目撃
「魔獣に囲まれた時、モンクスフード公爵は被告に、全員を助ける様に命じました」
「それは!・・・」
「違うかな?」
「いや、そう口に出したが、違うのだ」
「当時第一王子であったモンクスフード公爵のその言葉を被告は無視をしたとの証言があります。これは充分に不敬罪に当たる行為です」
「いや、違う。あの時の私の判断が間違っていたのだ。国王陛下。私の判断こそが間違えていたのです」
「国王陛下。当時第一王子であったモンクスフード公爵にも、間違える事はあるでしょう。本人もそう言っておりますし。しかしそれでも命令に従うのが臣下です。そして王族の間違えに気付いたならば、それを諫める事こそ臣下の責務です。それに対して命令を無視するなど、国家の混乱を招く犯罪でしかありません」
「違う!あの場では議論をしている余裕などなかったのだ。国王陛下。私はロザリーゼ殿の行動で自分の誤りに気付き、判断を革める事が出来たのです」
「ですが国王陛下。被告は多くの優秀な人材の命を見捨てました」
「それはあの場では仕方がなかった事なのだ」
「被告がダンジョンに同行した立場は、単なる見学者として申請されています。単なる見学者が当時の第一王子の命令を無視して、国に損害を与える決断をしたのです」
「違う!」
「違わん。これは国家に対する反逆です」
「違う!」
「モンクスフード公爵が何を違うと言っているのか分からんが、大勢の犠牲を出した結果がそれを表しているではないか」
「違う!そもそも犠牲が出る様な探索ではない予定だったのだ」
「予定がどうあれ犠牲が出た。そしてあの者達を見捨てる判断をさせたのは被告だと、モンクスフード公爵も証言したではないか」
「違う!私が言ったのはそう言う意味ではない!」
「モンクスフード公爵がどう言う意味で言おうと、事実は変わらんのだ。被告が当時第一王子であったモンクスフード公爵に、将来を嘱望されていた大勢の優秀なこの国の人材を見捨てる決断を強いたのだ」
「違う!強いられてなどない!」
「議論の余地がない所で命令を聞かずに選択を迫る事の、どこが強いていないのだ?」
「いや・・・それは・・・」
「被告が優秀な人材を見捨てない選択をしようとしたのに、モンクスフード公爵が見捨てる命令を下したのなら、確かにモンクスフード公爵の責任となるだろう。しかし命の危機が迫る中、一つの選択肢以外を否定された状況で、冷静な判断が出来るとは思えない。そこに被告は付け込んだのだ」
「・・・そんな・・・」
「国王陛下。そもそも危険が少ない筈のダンジョン視察であの様な惨劇が起こったのは、被告の誘導があったとの証言があります」
「え?」
「予定の進路が塞がれていた時に、当時第一王子であったモンクスフード公爵が、来た道を引き返そうと判断を下したのに、被告が被害のあった場所に進む事を進言したのです」
「いや、違う」
「これは生き残った多くの者達が証言をしている」
「いや、私もどちらにしようか迷ったのだ」
「そうだとしても、一度は引き返すとの決断をした筈だ。それを被告が覆させた。ちがうか?」
「いや・・・状況としては、そうだが」
「その後も引き返すチャンスは何度もあったそうだな?その都度、被告は前に進む様に誘導していた。そうだったのではないか?」
「いや!違う!」
「違わんだろう?現在地が分からなくなった時も、被告が進むべき方向を示したとの証言がある」
「確かにそうだが、私もほかの者も、ロザリーゼ殿の言葉が正しいと判断したのだ」
「他の者?その様な判断をしたとの証言は本人から上がっていないが、それは誰の話だ?」
「それは・・・その者は亡くなっているので」
「そうか。それは残念だ。ただモンクスフード公爵。私が問題視しているのは、モンクスフード公爵が判断したかどうかではなく、誰がモンクスフード公爵にその判断をさせたかなのだ」
「・・・それは・・・」
「国王陛下。被告はダンジョンの地図に非常に詳しかったとの証言もあります。それなので当時第一王子であったモンクスフード公爵が魔獣に襲われた場所に、意図的に誘導をした可能性もあるのです」
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿だと?」
「ロザリーゼ殿は自分も巻き込まれたのだぞ?あの様な恐怖に自分も巻き込まれると分かっていて、誘導をする訳がない!」
「そうだろうか?」
「当たり前ではないか!あの場にいなかったから!あの場の恐怖や絶望を味わっていないから!そんな事が言えるのだ!」
「だが被告は傷一つ負ってはいなかったそうだな?」
「・・・え?・・・」
「魔獣に襲われた瞬間に被告は一人だけ、モンクスフード公爵達から離れた。そして皆が自分を犠牲にして守ったモンクスフード公爵さえ怪我をしたのに、たった一人で魔獣に囲まれていた筈の被告は怪我一つしていない」
「いや・・・それは・・・」
「もちろん被告の上に神の奇跡がもたらされたのかも知れない。だがな?モンクスフード公爵?被告が予め準備をしていたとも考えられないか?」
「準備?」
「そうだ」
「何の為に?」
「何の為になのか、本当の事は被告にしか分からんかも知れない。しかしそれを国王陛下に判断して頂く為のこの裁判だ。違うか?」
「・・・それは・・・」
「とにかく事実としては、鍛錬を積んだ者が亡くなった一方で、令嬢として育った魔力もないとの話だった被告が怪我一つ無くその場を切り抜けたと言う事だ。そして国王陛下。被告には協力者がいたとの証言もあります」
「協力者?」
「ああ、そうだ。国王陛下。証言によると、モンクスフード公爵達を襲った魔獣は二種類でした。その内の一種類は、いつの間にか死んでいたとの証言と、それを倒した人物を見たとの証言が上がっております」
「倒した?あれを?」
11




