救出
でも不思議だ。
ダメルはこんな大きな声を出した事がないのに。
「何を言っているんだ?!ローザ?!」
「え?・・・ダメル?」
ダメルは魔法で、太い魔獣と壁と床に挟まれているローザの体を引き摺り出す。
そして抱き抱えると飛び上がって、太い魔獣の上に乗った。
そのまま魔法でバランスを取ると、魔法で灯りを灯して腕の中のローザを見る。ローザも腕の中からダメルを見上げた。
「「え?誰?」」
ダメルとローザの声が重なる。
ローザはひしゃげたフルフェイスヘルメットを被ったままだし、ダメルは覆面をしていた。
「この魔力、ローザだよね?」
「ダメルよね?」
「いえ。違います」
「え?ダメルでしょう?」
「人違いです」
「慌てて声色作ったってダメルの魔力じゃない。あっ、急に消した。ほら。ダメルだから消したのよね?」
「いや、ローザ。何をしているんだい?」
「誤魔化そうとして」
「私がここにいる事は内緒にしておいておくれ」
「え?なんで?」
「取り敢えず、脱出しよう」
「待って!殿下達を助けなきゃ!」
「取り敢えずローザは安全な所へ」
「ダメよ!間に合わなくなる!お願いダメル!手伝って!」
ダメルの腕の中からローザは体を起こし、チームメンバーの声のする方を振り向いた。
そして顔をダメルに戻し、その胸元を両手でつかむ。
「ダメル!お願い!」
「分かった。ただし私はあくまでも手伝いだけだ。ローザが彼等を助けるんだ」
「はい」
壊れて邪魔なローザの装備をダメルは手早く外す。そして立ち上がるとローザを太い魔獣の上に下ろした。
「自分で立てるかい?」
「大丈夫」
ローザが自分の魔法でバランスを取って、ダメルの隣に立つ。ダメルはローザから手を放すと、自分の上着を脱いでローザに着せた。
「内側のホルダーにナイフが付いているから」
「ありがとう」
「魔力は?」
「大丈夫」
「じゃあ、この太いのは倒さないで、あの人達はこれの上に退避。皆、魔法が使えるよね?」
「ええ」
「私は火魔法を使う魔獣を倒しておくから。どちらかの出口から脱出する様に」
「はい」
肯くローザに肯き返すと、ダメルはローザを抱き締めた。
ローザは驚いたけれど、ダメルを抱きしめ返そうと腕を伸ばす。
けれどダメルはローザの体を離し、太い魔獣から飛び降りた。
ローザはダメルを抱き締め損なう。バランスを崩して太い魔獣から落ちそうになった。
ダメルは入って来た方の穴に向かう。穴の傍には火魔法の魔獣が二頭倒れていた。
ダメルが残っている魔獣に次々と触れる。すると触れられた魔獣からその場に倒れていった。
それを見ていたローザははっと我に帰り、ウルフズベン王子の下に向かう。
太い魔獣の上を渡りながらだと、王子の下には直ぐに辿り着いた。
「殿下!」
「リザ!無事だったか!」
「この上に」
そこまで言ってローザは王子を浮遊魔法で浮かび上がらせる。そして自分の傍に運んで、王子の体を支えながら、太い魔獣の上に立たせた。
「立てますか?」
「いや、大丈夫だ」
ローザは王子が怪我をしていない事を素早く確認し、王子に返事も肯きもしないで、次にメンバーの一人を魔法で浮かせた。その人を同じ様に太い魔獣の上に立たせる。
「魔力は残っていますか?」
「ああ」
「治療は?」
「出来る」
「誰を助けますか?」
「皆助けるんだ!」
王子が口を挟むけれど、ローザはもう一人から目を離さなかった。
「彼から」
「はい」
その人が指を指した蹲っている男性を太い魔獣の上に運ぶ。
「次は?」
「彼だ」
王子が指差す。王子の次に助けた人も、運び上げた男性を支えながらローザに肯いたので、ローザは王子が指を指した人を運び上げた。
太い魔獣の間には、倒れて魔獣に上から乗られている人もいた。
今なら命を助けられるかも知れない。しかしその人を助けようとしても結局助からず、他の人も助けられなくなるかも知れない。
ローザには怪我の状態によるトリアージはできるが、地位が絡んだ判断は出来なかった。
最初は全員を助けろと言った王子もその事に気付き、それを加味してローザに助ける順番を指示したし、自分でも助けた。
助けられた人達も、王子の指示に従って残りの人達を助けて行く。
火魔法を使う魔獣は全てダメルが倒していたので、重傷者は穴の外に運んだ。
そして最後に、助けられなかった人達を運び出して、ローザ達はその場から離れた。
ローザはダメルの姿が見えない事には気付いていたけれど、遠くにはダメルの魔力を感じていた。たまにダメルの魔力が消えるけれど、道の途中に魔獣が倒されていたりするので、ダメルが先行して魔獣の排除をしてくれているのだと分かる。
ローザは安心して、チームメンバーを運ぶ事に集中した。
ローザ達はダンジョンの入口に辿り着いた。
サポートをする筈だった別チームは王子のチームを見失って、既に地上に戻っていた。そして地上では、王子を救出する為の準備が始められていた。
王子は地上にいた人達に対し、治療が完了していない人達を医者に診せる様に指示し、助けられなかった人達を丁重に運ぶように依頼した。
ローザが地上に出た時には、ダメルの魔力はまだダンジョンの中から感じられていた。
そしてそれは不意に消えて、その後はローザにはダメルの魔力を感じる事は出来なかった。
しかしローザは心配をしていない。
ダメルは自分がここにいる事を内緒にする様にと言っていた。訊けなかったけれど、何か理由がある筈だ。
きっと誰もいなくなってから、ダンジョンから出て来るのだろう。
そして直ぐに自分を訪ねて来る筈だ。
だって上着は借りたままだし、お礼も言ってないし。
何よりダメと言われていたのにダンジョンに入った事に付いて、まだダメルに怒られていないのだから。
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