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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十二章 人魚の国
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30話 ミッションクリア

 神界に神器のことでお願いに行くと、なぜか創造神様が孤立していた。ついでにサッパリタイプだったはずの海神様がワガママを炸裂し、気がついたら女王陛下と王女二人に神託を下す流れになっていた。なんでこんなことに……。


「はぁ……ニャンニャンとかHなことを考えている間に面倒なことになっちゃったな……」


 でも、ニャンニャンを考えていなくても、あの様子だったら海神様から押し切られていただろうから結果は同じか。あきらめて女王陛下達を呼んでくるしかないな。


 なんとなく達観した気持ちで教会を出て、女王陛下達が休んでいる部屋に向かう。


 ふむ。誰にも会わなかったな。まだ人魚さん達は出歩いてないようだ。


 イネス、フェリシア、アレシアさん達にも会わなかったし、まだ全員に部屋の説明が終わってないのかもしれない。


 意外と時間を使っていなかったことに驚きながら部屋をノックすると、レーアさんが出迎えてくれた。


「どうかされましたか?」


 少し不思議そうな顔をしているのは、部屋を出てあまり時間が経っていないのに戻ってきたからだろう。


「女王陛下と王女様方に用事ができまして、今大丈夫ですか?」


 なんだか部屋の奥からはしゃぐ女王陛下達の声が聞こえる。サポラビちゃんとか聞こえるから、たぶん楽しんでもらえているんだろう。


「えーっと、大丈夫と言えば大丈夫なのですが、少々お待ちいただけますか?」


「はい」


 一度ドアが閉められた。さすがにはしゃぐ女王陛下達の元にそのまま案内はできないよね。少し待つと再びドアが開き、レーアさんが部屋の中に迎え入れてくれた。


 リビングに到着すると立ち上がって出迎えてくれる女王陛下。凛とした雰囲気がさっき部屋の奥から聞こえてきた声と結びつかない。


 まあ、仕事とプライベートは別だよね。油断している女王陛下をちょっと見てみたい。


「おくつろぎのところ申し訳ありません。女王陛下と王女様方をご案内したい場所があるのですが、ご同行願えますか?」


 内心を隠してできるだけ丁寧に女王陛下達をお誘いする。ご同行とか言ってみたけど、この言葉はあっているのか? ドラマで警察が容疑者を連れていく時の言葉だった気もするぞ?


「ワタル様のお誘いでしたら喜んでお受けいたします。何か準備は必要ですか?」


 流してくれたのかは分からないが、女王陛下は問題なくお誘いを受けてくれた。それは嬉しいんだけど、準備か……。


 神様の神託を受けるんだから身だしなみは大切な気もするが、どうなんだろう?


 よく考えたら僕は普段着で会いに行ったりなんかしちゃってるよね。おうふ、ナチュラルに無礼を働いていたようだ。次から注意しよう。問題は女王陛下達だな。


 ……うーん、バッチリメイクを決めてくださいとか、僕の口から言える気がしない。でも、中途半端な格好で教会に連れていったら、後々恨まれそうな気もする。


 海神様の神託を受けるのにふさわしい格好でと言えたら簡単なんだけど、間違いなく大騒ぎになるから言えない。


 女王陛下達だけなら騒ぎを覚悟して知らせるのも有りなんだけど、護衛やお付きの人魚さん達にも聞こえてしまうのが微妙だ。


 悪いけどここは不意打ちで行かせてもらおう。教会に到着したら察してくれるはずだ。


「申し訳ありませんが、できる限り身だしなみを整えていただけますか? 急な事ですので、無理しない程度で大丈夫です」


 これが僕の限界です。


「あっ、それと、女王陛下方と一緒に来るのはレーアさんだけでお願いします」


 護衛の人魚達がざわついたけど、女王陛下が抑えてくれた。本来なら護衛の拒否とか洒落にならない失礼だろうに、助かります。


「正装の方が良いですか?」


 正装? そんな物も持ってきていたのか。正装なら何も問題はないよね。


「正装でお願いします」


「分かりました。少々お待ちいただけますか?」


 何か聞きたそうな顔をしていたけど、飲み込んで準備に取り掛かってくれるようだ。説明を求められなかったのは助かる。


 普通なら説明が必須なんだろうけど、色々とかんがみて僕を優先してくれたんだろうな。


「ありがとうございます。部屋の外で待っていますので、準備ができたらお願いします」


「分かりました」


 一礼して部屋を出る。あとは女王陛下達を教会に案内すればミッションクリアだな。部屋を出る前にリビングからバタバタと音が聞こえてきたのが申し訳ない。


 残る問題は、準備にどれくらい時間が掛かるかだ。女性の身だしなみで、しかも正装。少々が、どれくらい掛かるのかが心配だ。海神様を待たせることになるから、できるだけ急いでほしい。




「お待たせいたしました」


 心配しながら待っていると、二十分程でドアが開いた。僕が外で待っているって言ったから、相当急いでくれたんだろう。


「いえ、では……」


 女王陛下の正装、素晴らしいです。人魚の国の晩餐でも綺麗だったんだけど、あれは堅苦しいのを嫌った僕達に合わせて控えめだったんだな。


 美しい紺色の髪にはティアラが輝き、紺に近い青のドレスの合間から見える白い胸元には高そうな大粒の宝石が飾られている。


 宝石はよく分からないけど、青いしアクアマリンかな? 人魚の女王陛下だからそんな気がする。全体的に青系統でまとめられているけど、白い肌と色のグラデーションが仕事をしているのか、単調さは感じられない。


 衣装も凄いけど、それよりも凄いのは本気を出した女王陛下の威厳と美しさだ。二十分でこれほど雰囲気が変わるなんて、実際に目にしていても信じられないくらいだ。


 ただ、威厳が増した分、なんといえばいいのか……こう、エロを考え辛い雰囲気も増して、少し残念な気もする。


 アダリーシア王女とアンネマリー王女も青系統の衣装でまとめられている。アダリーシア王女は清楚、アンネマリー王女は可憐って言葉がピッタリだ。


 女王陛下は一国を背負う威厳を感じるけど、王女二人はまだその域には達していないのか、純粋に魅力が増したように見える。


 あっ、女王陛下達が困った視線で僕を見ている。見とれている場合じゃないな。


「えっと、みなさんとてもお美しいです。で、では、ご案内しますね。こっちです」


 ここで歯が浮くようなセリフで女性を褒められないから、僕はモテないんだろうな。でも、お美しいって言うだけでどもってしまう僕では、これ以上は無理だ。足早にならないように注意しながら教会に出発する。



 女王陛下達にクリス号の施設を簡単に説明しながら教会に到着した。途中、アンネマリー王女が無邪気に話しかけてくれたので、女王陛下に対する緊張がほぐれたのはとても助かった。


 緊張がほぐれた後、事前にある程度説明しておかないと、女王陛下達の心臓が止まりかねないことに気がついて神託のことを説明したら、女王陛下達がものすごく緊張してしまったけど……。


 よく考えたら部屋で人払いをしてもらって全部説明したほうが、すべてスムーズに終わったよね。


 ……まあ、急な事だったからしょうがない。僕に完璧な段取りとか無理だ。


「中に入って神像の前でお祈りをしてください」


「ワタル様は一緒ではないのですか?」


 威厳に満ち溢れていた女王陛下がすがるように僕を見ている。弱っている姿に色気を感じてしまう僕が、純粋な下種な気がして辛い。


「海神様は女王陛下方のことをとても心配しておられました。僕は邪魔だと思いますので、女王陛下と王女様お二人でお入りください。海神様はとてもお優しい方ですから、心配しなくても大丈夫ですよ」


 本当は一緒に入っても良さそうだけど、変なことに巻き込まれそうな気がしないでもないので、女王陛下達だけで入ってもらう。


 戸惑っている女王陛下を促し教会に入れ、教会の扉を閉める。これでミッションクリアだ。


 ***


 女王陛下達が海神様の神託を受けている間、外で一緒に待っているレーアさんがとてつもなくソワソワして落ち着かない。


 ウロウロと歩き回ったり、外から教会に向かってお祈りをしたりと動きが止まらない。


「レーアさん、女王陛下達は大丈夫ですよ。何か飲みませんか? 落ち着きますよ」


「いえ、ありがとうございます。ですが大丈夫です。陛下達が神託を授かっているのですから、私も心してお待ちしないといけません」


 何が大丈夫なのかサッパリ分からないが、飲み物は不要なようだ。


 しかし、女王陛下のすがるような視線や、できる女って感じのレーアさんのアワアワと落ち着かない様子。今日の僕はレアな光景をたくさん見ている気がする。神様の影響力はそれだけ凄いんだろう。


 何か大切なことに気がついたのが、ハッとした表情でこちらを向くレーアさん。動きが急激で少し怖い。


「ワタル様。もしかしてお布施や捧げ物が必要だったのではありませんか? どうすれば……今からでも取りにもどれば間に合いますか?」


 お布施とか考えたこともなかったです。でも、創造神様はハッキリと自分の意見を言うから、お布施や捧げ物が必要だったらすでに文句を言われているはずだ。


「レーアさん。海神様はそんなことを望みません。今回の機会をとても喜んでおられましたから、女王陛下達に言葉を伝えられるだけで満足されるはずですよ」


 創造神様と光の神様相手にワガママ全開だったのは内緒にしておいた方がいいだろう。


 海神様の気持ちを聞いて嬉しかったのか、再び教会に向かって祈りを捧げるレーアさん。


 美女と二人っきりなんて、僕にとっては大喜びなシチュエーションなはずなんだけど、なんか今の状況は辛いです。女王陛下、早く戻ってきてください。




 僕の願いもむなしく、なかなか戻ってこない女王陛下達。女王陛下達から会話を振るのは難しいだろうから、海神様が話しまくっているんだろう。




 レーアさんを落ち着かせるのに苦戦しながら待っていると、ようやく教会の扉が開いた。お帰りなさい女王陛下。心の底からお待ちしていました。


「女王陛下? あれ? アダリーシア王女? アンネマリー王女?」


 フラフラと出てきた女王陛下達に声を掛けるが、一向に反応が無い。


 ……嬉しくて泣くとか、喜びでハイテンションになる女王陛下達は想像していたんだけど、そこを通り過ぎて放心状態のようだ。


 こんなことを言うのは罰当たりかもしれないが、信仰って面倒だな。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が神の大騒ぎを取り繕って意訳する取りまとめ能力が地味に凄いな。若干、医者に怖い宣告されそうな患者を案内する看護婦みたいな感じにも思えたけど。教皇とか出来るんでない?(適当 [一言] …
[良い点] ややこしくなる前フリしかみえねえ [気になる点] もう何度も言うけど ワタルさん大好き [一言] 正直好き ホント好き
[一言] 海神よ、ちゃんと女王にワタルの嫁枠来るように言ってくれただろうね。 さあ、とりあえず歓迎会はしましょうね。
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