アイリは成長期
早く完成したので投稿
門番の人にすっげえアイリ見られた。
二度見所か三度見された。けど、なんとか成長期ですって押し通した。
絶対にヒソヒソされている自信がある。
「獣人の子って言えばよかったね。獣人の子は一ヶ月で歩けるようになるから」
「………そうだった…」
完全に失念してた。
次からはそうしよう。
……いや次からはってなんだ。次はないからな。
「わあー!変な感触!!」
アイリは靴を脱ぎ、草の感触を楽しんでいた。
体はいたって人型のアイリだが、実は足裏に猫のような肉球がある。といっても少し人の足に合わせたような肉球で、爪も蜥蜴のように尖っている。
細部を見れば、アイリはどこまでいっても不思議生物だ。
そして、俺の頭の中で賢者が起動し、アイリを凄い観察しているのがわかる。
このスキルも謎だがな。
レベルが上がるとみんなこんなになるのか?
「まこっちゃん。彼処に小さい魔物がいるけど、どうする?」
「なんの魔物だ?」
「キュウキュウ言ってるから、多分普通のホッピングバルーンだと思う」
《魔物学》が起動したらしい。
頭の中に文字が浮かび上がる。
【ホッピングバルーン。ナメクジキノコクラゲの一種。謎の多い生き物だが、よく子供や猫に追い掛けられている生き物】
ナメクジキノコクラゲ!?
なんだそれ!?
【ナメクジキノコクラゲ。コントンの一種。謎の生き物で、めったに出会うことはない。会えれば幸運】
【コントン。伝説の生き物。魔物学者の長年の夢であり、夢そのものである】
もういいや。
「ジキル。あれを何匹かこっちに誘き寄せられないか?」
「できるよー!」
銃を構えてぶっ放す。
すると、ロケット花火みたいなのが打ち出され、ジキルが示した方向へと着弾した。
「爆竹?」
凄い勢いで着弾した弾が弾けているんだけど、そんな弾があるなんて知らなかったぞ。
「きれー」
「あれね、夜やると綺麗だよ。今度やってあげる」
「楽しみにしてる」
花火のようになるんだろうか。
跳ねる音が近付いてくる。
さて、捕まえるか。
草むらから水風船に似た生き物が飛び出してきた。
その内の三匹ほどを結界で捕獲した。
ポヨポヨとしているくせに結界にぶつかった音はゴンという固い音。
魔物という生き物の定義は主に“体に見合っていない能力を持っているかどうか”である。
例えばこのホッピングバルーンの特殊能力は高質化と跳ね返しの結界の構築だ。
とくに害がなさそうに見えるが、ある一定の速度で衝突するとこの能力が発動し、馬車の車輪を破壊したり人を転ばせたりイタズラに使われたりする。
どっかの愛好家はペットとして飼ってたりするけどな。
ボイボイ結界にぶつかっているホッピングバルーンをアイリが見ている。興味があるらしい。
よし、力試しだ。
「アイリ」
「んー」
尻尾で返事。
「遊んでみたいか?」
「え!?」
凄い勢いでアイリがこっちを向く。
目を輝かせ、耳羽尻尾全てが反応している。
「あそんで良いの!?」
「いいぞ」
「あそびたいあそびたいあそびたーーーい!!!」
アイリは嬉しいときに跳ねるらしい。
よし、俺も頑張ってみよう。
「私が中にいとく?」
「そうしてくれたら助かる」
「わかった!アイリちゃんこっちおいでー!」
ジキルがアイリを抱っこしてホッピングバルーンの結界の側に立ってくれる。
そっから少し離れて狙いを定める。
いけるか?ワンツー、だぞ。ワンツーだぞ、俺。
せーの。
「ワン!ツー!ちがうっ!!」
「え、なに?わんつー?」
「つー!!」
「忘れろ忘れろ!!」
もう一度。
「………」
心のなかでワンツーと唱えながらホッピングバルーンの結界を解除して、最大の結界を展開。
良かった、成功した。
結界の反対方向の操作難しいんだよ。
「おっ!おっ!うごいたぁ!!」
ボイボイ動くホッピングバルーンにアイリご満悦。
ジキルはプール程の大きさの結界に驚いていた。
こっそり練習してたからな。
そんな表情してくれて凄く嬉しい。
「アイリ、そのボールを潰してみろ」
「指示の仕方が物騒」
「子供は明確な指示の方が分かりやすいだろ」
──バンッ!
「つぶしたー」
「え」「え」
アイリの手がホッピングバルーン潰したさいに発生した水で濡れていた。
はや、見てなかった。
確かにあのホッピングバルーンは雑魚だが、子供だと少しの時間なら追い掛けっこになるほどの俊敏さはあるはずなんだが。
ジキルと顔を見合わせて頷く。
こいつ、思ったよりも強いぞ、と。
その後、15匹ほど捕まえたホッピングバルーンをアイリが潰し、色々スキルを獲得したのであった。
「結構強くなったんじゃない?」
「………成長期ってこええな」
スターバッファローを踏みつけて、アイリが「やーっ!!」と雄叫びを上げた。
一回り大きいバッファローで、なおかつ直線の突進に加速と攻撃力倍増の能力を持つこのスターバッファローを、アイリはなんと真正面から受け止め投げ飛ばしたのだ。
そして尻尾で首の骨を折って止めを指す。
うーん。この無駄の無さ。
素直に感心した。
「これなら明後日辺り旅立っても大丈夫だな」
「移動するの?」
ジキルが嬉しそうに言う。
「ああ。アイリの旅支度を調えたらな」
それに。気になる噂もある。
「おねーちゃん!!神父しゃま!!どう?アイリ凄い?」
ずるずるとスターバッファローを引っ張ってくる。
筋力だけで見れば俺よりも全然上だな。
頭を撫でてやる。
「ああ、凄いぞアイリ。今日はその肉で焼肉だ」
「焼き肉大好き!!」
ヨダレを拭っている。
俺の魔力を吸ってたアイリはとうとう食に目覚めた。
おかげで食費が大変なことになっている。
だが、俺の魔力が吸い付くされる前に食に目覚めてくれて良かったというべきか…。本気で危なかったからな。
「まこっちゃん解体する?」
「そうだな。俺がやるから向こうで遊んでやっててくれ」
「はーい」




