表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/42

救出

 でも不思議だ。

 ダメルはこんな大きな声を出した事がないのに。


「何を言っているんだ?!ローザ?!」

「え?・・・ダメル?」


 ダメルは魔法で、太い魔獣と壁と床に挟まれているローザの体を引き摺り出す。

 そして抱き抱えると飛び上がって、太い魔獣の上に乗った。

 そのまま魔法でバランスを取ると、魔法で灯りを灯して腕の中のローザを見る。ローザも腕の中からダメルを見上げた。


「「え?誰?」」


 ダメルとローザの声が重なる。

 ローザはひしゃげたフルフェイスヘルメットを被ったままだし、ダメルは覆面をしていた。


「この魔力、ローザだよね?」

「ダメルよね?」

「いえ。違います」

「え?ダメルでしょう?」

「人違いです」

「慌てて声色作ったってダメルの魔力じゃない。あっ、急に消した。ほら。ダメルだから消したのよね?」

「いや、ローザ。何をしているんだい?」

「誤魔化そうとして」

「私がここにいる事は内緒にしておいておくれ」

「え?なんで?」

「取り敢えず、脱出しよう」

「待って!殿下達を助けなきゃ!」

「取り敢えずローザは安全な所へ」

「ダメよ!間に合わなくなる!お願いダメル!手伝って!」


 ダメルの腕の中からローザは体を起こし、チームメンバーの声のする方を振り向いた。

 そして顔をダメルに戻し、その胸元を両手でつかむ。


「ダメル!お願い!」

「分かった。ただし私はあくまでも手伝いだけだ。ローザが彼等を助けるんだ」

「はい」


 壊れて邪魔なローザの装備をダメルは手早く外す。そして立ち上がるとローザを太い魔獣の上に下ろした。


「自分で立てるかい?」

「大丈夫」


 ローザが自分の魔法でバランスを取って、ダメルの隣に立つ。ダメルはローザから手を放すと、自分の上着を脱いでローザに着せた。


「内側のホルダーにナイフが付いているから」

「ありがとう」

「魔力は?」

「大丈夫」

「じゃあ、この太いのは倒さないで、あの人達はこれの上に退避。皆、魔法が使えるよね?」

「ええ」

「私は火魔法を使う魔獣を倒しておくから。どちらかの出口から脱出する様に」

「はい」


 肯くローザに肯き返すと、ダメルはローザを抱き締めた。

 ローザは驚いたけれど、ダメルを抱きしめ返そうと腕を伸ばす。

 けれどダメルはローザの体を離し、太い魔獣から飛び降りた。

 ローザはダメルを抱き締め損なう。バランスを崩して太い魔獣から落ちそうになった。


 ダメルは入って来た方の穴に向かう。穴の傍には火魔法の魔獣が二頭倒れていた。

 ダメルが残っている魔獣に次々と触れる。すると触れられた魔獣からその場に倒れていった。


 それを見ていたローザははっと我に帰り、ウルフズベン王子の(もと)に向かう。

 太い魔獣の上を渡りながらだと、王子の下には直ぐに辿り着いた。


「殿下!」

「リザ!無事だったか!」

「この上に」


 そこまで言ってローザは王子を浮遊魔法で浮かび上がらせる。そして自分の傍に運んで、王子の体を支えながら、太い魔獣の上に立たせた。


「立てますか?」

「いや、大丈夫だ」


 ローザは王子が怪我をしていない事を素早く確認し、王子に返事も肯きもしないで、次にメンバーの一人を魔法で浮かせた。その人を同じ様に太い魔獣の上に立たせる。


「魔力は残っていますか?」

「ああ」

「治療は?」

「出来る」

「誰を助けますか?」

「皆助けるんだ!」


 王子が口を挟むけれど、ローザはもう一人から目を離さなかった。


「彼から」

「はい」


 その人が指を指した蹲っている男性を太い魔獣の上に運ぶ。


「次は?」

「彼だ」


 王子が指差す。王子の次に助けた人も、運び上げた男性を支えながらローザに肯いたので、ローザは王子が指を指した人を運び上げた。


 太い魔獣の間には、倒れて魔獣に上から乗られている人もいた。

 今なら命を助けられるかも知れない。しかしその人を助けようとしても結局助からず、他の人も助けられなくなるかも知れない。


 ローザには怪我の状態によるトリアージはできるが、地位が絡んだ判断は出来なかった。

 最初は全員を助けろと言った王子もその事に気付き、それを加味してローザに助ける順番を指示したし、自分でも助けた。


 助けられた人達も、王子の指示に従って残りの人達を助けて行く。

 火魔法を使う魔獣は全てダメルが倒していたので、重傷者は穴の外に運んだ。

 そして最後に、助けられなかった人達を運び出して、ローザ達はその場から離れた。


 ローザはダメルの姿が見えない事には気付いていたけれど、遠くにはダメルの魔力を感じていた。たまにダメルの魔力が消えるけれど、道の途中に魔獣が倒されていたりするので、ダメルが先行して魔獣の排除をしてくれているのだと分かる。

 ローザは安心して、チームメンバーを運ぶ事に集中した。



 ローザ達はダンジョンの入口に辿り着いた。

 サポートをする筈だった別チームは王子のチームを見失って、既に地上に戻っていた。そして地上では、王子を救出する為の準備が始められていた。

 王子は地上にいた人達に対し、治療が完了していない人達を医者に診せる様に指示し、助けられなかった人達を丁重に運ぶように依頼した。



 ローザが地上に出た時には、ダメルの魔力はまだダンジョンの中から感じられていた。

 そしてそれは不意に消えて、その後はローザにはダメルの魔力を感じる事は出来なかった。

 しかしローザは心配をしていない。


 ダメルは自分がここにいる事を内緒にする様にと言っていた。訊けなかったけれど、何か理由がある筈だ。

 きっと誰もいなくなってから、ダンジョンから出て来るのだろう。

 そして直ぐに自分を訪ねて来る筈だ。

 だって上着は借りたままだし、お礼も言ってないし。

 何よりダメと言われていたのにダンジョンに入った事に付いて、まだダメルに怒られていないのだから。

13

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ