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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十二章 人魚の国
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9話 アンネマリー王女

 ベラさん達を招待した豪華客船クルーズ&パワーレベリングも無事に終わり、人魚の宿屋に帰ると、人魚の女王陛下からの使者が到着していた。急遽会うことにして使者の部屋に行くと……ロリっ子人魚が……。


 うん、小さいけど女王陛下との血縁は確かに感じるな。紺に近い深い海を思わせる髪は同じだし、白い肌は……若いだけあって女王陛下よりも上に見える。母性の象徴は残念だけど、これは将来に期待だな。


「あのー……」


 おっといけない。挨拶されたのなら挨拶を返さないと失礼だよね。


「えーっと……僕はワタルと言います。アンネマリー王女、よろしくお願いします?」


 駄目だ。突然のロリっ子で頭が回っていない。王女相手のご挨拶で疑問符を付けたら駄目だろう。


「うふふ。よろしくお願いします」


 ……なんだか凄く冷静になれた。あれだね、ロリっ子のうふふって笑い方は似合わないね。精いっぱい背伸びをしていて可愛らしいとしか思えない。その笑い方を物にしたいのなら、もう少し大人にならないとね。


 アンネマリー王女が、お父様みたいな目になりましたとか呟いているけど、聞かなかったことにしてあげよう。


 僕が大人の目線でアンネマリー王女を見守っていると、疑問を置いておくことにしたのか、ワタワタと袋から何かを取り出し僕をジッと見つめてきた。僕はどうしたらいいんだろう?


「アンネマリー様。こちらに」


 僕とアンネマリー王女が固まっていると、美女人魚さんがスッと間に入り、取り出した何かを女王陛下からの親書でございますとうやうやしく僕に手渡してきた。


 思わず、卒業式で卒業証書をもらうように受け取ってしまったが、正解だったんだろうか?


 それ以前にこの親書はどうすればいいんだ? 今見るの? 親書なんて受け取ったことがないからサッパリなんですけど?


「えーっと……この場で見た方が良いんですか? 申し訳ありません。こういった時の礼儀に疎くて……」


 ロリっ子王女の前で情けないけど、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うもんね。ちゃんと質問して、これ以上恥を重ねるのは防ごう。


「あっ、ワタル様もそうなんですね。私も急に言われて、一生懸命勉強したんですけど、まだよく分からないんです!」


 ニコニコとロリっ子王女が僕の言葉に同意してくれた。アンネマリー王女も今回が初めての使者だったらしい。


 海神の神器や人魚の国についてのなんだから、結構大切な使者だよね? なんで使者初体験のロリっ子王女を派遣したの?


 美女人魚さんが僕にこの場で親書のご確認をって言った後、コッソリとアンネマリー王女をたしなめた。使者としての駄目だしをされたのか、アンネマリー王女がシュンとしている。


 たぶんだけど、この美女人魚さんが使者の集団の中で、アンネマリー王女を除いて一番偉いんだろうな。


 おっと、王女に気を取られていないで親書を確認しないとな。うん? この羊皮紙、まったく濡れてないけど、どうなっているんだ?


「ワタル様、どうかされましたか?」


「い、いえ、なんでもありません。今すぐ確認しますね」


 親書がなんで濡れてないのかを、今質問するのが違うことくらい僕にでも分かる。まずは親書を確認して、羊皮紙が濡れていない理由は次の機会に質問しよう。



 あれ? これ、本気なのか?


「えーっと……親書に書かれている内容は理解しました。僕の都合に合わせて人魚の国にご招待してくださるのもありがたいですし、その時に海流を操作するのは問題ありません。ただ、どうやって人魚の国に行くんですか? それと、アンネマリー王女がダークエルフの島に滞在って、それはどうなんでしょう?」


 人魚達に潜水艦は見せてないよね? どうやって招待するつもりなんだ? あと、ロリっ子が使者になった理由が、ダークエルフの島に一緒に行くから? 子供を使者にするのも微妙なのに、行ったこともない場所に派遣するのは更に駄目だよね?


「ワタル様。私、一生懸命頑張ります! あの、私では駄目ですか?」


 ロリっ子が半泣きで僕を見つめる。心なしか背後に居るフェリシアやジラソーレのメンバーから冷たい視線が送られてきている気がする。あれ? 僕、間違ったことは言ってないよね?


「い、いや、駄目って訳じゃなくてアンネマリー王女はまだ若いんだし、両親と離れるのは問題があるんじゃないかなって思うんだ」


 子供って言ったら反発されるのは分かるから、若いって言ってみたけど……反応はどうだろう? おそるおそるロリっ子王女の目を見るが、瞬間で分かった。僕、間違えたね。


「ワタル様! たしかに私はまだ頼りないかもしれませんが、これでも王女です! 国から離れられないお母さまやお姉さまに代わって、しっかり大役を果たしてみせますので、ご安心ください!」


 フンスフンスと鼻息も荒く宣言するロリっ子王女様。若いって部分を子供だと解釈せずに、頼りないと解釈してしまったようだ。


 こうなったらオブラートに包まずハッキリと……ハッキリと言ったら泣いてしまいそうだから、薄めのオブラートに包んで僕の意見を言おう。


「……大役を立派に果たせることは疑ってはいないんだけど、あれだよ、まだ子供のうちは両親と一緒に居ないとねって思うんだよ」


 薄いオブラートに包めたかな? 子供って言葉を口に出したのは失敗だったかもしれない。


「大丈夫です! お母様も立派な王女だって言ってくれました。アンネマ……私は子供ではありません。一人でも眠れますし、朝だって自分で起きられます!」


 やっぱり子供って言葉は地雷だったようだ。ロリっ子が一生懸命に子供っぽいもう大人ですアピールを始めた。目が潤んで今にも泣きだしそうだ。


 ……なんだろう、部屋の空気がとてつもなく優しい空気に変わってしまった。美女人魚さんを含めた人魚達は、王女様頑張れといった様子で応援しているし、背後を振り返ればフェリシアもアレシアさん達も優しい瞳でアンネマリー王女を見守っている。僕の孤立した感がハンパないです。


「あっ、リム!」


 天使形態に変化したリムが、パタパタと飛んで一生懸命に話しているアンネマリー王女の胸元に収まった。


「ふえっ?」


 いきなり飛んできたリムを反射的に抱えて、驚きの声を上げるアンネマリー王女。……天使なリムと人魚な幼女だと……なんだか心が洗われる気がする。


 いや、なんだかグダグダな会談だけど、一国の使者との会談にテイムしているとはいえ、スライムが乱入したらまずいだろう。可愛いけど。


「リム。駄目だよ。こっちにおいで。アンネマリー王女、申し訳ありません。危険はありませんので、怖がらないであげてください」


『……いじめたらだめ……』


「えっ? いや、違うよリム。僕はアンネマリー王女をいじめてないよ。話し合っていただけなんだよ?」


 えっ、リムには僕がアンネマリー王女をいじめたように見えていた訳? その誤解はショック過ぎるよ。僕は当然のことしか言っていません。


『……だめ……』


「あっ、はい。ごめんなさい」


 思わず謝ってしまった。謝ったらロリっ子をいじめていたことが確定してしまうのに……。


「ワタル様の従魔のリム様ですよね。初めまして、アンネマリーです。ワタル様は私をいじめてはいませんよ。色々と心配してくださっただけなので、安心してください」


 ロリっ子にフォローされた。でも、そのフォローはとてつもなく助かる。アンネマリー王女、ありがとう。ロリっ子とか思っていてごめんね。あなたは十分な大人です。


『……そう?……』


「うん。そうだよ。アンネマリー王女と少し難しい話をしていたんだ。決していじめていた訳じゃないんだ」


『……ごめんなさい……』


「いや、リムが謝る必要はないんだ。誤解させてごめんね」


 ふぅ、焦った。この世界に落ちてきて草原で目覚めた時並みに焦った。


「リム様。なぐさめてくださったんですよね。ありがとうございます」


 おうふ。リムとアンネマリー王女が仲良くなって戯れ始めた。少しうらやましいけど、ピンチを救われたんだから、ここは黙って見ていよう。


「ワタル様。アンネマリー様には、私も含めて普段からおそばにお仕えしている者達が同行する予定です。それと、アンネマリー様の里帰りの許可を頂けますなら、女王陛下もアンネマリー様もご安心頂けるのですが、いかがでしょう?」


 リムとアンネマリー王女の戯れを優しく見守っていると、美女人魚さんが話しかけてきた。美女人魚さんが一緒なのはちょっと嬉しいけど……もっと早く言ってよ。なんで今頃? 口をはさむタイミングはもっとあったよね? 


「……もし、同行した場合の里帰りはいつでも許可しますのでご安心ください。ただ、同行するかの最終決定は女王陛下と相談した後でお願いします」


「かしこまりました」


 美女人魚さんが恭しく頷く。態度は素晴らしいんだけど、もはや信用できないな。この美女人魚さんは食えない大人枠だ。


 ふぅ……往生際が悪い気もするけど、幼女を預かるのはプレッシャーが凄いよね。なんとか女王陛下と話して大人の人魚だけを派遣してもらおう。


 あれ? でもダークエルフの島に僕はあんまり滞在しないから、責任者はフェリシアのお父さんに押し付ければ……いや、結局僕が責任を取らないと駄目だよね。たとえ往生際が悪くとも、最後の望みをかけて女王陛下に直談判しよう。


「あっ、アンネマリー王女の話に気を取られていましたけど、結局僕達はどうやって人魚の国に行くんですか?」


 潜水艦で来いって言われれば行くけど、潜水艦は知らないはずだからとても気になる。


「女王陛下より、海神様から授かった神器を預かっております。人でも海の中で自由に呼吸ができる神器ですので、ご安心ください」


「えっ? 海神の神器と、他にも人魚が人になれる神器もありましたよね? それ以外にも海神様から神器を授けられているんですか?」


「はい。伝えられている話では、人魚と人間が結ばれた際に、海と陸地で別れて生活するのは辛かろうと、海と陸地のどちらでも生活できるように授けてくださったと聞いています」


「……そうなんですか……」


 海神様。あのガタイであの性格なのに、人魚達に対しては甘々なんだな。微妙に納得できないけど、海の中で呼吸ができるのは楽しそうだから納得しておこう。海流の操作は人魚の国に行ってからだし、とりあえず話はこれで終わりかな?


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎回毎回アホみたいな主人公の回想やら妄想は 萎える一番の要因です(´・ω・)
[一言] リムは癒し。はっきりわかんだね!
[一言] お姉さま、美人のはず、ロリでないことアピールしてお姉ちゃんも独身であいていなければいただきましょう。 美人人魚さんたちも必須ですよ。 家族はどんどん増えるっと。 女神たちも早く迎えたいです。…
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