を殺そうとしたのに?歩けないだけで助けてくれ?」

「頼む!この通りだ!」


 両手を突いて頭を下げる男の前に、ダメルはしゃがんだ。


「それでは雇い主の情報を喋って貰おうかな」

「それは・・・だが・・・」

「まあ良いよ」


 そう言ってダメルは立ち上がると、ローザの傍に向かう。


「え?俺はどうなるんだ?おい!俺は?!」


 体を起こした男がダメルの背中に問い掛けた。

 ダメルは振り向くと男に向けて手を伸ばす。男は手で支えたりする事なく顔から倒れた。


「え?殺したの?」

「眠らせただけだよ」


 そう言うとダメルは檻を魔法で開けて中に入り、ローザの前に跪いて両腕を広げ、ローザを抱き締めようとしてローザに胸を両手で押さえられて押し返される。


「え?」

「待って、ダメル。まずこの手枷を外して」

「・・・良いけれど?」


 ダメルはローザの両手に嵌められている手枷を外した。


「ありがとう」


 そう言うのが先か魔法を使うのが先か、ローザは清浄魔法を自分に掛ける。そして両腕を広げてダメルの体を抱き締めた。


「ダメル!会いたかった!」


 ローザの行動に驚いていたダメルは、ローザの両腕の中から自分もローザを抱き締めた。


「遅くなってごめんね」

「ううん。きっと来てくれると思ってたの。ダンジョンでも来て助けてくれたし、今回も助けに来てくれるって」


 そう言うとローザはダメルの両肩を掴んで体を離し、ダメルの覆面を持ち上げて顔を見てからダメルの両腕の中に自分の両腕を潜らせて、もう一度ダメルに抱き付く。


「ありがとうダメル」


 ダメルは片手をローザの頭に回し、ローザの頭と腰を抱き締めた。



 気持ちが落ち着いたところでダメルはローザを檻から連れ出し、ローザを荷馬車の御者台に乗せる。

 そして眠っている盗賊風の殺し屋達を檻に入れた。


「全員にあの手枷を付けなくて大丈夫なの?」

「杖は取り上げたし、魔法も難しくしたからね」

「難しく?」

「そうだよ」


 そう言うとダメルも御者台に乗る。


「覆面、付けたままなの?」

「顔を見られるのは避けたい」

「却って目立つよ?」

「気配を消していくから」

「じゃあ覆面いらないじゃない」

「良いんだよ」


 そう言うとダメルは手綱を取って、荷馬車を走らせた。荷馬車には重量を軽減する魔法を掛けて、馬には強化魔法を掛けている。


「どこに行くの?」

「そうだね・・・行きたいところはあるかい?」

「ダメルには当てはないの?」

「・・・取り敢えず、もう少し走ろうか」


 ローザはダメルの意図が分からなかったけれど、取り敢えずダメルと一緒なら良いかと思った。


「ええ」


 ローザは肯き、そしてダメルの顔を覗き込む。覆面をしているけれど。


「私はこれからもダメルと暮らすのよね?」


 そう問われてダメルは一瞬だけ僅かにローザに顔を向けて、また前を見た。


「来た様だ」


 そう呟く様に言うとダメルは馬車の速度を落とした。


「え?何が?」


 ローザが探知魔法で周囲を探ると、後に反応があった。振り向いてダメルの肩を手で掴みながら立ち上がり、檻に掴まりながら後方に絞って探知する。


「護衛が追って来たの?」

「護衛もいるかい?」

「分からないけれど、でもなんで速度を緩めるの?」

「・・・清算、する為だね」

「清算?」


 ダメルは馬車を止めた。


「私の事はダメルとは呼ばない様に」


 そう言うとダメルは御者台から降りた。


「え?なんで?」

「・・・そうだね。先ずは自分で考えて御覧」


 そう言いながらダメルはローザに手を差し出す。ローザはその手を取って、馬車から降りた。


 それ程待たずに、追って来たのが騎士だと分かる。

 先頭の一人だけ、後続の騎士達とは装備が違った。高そうだ。

 その先頭の一人が後続を振り切るかの様なスピードで馬を走らせて来た。

 そしてローザとダメルの傍まで来て馬を止めると、馬上からダメルに長剣を向け、顔はローザに向ける。


「無事かリゼ!」


 先頭の馬に乗っていた騎士は、元王子だった。 

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