判決
「ああ。倒す所を見たそうだ」
「もう一種が暴れたのに巻き込まれたのではないのか?」
「死体を詳しく調べられなかったそうだが、見た限りでは押し潰されたりしてはおらず、血も流していない非常に綺麗な状態だったそうだ」
「どうやって倒したのだ?」
「さあな。魔法なのだろうが、まるで魔獣は眠っている様だったと言う事だ」
「いや、そんな筈は・・・一頭を倒すのだって大勢で掛からなければならないし、血も流さずなどあり得ない」
「それは私も思う。倒れていた魔獣を複数人が目撃していたが、全員が死んでいるとは思えなかったと証言している」
「その協力者と言うのがそれを・・・何人だと言った?」
「目撃された協力者は一人だけだ。協力者を目撃したのも一人だけなので、信憑性には欠けるが、だが倒れていた魔獣の様子から、死んでいないにしても誰かが倒したのは疑い様がない」
「・・・そうか・・・」
「それですので国王陛下。わたくしはその協力者と言うのが魔獣を集めたと考えます」
「集めた?何の為に?」
「モンクスフード公爵を助け出す為だ」
「え?私を助ける為に?」
「そうだ。魔獣を操ってモンクスフード公爵を襲わせ、それを助け出したのだ」
「それこそ何の為だ?」
「その様なもの、モンクスフード公爵に被告を信用させる為としか考えられないだろう?」
「・・・え?」
「国王陛下。被告に付いていた教師の一人は、被告の言い回しがバウドネス王国のものに思えたと証言しております」
「何?それは本当か?」
「はい。そして別の一人は被告の所作の足の角度が、やはりバウドネス王国のものに思えたと証言しました」
「バラローズ侯爵」
「はい、国王陛下」
「ロザリーゼ・ロッソ・バラローズはそなたの娘ではなかったか?」
「・・・はい。わたくしの娘です。ロズワルドの双子の妹として生まれました」
「それなら何故、バウドネス王国の癖を持っているのだ?」
「それは・・・ロザリーゼは生まれ付き魔力がなく、領地にて魔力を増やす訓練をさせながら育てました。もしかしたらその課程で、バウドネス王国の者と接触する事があったのかも知れません」
「国王陛下。バラローズ侯爵が申しました被告に魔力がないとの件ですが、被告は魔法を使えます」
「確かに冒頭にそう申していたな」
「はい。バラローズ侯爵」
「ああ」
「本当に被告は魔法を使えないのか?」
「それは今もここにいる全員が分かる筈です。ロザリーゼには魔力が一切無いと言う事を」
「しかし、生き残った全員が、被告が魔法を使う所を見ている」
「国王陛下。あの日はロザリーゼに様々な魔導具を持たせておりました」
「国王陛下。被告が魔法を使うのを目撃された時には、被告は魔導具を一切持たず、それまでの装備とは違う物を身に付けていたそうです」
「その時の装備はこちらの上着です。中にナイフが隠されていて、防御魔法だけ掛けられています」
「目撃された被告の魔法は浮遊魔法と水魔法と軽度の治療魔法。ダンジョンから出て来た時には、いずれの魔導具も被告は所持してはおりませんでした」
「確かにロザリーゼ殿は、魔法を使っていたが」
「モンクスフード公爵も目撃していたのだな」
「だが、てっきり魔導具だと」
「何故魔導具だと思ったのだ?」
「何故?・・・何故って、だが、ロザリーゼ殿は杖を使っていなかったから」
「そう。被告は杖を使わずに魔法を使った。国王陛下。これはつまり、被告の使う魔法がバウドネス王国の物だと言う事なのです」
「・・・そんな・・・ロザリーゼ殿?・・・」
「そうするとロザリーゼ・ロッソ・バラローズがモンクスフード公爵を助けたのも、王妃になる為だと言うのか?」
「それは分かりません。ただ王妃を狙える位置に立っておけば、バウドネス王国からの指示でいつでも王妃になったでしょう」
「しかしモンクスフード公爵は臣籍に降りた」
「しかし王族である事は変わりませんし、モンクスフード公爵の子息には王位継承権が与えられます。そこまで待たずとも万が一、王位継承者がいなくなる事があれば、モンクスフード公爵の継承権も復活する訳ですので」
「・・・そうだな」
「そんな・・・そうなのか?ロザリーゼ殿?」
「ロザリーゼ・ロッソ・バラローズとバウドネス王国との繋がりは分かったのか?」
「いいえ。それが、一向に」
「所作がバウドネス王国と似ている国は他にもある。魔法に杖を使わない国もな」
「はい」
「目撃された協力者は見付からないのか?ダンジョンに入れる者は限られている筈だ」
「そちらも一向に手掛かりが掴めません」
「亡くなった者の家族や同僚を中心にロザリーゼ・ロッソ・バラローズを恨む者も多いが、助けて貰ったのだと感謝する者も少なからずいると聞く」
「はい」
「もし魔獣に襲われたのが偶然だった場合、当時は第一王子であったモンクスフード公爵の命を助けた功労者とも言えるな」
「はい。モンクスフード公爵を始め、拘留中の被告への差し入れや面会を申し込む者もおりました。それらの者とも、バウドネス王国との繋がりは見付かってはおりません」
「そうか・・・」
国王は立ち上がり、ローザに手を向けた。
「ロザリーゼ・ロッソ・バラローズ。顔を上げろ」
ローザは小さく息を吐いてから顔を上げて、国王と目を合わせる。
国王はローザを見詰め、ローザも国王を見返した。
「判決を下す。バラローズ侯爵家は監督不行き届きで科料。ロザリーゼ・ロッソ・バラローズは貴族籍と国籍を剥奪の上、国外追放。その後この国への入国、あるいはバウドネス王国との関係が明らかになった場合は死刑とする。以上だ」
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