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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十六章
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8話 優雅

 虎ふぐのフルコースを堪能し終わり、休暇初日の午後が始まる。美食神様は当然の様に再度スタッフ任命を受け、屋台船のキッチンに吸い込まれていき、僕達は森の女神様の部屋でのんびりとお茶会をすることに。ストレス皆無な女神様方とのお茶会は素晴らしく楽しく、初日は穏やかに過ぎていった。




 休暇二日目。


 昨晩、お酒を呑んだにもかかわらず、スッキリとした目覚めを迎えることができた。


 痛飲した訳ではなく、楽しく穏やかにお酒を楽しめたからお酒の量が適量で収まったのだろう。


 軽く身支度を整え、ベランダに出て海を見ながらコーヒーを嗜みつつ今日の予定を考える。


 初日は穏やかながらとても楽しい時間を過ごせた。


 夜のバーでの時間もムフフな展開はなかったが、少し酔いが回ってスキンシップが増えた光の神様と森の女神様と楽しく過ごせた。


 二日目はもう少し刺激が欲しい。でも、焦り過ぎてもダメだと思うからバランスを考えて、こちらから少し踏み込んでいくべきか。


 いや、踏み込むにはリスクが伴う。


 気まずくなる可能性を考え、先に確定イベントである耳かきや船内デートなどを消化してしまう方が良いか。


 気まずくなってそれらのイベントすら実行できなかったら、一生引きずるレベルで後悔しそうだからな。


 よし、朝食はカフェで焼き立てのペストリーやベーグルを味わう約束だったな。だけど、待ち合わせの時間までまだ二時間はある。


 結構遅くまでお酒を呑んでいたから、集まる時間も少し遅めにしたのだが、スッキリ爽やかに目覚めすぎたな


 ……美食神様の様子を見に行っておくか。


 バーでお酒を呑んでいる間にもちょくちょく美食神様のところには顔を出していた。


 料理への情熱が暴走気味な美食神様は夜になってもその情熱は治まらず、真剣に、でも楽しそうに料理を続けていた。


 一応、徹夜はしないようにと注意はしたのだが、大丈夫よ、神なのだからしばらく寝なくてもなんの問題もないわという返答だったので、今も確実に料理を続けているだろう。


 そんな予想をしながら部屋を出る。


 屋台船のキッチンに到着すると予想通り美食神様が料理を続けていた。徹夜したはずの美食神様はイキイキとした様子だが、そのフォローをしているサポラビには少し疲れた様子が見える。


 なるほど、意識を解放する前のサポラビは一日中配置された場所で待機していても、疲れどころか僅かな感情も見せなかったが、意識が解放されると疲れというある意味マイナスな部分にも影響が出てくるのか。


 単純作業などの辛めの仕事をお願いするサポラビの意識は解放しない、みたいな選択肢も考える必要がありそうだ。


 まあ、今のところサポラビの数に限界は見えないし、現在の環境で精神的に、肉体的に辛い仕事はほとんどないので、それほど気にする必要はないだろう。


 でも、今回は気にしないといけないな。


「サポラビ、ちょっとこっちに来て」


 僕が手招きすると、サポラビがトコトコと近づいてくる。サポラビってファンタジーというよりもメルヘンの存在だよね。魂は魔物だけど。


「普段は自由でも構わないけど、大変な職場に当たった場合、時間制で交代するようにサポラビの中で共有できる?」


 コクコクと頷くサポラビ。心なしか嬉しそうだ。僕なら美食神様と一緒に徹夜できるとなったら脳から変な分泌物を出してハイテンションになりそうだけど、さすがにウサギには美食神様の凄まじい魅力も通用しないらしい。


 本当に疲れていたのか、さっそく行動に移るサポラビ。サポラビ同士で通信ができるのか、クリス号から交代のサポラビが現れ、元々美食神様をフォローしていたサポラビ達は僕に深々と一礼して去っていく。


 なんか分からないが、とても感謝されたようだ。


 その辛い仕事に配置したのも僕なのでマッチポンプ臭がして少し気まずい。


 とはいえ、感謝されたのは事実なので、サポラビの労働環境を整えることで僕とサポラビの関係改善に希望が見えるなら意識しておくべきだろう。


 まあ、僕が一方的に怖がっているだけなんだけどね。


 とりあえずサポラビに対する方針を決め、いまだに集中して料理を続ける美食神様の様子を窺う。


 今回の美食神様の集中力は凄まじく、こちらから声を掛けないかぎり僕に気が付いてくれない。


 だから良いところを邪魔しないために、美食神様の作業に一段落がついたタイミングを見計らわなければならない。今は忙しそうだから少し待機だな。


 それにしても一日中料理を続けていたのに、厨房は新品同様の輝きを保っている。


 船召喚で意識しないかぎり召喚した瞬間に新品として現れるから綺麗なのだが、それでも一日作業していればかなり汚れるはずだ。


 現に僕が厨房を使うと一日どころか三時間程度でゴチャゴチャに散らかってしまう。料理が上手な人は後片付けも上手といった言葉を聞いたことがあるが、おそらくそれは真理なのだろう。サンプルは僕と美食神様、クラレッタさんくらいしかないけど……。


 あれ? クラレッタさんは料理上手で後片付けも上手なのは間違いない。でも、僕は後片付けが下手くそだけど、作った料理は評判が良いよね?


 つまり後片付けが上手な人に料理上手が多いのは事実だが、後片付けが下手くそでも料理上手な人も居るということでOK?


 だって僕、料理したらめちゃくちゃ褒められるもん。絶対に料理上手だもん!


 ……お、くだらないこと考えていると美食神様の調理に一段落がついたようだ。


「美食神様、もう朝ですよ?」


「あら航、料理を受け取りに……もう朝なの? 早いわね、おはよう航」


「おはようございます美食神様。朝食は光の神様と森の女神様とご一緒してカフェで食べる予定なのですが、ご一緒にいかがですか?」


 朝になったことにすら気が付いていなかったのか。まあ、今回の美食神様のテンションなら仕方がないか。


「……そうね、私だけ厨房に籠っているのは駄目よね。分かったわ、ご一緒させてもらうわね。ところで航、まだかなり朝が早いようだけど、朝食まで時間はあるのかしら?」


 美食神様ってそれなりに常識があって集団行動の理屈も理解しているんだよね。ただ、料理が最優先なのでその常識も理屈も生かされていないだけで。


「そうですね、あと一時間半くらいなら大丈夫ですね」


 かなり早起きしちゃったから時間はある。


「それなら、下準備をしている料理を仕上げてしまうわね。あ、そうだ航、ふぐの煮凝りを作ってみたのよ。後で味見をお願いね」


 時間ギリギリまで調理を続けるらしい。しかも、オーソドックスなメニューだけでなく、サイドメニューや、昨日のコースでは出さなかった料理にも手を出し始めたようだ。


 この様子だと、美食神様を白子で驚かせるのは無理っぽいな。次に虎ふぐのフルコースを食べる前に確実に手を出すだろう。


 ……まあ、白子は光の神様と森の女神様に驚いてもらえばいいか。あと、煮凝りか……そんなに美味しいイメージはないが、虎ふぐの場合はどうなのかな? 少し楽しみだ。

 

 僕が頷くと美食神様がテキパキと行動を開始する。僕が回収に来るまで後回しにしていた料理を仕上げてしまうつもりだろう。


 光の神様達との約束まで約一時間半、余裕はたっぷりあると思っていたがギリギリになりそうだな。




 ***




「お待たせして申し訳ありません」


「待たせてごめんなさい、少し張り切り過ぎちゃったわ」


 予想通りと言うか予想以上というか、美食神様の張り切り具合が凄まじく、約束の時間ギリギリどころか少し遅刻してしまった。


「ふふ、航さん、そんなに申し訳なさそうな顔をしなくても大丈夫ですよ。美食神に付き合って遅れてしまっただけですよね?」


「ええ、それにそれほど待っていませんし、ゆっくりお茶を飲む時間も確保できたのでまったく問題ありませんよ」


 遅刻してしまった僕に、優しい言葉を掛けてくれる光の神様と森の女神様。上司の理不尽に耐え続けてきた方達なので懐がとても深い。


「ありがとうございます」


 とはいえホストとしてその言葉に甘えるだけなのは駄目だ。お詫びも兼ねて精一杯おもてなしを頑張ろう。まあ、今日は三女神様方に耳かきやらなんやらで幸せにしていただく予定なのだけど。


 美食神様と一緒にテーブルに座るとサポラビがメニューをもって現れる。


 さて、朝食の時間だ。


「僕はクロックムッシュとブラックコーヒー。それが終わってからホットショコラとクロワッサンをお願い」


 朝の定番と言えば、某牛丼屋の朝の定食や某ハンバーガーチェーンの朝のメニュー、ちょっと頑張ってお洒落にメニューが逆詐欺だと評判の喫茶店のモーニングくらいだった僕だが、豪華客船での生活で、これくらいのお洒落なメニューなら把握できるようになった。


 クロックムッシュはざっくりいうとハムトーストにベシャメルソースと美味しいチーズが掛かったパンに目玉焼きを載せた物。


 ある意味ジャンクだが、クロックムッシュという名前がなんかお洒落だし、見た目も上品に盛り付けて出してくれるので僕のお気に入りメニューだ。


 そして、ホットショコラ。


 日本に居た頃は飲んだことが無かったが、豪華客船の高級なチョコレートを使ったであろうホットショコラが最高に美味しく、そのホットショコラにクロワッサンやフランスパン、チュロスなどを浸して食べる楽しさは抜群だ。


 まあ、正直、九割くらいが見栄で、フェリーのレストランとか自販機コーナーの方が落ち着くけど、なんかカフェとかの方が女性受けしそうだからこういうメニューを選んでいる。


 僕は女性受けの為であれば、ご飯とお味噌汁を封印して、優雅にカフェで朝食を満喫するふりをすることを厭わない。


「では、私はこちらのクロックマダムというのにしてみましょうか。そして航さんと同じく食事終わりにホットショコラとクロワッサンをお願いします」


「私は……このチーズオムレットとベーグルをお願いします。あとホットショコラとクロワッサンですね」


「なら私はこのトリュフのラビオリをお願い。それとホットショコラとクロワッサンね」


 ホットショコラとクロワッサンが大人気だ。


 まあ、僕と違って女神様方は本物の上流階級。一部社畜だけどパリ風のカフェでの優雅な朝食が良く似合う。


 こういう人&神様と一緒に行動していれば、いつか僕も座銀でシースーを余裕でぶちかませる男になれそうな気がする。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
銀座でシースーってわざとやってるのはわかるんだけど、航ってバブル時代の人間なんす?
銀座で寿司とかwww この間から発言が昭和臭いよなw
銀座で寿司くらい余裕で食える資金力はありそうだけど その佇まいは新社会人のスーツ姿くらい違和感は残りそう
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