襲撃
私用で1~2週間ほど全体的に更新が途絶えます
ちょこちょこ書きますが多分更新できないので、お知らせしますね
アイリの旅道具はすべて揃えた。
あとは明日の朝、身支度を整えたら出発するだけ。
「………」
なのだが、変な胸騒ぎがして眠ることができない。
この前聞いた噂のせいだろうか?
俺は時々、神父の格好ではなく盗賊の格好で裏の世界に忍び込んで情報を仕入れている。
全く、本当にムカつくくらいにダリルの能力が役に立つ。
お陰で良い情報屋と知り合い、色々なことを教えてもらった。
大抵ろくでもないことだが、それなりに役に立つものもあった。例えば高く素材が売りさばける店の見分け方とかな。
お陰でアイリの食費が圧迫しているとはいえ、貧乏生活とかはしていない。そこそこの水準って感じだ。
その色んな噂の中で気になったのはとあるファムルスの噂だ。
俺の事が広まっているのかと思い耳を済ました。が、噂されていたのは違うファムルスの事だった。
なんでも、町を壊滅させながら移動するファムルスがいるのだとか。
壊滅した町に残された痕跡は、大量の砲弾が空から降ってきたかのような有り様だったらしい。
生存者は皆無に等しく、見るも無惨だったと。
(…砲弾のような、か)
隣でアイリと寝ているジキルを見る。最初、こいつが砲のファムルスかと思ったが、もしかして噂のが砲のファムルスなのだろうか。
しかし、前聞いた時と行動内容があまりにも違うのが気になる。前は人助けのような事をしていたのに、今は大量惨殺をしている。正反対だ。
「………って、俺が言える立場じゃねーよな」
同じようなことをしていた人物がここにいるんだ。きっとそのファムルスも何かあったのだろう。
しかし、ファムルスと接触はしたくない。
明日、すぐに出発して──
──ピーン…
「!!」
ファムルスの気配!!
閉じていた目を開き、起き上がると、すぐさま方向を探った。
北西。
まだ遠いが、こちらの方に向かってきている。
【報告、前に接触した剣のファムルスではありません】
ああ、これは噂のファムルスだ!!
「ジキル!アイリ!早く起き──はっ!!」
嫌な予感がした。
体が勝手に動き、窓から上に向けて十字架投げ上げる。
次の瞬間、光る雨が町中に降り注いだ。
「う…、くそっ、無茶苦茶過ぎる…。ジキル、アイリ、無事か?」
巨大化した十字架が宿屋を守り辛うじて倒壊せずに済んだが。
「な、な…」
穴の空いた床から宿屋の主人が驚いたようにこちらを見上げていた。寝ていたらしい。
「ビックリした。なに?襲撃?」
「でぁいじょーぶ?」
アイリが声をかけると頷く主人。
孫のように可愛がっていたアイリの声で我に返ったらしく、慌てて宿泊しているお客に声をかけに向かった。
半分しかなくなった屋根から覗く夜空から十字架が降ってくる。
それを受け止め、すぐに神父服へと着替える。
「何があったの?これ」
「ファムルスだ。すぐに出られる準備をしろ。じゃないと大変なことになる」
今さっきの攻撃で分かった。これは手に終えない。
きっとかち合えば俺達は負ける。
なら、見つかる前にさっさと逃げるべきだ。
「荷物を持ったか?行くぞ!」
「うん!」
「おー!!」
廊下は壊滅状態。
窓から飛び降りるかと外を見ると、あちらこちらで火の手が上がり大惨事になっていた。
どこからともなく聞こえる悲鳴、鳴き声、怒声。
建物は崩壊し、あの攻撃がどれだけ広範囲だったのかがすぐに分かった。
「うわ、激ヤバじゃん…」
「ああ。アイリに見せて良いもんじゃない。だからさっさと逃げるんだ」
「なーるほどー」
「アイリ、おいで」
「ん!」
アイリを抱き上げ、窓の近くの崩れた建物の屋根に飛び乗った。
突然の襲撃で生き残った人々が逃げ惑っている。
その中を俺は二人を連れてまっすぐ出口に向かって走る。
サイレンが鳴り響く。
放送が何かを言っているが、人々の声で掻き消されて聞こえない。
「!」
地面に落ちる影が濃くなっていく。
炎で発生した影ではない。
とする、考えられるのはひとつ。
「まこっちゃん!!空からなんか降ってくるよ!!」
「ちっ」
見上げれば、空一杯の白い雨。
いや、これは、矢だ。
すぐさま十字架を巨大化させ、更に結界を重ね掛けで発動した。が。
「なに!?」
するりと、矢は結界をいとも簡単に貫通した。
重ね掛けした結果は全て破壊され、十字架へと着弾。
凄まじい衝撃が襲い来た。
「ぐっうううッッ!!!!」
足が地面にめり込むほどの衝撃。
だが、十字架は耐えきった。
「はぁー!はぁー!はぁー!」
腕がしびれる。広範囲攻撃でこの威力だと?
ふざけている。
「ひどい…」
隣でジキルが震えた声で言う。なんだと見れば、周りにいた人達はみんな倒れ付し絶命していた。そうか、俺の張った結界が貫通したから…。
ざわりと、嫌な気配を感じる。
「やっぱり居たわ」
場違いな女の声が響き渡る。
コツリコツリと足音が近付いてきてその姿を見せた。
ワンピース姿の黒髪の女の子と、その後ろに付き従う男。
一目見て分かった。首の痣なんか確認しなくてもわかる。こいつは。
「ファムルスよ」
ファムルス、だ。




