第2話 思い出の食卓
店の横に自転車を立て掛けたシャルンは、ドアを開けて中へ入った。
被っていた帽子をポールハンガーに掛けて奥へ入った。
水が飲みたくなり、台所のコップで水道から水を注ぎ、飲んだ。
シャルン「ゴク、ゴク、…かぁ」
一気に水を飲み干して、作業台の方へ移動した。
椅子に座って背もたれに、もたれ掛かったら目を瞑った。
シャルン「ああ、疲れた」
受付に院長が来るとは思っていなかったシャルンは、思いの外疲れた。
全身の力を抜いてボーっとした。
このボーっとするのが気持ち良く、このまま体勢を変えなかった。
そうしているうちに、うとうとしてきた…。
まだ昼前なのに、かなり本気で眠い…。
寝落ちた。
少しの間眠っていたが、ドアのベルで起こされた。
カランコロン
シャルン「ふがっ」
お客さん「こんにちは」
少し、ふくよかな奥さんだった。
明るくて感じが良い人だ。
奥さん「あら、起こしちゃった、ごめんなさい」
シャルン「あ、いえ、あ、出来てますよ」
そう言って後ろの棚から商品を取り出し、奥さんに手渡した。
奥さんは商品を受け取ると徐に、シャルンが手直しした部分を探し出して確認した。
奥さん「流石ね。完璧、綺麗に直ってるわ、ありがとう、それで試着したいんだけど、いい?」
シャルン「勿論、どうぞ」
試着コーナーに手を向けてシャルンは案内した。
その一角で奥さんは着替えて、カーテンを開けて出てきた。
奥さん「どう?」
シャルン「とっても似合ってますよ」
奥さん「もう一度、着られて良かったわ。主人にもらった服だから長く着たいでしょう?あ、それと、もう一つよね、例の」
奥さんは試着コーナーの前の少し広い空間の上の方を、何かを期待しながら見上げた。
すると、そこには沢山の豪華な料理が白いテーブルクロスの上に並んでいた。
その向かい側に座っている、奥さんのご主人と思われる人物が穏やかに奥さんと食事をしている、とても和やかな一時の光景だった。
奥さん「この料理みんな主人が作ったのよ、私の為に一人で!」
シャルン「これ全部?」
興奮しながら奥さんは言う。
奥さん「私の事本気で好きなのよ、私の為にいつもこんなお祝いしてくれるの!忘れた事なんか一度もなかったわ!」
奥さんはその光景に見入っている。
しかし、しばらくすると、その光景は静かに消えてしまった。
奥さん「ああ…消えちゃった」
奥さんは満足そうに言った。
奥さん「でも良かった、また見れて。ありがとうね」
シャルン「あ、いえいえ、こちらこそ、いつもありがとうございます」
シャルンは頭を下げて礼を言った。
奥さん「ホントに此れの為に昔の服を選んで持って来るの、楽しみなのよ。じゃあ、また来るわね、ありがとうね」
シャルン「ありがとうございました」
シャルンは、また頭を下げて奥さんを見送った。
シャルン「凄いご主人」
そう言いながら作業台の椅子に座った。
さっき見ていた夢はなんだったのだろう。
昼寝の夢の内容が気になるが、思い出せない。
変わった夢だった様な気がするが。




